第五話 首都・ヴィゲルナーディストへ
「私はこれから生命管理局生活課に出生届を提出しに行くけど、フレイちゃんとバレットちゃんも一緒に来る? ついでに買い物もしたいし」
メリサはフレイとバレットを見回した。フレイは力強く頷き、メリサの隣に並んだ。バレットは頷きながら、自分が姿を変えたことで消失した壁を、体に纏う炎を操って新たに錬成していた。先ほどまでは一部分だけぽっかりと空いていたが、今はすっかり元通りになっている。
「バレットちゃん、壁を直してくれたのね。ホントありがとう」
メリサはバレットの元に駆け寄ると、頭を優しく撫でた。泡状の髪の毛の感触が柔らかくて気持ち良かった。バレットは嬉しそうに、メリサに体をすり寄せてくる。
メリサはフレイとバレットに外で待つように言うと、箱からジェロニランを何枚か取り出し、右の人差し指の眼球の中に仕舞った。
メリサはウキウキ気分で外に出ると、扉に手をかざして壁へと変えた。扉が消え失せて壁に姿を変えたことで、メリサたち以外は誰も家に入ることができなくなった。防犯対策はバッチリだった。
「さあ、行こうか」
「うん、お母様」
メリサとフレイが歩き出そうとした時、バレットが泡状の髪の毛を伸ばして2人の体を掴んだ。背中に炎で形成した座席を設け、そこにメリサとフレイを座らせる。それと同時にバレットの体が3倍くらいの大きさになった。
「わあ、バレットちゃんって体の大きさも変えられるのね」
「バレットちゃんはすごいね」
フレイは感心したように、バレットに盛大な拍手を送っていた。赤毛もフレイ同様に感心しているのか、髪の毛同士をぶつけ合わせて、パチパチと音を立てている。
「生命管理局生活課は首都・ヴィゲルナーディストにあるんだけど、炎で地図を描くから、ちょっと待っててね」
メリサの赤毛から炎が燃え上がり、瞬く間に地図を描き出した。メリサの家からジェロヴィゲル国の首都・ヴィゲルナーディストまでは10キロほどの道のりだった。ここから5キロまではだだっ広くて何もない荒野だが、途中から自然豊かな森林へと変わる。5キロを境に景色が変化するのだ。
メリサはバレットに炎で描き出した地図を見せた。バレットはじっくりと炎の地図を見つめた。
「ガルルルルルル!」
しばらく地図を見つめた後、バレットは唸り声をあげて、荒野を駆け出した。
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