第九話 ヴィオスの悪いクセ
「殴らなくてもいいじゃないですか。私がいったい何をしたというんです? リオルさん」
ヴィオスが袖で鼻血を拭いながら、フラフラと立ち上がった。立ち上がりながら、近くにいた女性客の太腿に触れていたのにはドン引きした。太腿を触られた女性客も嫌悪感を露わにした表情でヴィオスを睨み付けている。
「女性客に触るなって注意したばかりだろうが! 酒に酔っぱらうと、女性にボディタッチしまくるのが、お前の悪いクセだぞ。分かってんのか?」
「悪いクセ? 私はただ友好的に女性とお近づきになりたいだけです。そのための手段として、ボディタッチしているだけです」
ヴィオスは千鳥足で女性客に近付いた。だが、女性客は悲鳴を上げてヴィオスから逃げた。むやみやたらにボディタッチするのはどうかと思うが、女性客に悲鳴を上げられて、少しだけヴィオスが可哀想だった。
メリサはチラリとフレイとバレットを見た。2人とも呆れた表情でヴィオスを見ていた。
「メリサ、好きなテーブル席に座ってくれていいぞ。あとで注文を受けるから」
「あっ、分かりました。リオルさん」
リオルの言葉に頷くと、メリサはフレイとバレットを連れて一番奥のテーブル席に座った。円卓テーブルは木製で、どことなくレトロな雰囲気があった。
「もうすでに飲みすぎているから、今日は帰った方が良い」
「そうですね。休憩時間とはいえ、まだ仕事が残っていますし、生命管理局に戻らないといけません」
ヴィオスはフラつきながらも、木製の扉を開けた。まだ仕事が残っているのに、酒を飲むなんて、真面目そうな見た目だが、ヴィオスは不真面目なのかもしれない。いくら休憩時間とはいえ、仕事に支障を来すかもしれないし、酒を飲むのはどうかと思う。
「飲酒飛行には気を付けて帰れよ」
「分かっていますよ」
ヴィオスがそう言うのと同時に、赤く染まった翼が消え失せた。ヴィオスは千鳥足で石段を上っていった。酔っ払った状態で空を飛ぶことを飲酒飛行と言い、その行為は法律で禁止されている。酔った状態で飛行すれば、建物や人々に直撃する可能性があり、危険だからだ。飲酒飛行した場合は20000ジェロニランの罰金が課せられる。
リオルは木製の扉をゆっくり閉めると、踵を返し、メリサたちのテーブル席に向かってきた。
メリサは慌ててメニュー表を取ると、フレイやバレットの前に置いた。
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