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第六話 休憩

「あら、今日の風は焦げ臭い匂いがするわね。昨日は雨の匂いがしていたのに」

 メリサは炎の座席に背中を預けながら、くんくんと鼻を動かして風の匂いを嗅いだ。ジェロヴィゲル国の風は多種多様な匂いを発することから、七色の風(レインボーウィンド)と呼ばれている。

「ガルルルル……ケホケホ」

 バレットは匂いに敏感なようで、時折、咳き込みながら、だだっ広い荒野を駆け抜けていた。ただ高低差が激しい荒野だからか、バレットはどこか走りにくそうだった。高低差は最大で4mほどだった。

 太陽が燦々(さんさん)と照りつける中、メリサは空を見た。メリサに釣られてフレイも空を見る。

 空には巨大な飛行船が浮かび、側面のモニターにはジェロヴィゲル国に関する様々な出来事が映し出されている。ここ最近、雨があまり降らなかったために、野菜や果実が育たず、価格が高騰していることを報じていた。メリサのように小さな種に術式を施せば、一瞬で果実は育つが、どんな効果をもたらすのかが分からない。そのため、術式を施した果実の販売は禁止されているのだ。

 メリサはもう少しジェロニランを持ってくるべきだったかなと思いながら、チラリと隣のフレイを見た。フレイは興味深そうに、飛行船のモニターをジッと見つめていた。真剣な眼差しでモニターを見つめるフレイが可愛くて、メリサは思わず笑みが溢れた。

 メリサがフレイの頭を撫でようとした瞬間、突然、荒野が大きく揺れた。その数秒後、辺りに強烈な臭いが漂った。耐え難い臭いに、メリサは赤毛を器用に動かして自分だけでなく、フレイやバレットの鼻も押さえた。

「お母様、この臭いはいったい何?」

「これは屁の臭いね。荒野がおならしたのよ」

「おなら? どうりで臭いわけだ」

 メリサの言葉にフレイは納得したように頷いた。荒野はときどきおならをすることがある。荒野には無数の小さな穴が空いていて、そこからおならが放出され、揺れという現象を引き起こしているのだ。荒野はどこか照れたように、表面がほんのりと赤く染まっていた。

 強烈な臭いから逃れるように、バレットはスピードを上げた。


 ☆☆


「森林まで来たわね。バレットちゃん、走り続けて疲れたでしょ? そこの木の幹で休憩しようか」

 メリサは炎の座席から身を乗り出し、バレットの頭を撫でた。バレットは一度も休憩することなく、5キロほどの荒野を駆け抜け、中間地点の森林に辿り着いたのだ。

 メリサとフレイは炎の座席から降り、乾いた地面に足を下ろした。座席の形が崩れ、元の炎へと戻っていく。

 メリサはバレットの手を引くと、木の幹まで移動した。バレットは疲れたように、木の幹にもたれかかり、フレイは隣に腰掛けた。枝や葉っぱに太陽が遮られて木陰を作り、少しだけ涼しく感じた。

「ふふっ、2人とも寝顔が可愛いわね」

 フレイとバレットはいつの間にか寝ていた。気持ち良さそうに、すやすやと寝息を立てている。

 メリサはとくに疲れていなかったが、バレットの隣に座ると、しばし休憩することにした。

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