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依頼


 都市カーヴェルン。そこにひっそりとたたずむ冒険者ギルド、ウェスタ。

 その中では夜になっても作業に明け暮れる女性が一人。カウンターの奥でコルトはため息をつきながら報告書を整理していた。長い金髪をポニーテールにまとめ、冷静な灰色の瞳が書類をまじまじと見つめている。


「はぁ……最近この手の依頼が多いわね」


 彼女は小声でつぶやき、ペンを置いて椅子から立ち上がる。背後にある暖簾を通り抜け、奥へ進むと部屋があった。


「グガー……」


 そこにはこじんまりとした私室で、ベッドの上では擦れたロングコートを羽織ったまま寝ている男がいた。大きないびきをかき、だらしなく足をベッドから放り出している。


「すぅぅぅぅ」


 コルトは胸いっぱいに息を吸い込む。そして部屋中に響くほどの声で叫んだ。


「マグナスゥゥゥ! 起きろぉぉぉぉ!」

「どぅあああああああ!」


 ベッドから跳ね起きた男は、目を見開き、手探りで腰のホルスターに触る。

 それが癖なのだろう。


「な、なんだぁ!? 襲撃か!?」

「襲撃じゃないわよ。普通に起きなさい」


 男は寝ぼけたように弾の入っていない銃の引き金を引き続ける。

 彼の名はマグナス。まだ少し若いが、このギルドのギルドマスターを務めている男だ。マグナスは目を覚ますと、怒ったようにしてコルトに異議を申し立てる。


「お、おいコルト。もっと普通に起こしてくれ! 心臓に悪いったらありゃしねぇ!」

「知らないわよ。そうはいっても前は全然起きなかったじゃん」

「そりゃあんときは徹夜で張り込みしてたからだな……はぁ、まぁいい。なんだよ、依頼か?」


 諦めたように尋ねると、コルトはこくりと頷く。


「ええ。場所はここから北西に三十キロほど離れたピリエットいう名前の村よ。その村が襲撃された。冒険者の集団らしい。主犯は元Bランク冒険者、ラウゴ・バートン。金と食料を要求し、人質を取ってる」


 コルトはラウゴの顔写真をドンと壁に貼り付ける。マグナスはしばしそれを睨み、口の端をわずかに歪めた。


「金と食いもんだぁ? わざわざ人質取ってまですることか?」

「奪えるものを極力奪って隣国まで逃げるつもりなんでしょうね。向こうまで逃げ切ればこちらも手を出しにくいから」

「なるほどね……」


 マグナスは腰のホルスターから白と黒の二丁拳銃を抜き、シリンダーを指で軽く回す。そこへ慣れた手つきで弾を次々と込めていく。部屋に乾いた響きを立てた。


「人質がいる上に相手は腐ってもBランク。応援も要請できるけど?」

「いや、結構」


 銃をくるりと回してホルスターに収め、ニヤリと笑う。


「今回も一人で大丈夫そう?」

「ああ、支障ない」


 マグナスはロングコートを翻し、部屋を出る。

 その背中をコルトが見送り、ふっと口元を緩めたのだった。


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