生涯の始まり
俺はゆっくりと目を開けた。
(あれ?ここどこ?)
そこにはモニターとボタン、そしてメーターのようなものがある。
まるで管理室のような場所だった。
(俺…勇者じゃない?)
そう思っていると、幼い少女の声がした。
「来たのね」
俺は少し困惑した。
少女はとても小さく浮いているからだ。
(俺は勇者になるんだよな?てか魔法使いとかいるんだよな?
でもこんな子普通いないし転生してるのか?)
浮いている謎の少女は不思議そうにこっちをじっと見ている。
「あれ?ホワトから聞いてないの?」
「…特には」
「そうなの。あなたは転生したのよ」
(やった!転生は成功してるんだ!)
「じゃあここどこです…か?」
「ここ?あなたの転生先よ」
(え…)
「ほ…本当に?」
「うん」
俺は信じることができなかった。
「じゃ…じゃあ何に転生したんですか?」
「火山よ」
(ん?火山?なんで?)
「火山?」
「そう。火山」
(俺…夢見てるのかもな)
「夢じゃないんですか?」
「どこが夢なの…現実よ」
俺は自分の頬をつねった。
(痛い)
そう信じたくはなかったが俺は勇者でも魔法使いでもなく、【火山】に転生したようだった。
「すみません…」
「何?どうしたの?」
「転生ってやり直すことって…」
「無理だわ」
「あっ…」
「うん。生涯を真っ当しないとまた転生はできないわ」
「ちなみに火山の寿命って…」
「ん〜軽く1000年くらいじゃないかしら」
この言葉が俺の中でループされ
そしてもっと俺の心を砕く…
(残り1000年…この場所で…)
俺は膝から崩れ落ちた。
(なんで…俺は苦労したじゃないか…)
そんな様子を見て、宙に浮く少女は不安そうに見ている。
「大丈夫?」
「…」
俺は発する言葉が無かった。
いや出なかった。
(なんで…なんでなんだ…なんでよりによって火山っていう山なんだよ…)
俺は正直、どんな天罰を食らってもいいから今にでもホワトを殴りたかった。
「ねぇ?大丈夫?」
「…大丈夫…なわけないじゃん」
「…」
「こっちはゴミみたいな人生歩んで、
そして転生っていう人生を変えるチャンスが来てようやく抜け出せるって思ったのに…
なんで…なんでよりによって火山なんだよ」
「私にはなんとも…」
俺は思いっきり怒りの思いを伝えたこともあって俺は冷静になれた。
(今思ったけど、こいつは転生の神なんかじゃない…ってことはこいつに言っても
変わらないってことか…)
「なんか…ごめん」
「…」
(ちょっとどころじゃないほど言いすぎちゃったな…)
「…よく転生する人は今みたいなことあるので大丈夫だよ」
「…え」
「異世界転生する人はよっぽどの人だからこういうこともよくあるってことよ」
俺は初めて慰められた。
(気を使わせてしまった…)
俺はそんなことを心の中で思った。