第二十五話 お泊まり
メリサは身分証を作成したことを証明するために、フレイとバレットに見せるように促そうとしたが、リオルは手で制した。
「別に身分証を見せる必要はない。ところでまかないが残っているんだが、食べるか?」
リオルはそう言いながら、厨房を指差した。
フレイとバレットの目が輝き、コクリと頷いた。まかないを想像したのか、口の端から垂れた涎を慌てて吸い込む様子が可憐で、ゆっくりと燃え広がる炎のように心が暖かくなった。
「すぐに持ってくるから、待っていろ」
リオルは足早に厨房へと向かった。宣言通り、瞬く間に厨房から出てきた。テーブルに置かれたまかないは『ジェリーフォスの鼻ちょうちんぺったん巻き』だった。フォルヴァレスの卵に絡めたジェリーフォスの肉を鼻ちょうちんぺったんで巻いた料理である。
「いただきます」
「ガルルルルル!」
フレイとバレットは律儀に両手を合わせると、まかないを口に運んでいく。フレイは左目の小さな口から出した炎で矢に射ぬかれたハートを形作った。炎で気持ちを表現したくなるほどにまかないが美味かったらしい。
メリサもまかないを口に放り込む。歯応え抜群の肉に卵が絡んで、鼻ちょうちんぺったんのパサパサ具合が良い塩梅で、旨味が一気に広がった。
メリサたちはほぼ同時にまかないを完食する。
「ふふっ、フレイちゃんとバレットちゃんったら、口に食べカスが付いているわ」
メリサは赤毛を伸ばすと、フレイとバレットの口の端に付着した食べカスを拭い取った。炎を一瞬だけ灯し、食べカスを消滅させる。
「ふわぁっ……眠くなってきたかも」
「ガルルルル」
フレイとバレットは同じタイミングであくびする。今日は動いたり、戦ったりしたから、きっと疲れているのだろう。
「お疲れのようだな。寝室に連れて行ってやろう」
リオルは右腕でフレイを、左腕でバレットを抱え込むと、厨房横の階段に向かった。メリサは慌てて、リオルの後をついていく。
階段を駆け上がり、酒場からリオルの家へと足を踏み入れる。リオルは一番奥の寝室に入っていき、メリサも後に続いた。
リオルは壁際の硬質化させた雷で編んだベッドに、フレイとバレットを仰向けにして寝転ばせる。
『すぅーすぅー』
すでにフレイとバレットは寝息を立てて眠りについていた。
「おやすみ、フレイちゃん、バレットちゃん」
メリサはフレイとバレットの額に、愛情の証として軽く口付けした。
感想頂けると幸いです。




