第二十三話 食料庫
メリサは木製の扉を開けると、フレイとバレットを先に行かせる。
二人の後に続いて、メリサは足早に石段を降りていく。
タイミングを見計らかったように、頭上の立体的な文字が消えた。あらためて、心の中でヴィオスに感謝する。
フレイが古びた木製の扉を開けて、待っているのが見えた。
「ありがとう、フレイちゃん」
石段を降りきったメリサは礼を述べ、赤毛を伸ばして、フレイの頭を撫でる。
「へへっ」
フレイは照れくさそうにこめかみをポリポリとかいた。
メリサは店内を見回し、リオルを探した。ちょうど厨房からリオルが出てきたのが見えた。
「あっ、リオルさん、荷物を置かせてもらえますか?」
「ああ、いいぞ。奥の食料庫に籠ごと置いといてくれ」
リオルは厨房の奥を指差すと、テーブル席に向かいかけ、足を止めた。
メリサは首を傾げる。注文を取りに行こうとして、厨房からホールに出てきたのではないのだろうか?
「厨房に入る前に、体を清潔にしないとな。術式“雷浄玉”」
リオルの両腕に術式が浮かび上がり、無数の小さな雷の玉がメリサたちの体に纏わり付いた。
鮮やかな雷の玉がバチバチと音を鳴らす。雷が皮膚を刺激してピリピリとしたが、体中が清潔になっていくのを感じた。バレットの泡髪洗浄とは違った洗浄の仕方だった。
「三人とも清潔になったな。厨房に入っていいぞ」
リオルはそう言うと、テーブル席に向かい、注文を取りに行った。
メリサはフレイとバレットを手招きし、厨房に入ると、奥へと進んだ。厨房内では美味しそうな匂いが充満している。
邪魔をしないように、調理中の横をそっと通り抜けていく。すぐに食料庫の扉の前まで辿り着いた。
鋼鉄製の扉をゆっくりと開け、食料庫に足を踏み入れた。フレイとバレットもメリサの後に続いて、食料庫に入っていく。
木製の棚が等間隔で並び、様々な食料が整理されて置かれていた。壁には術式が施されている。食料庫内はリオルの術式“氷冷陣”によって一定の温度を保っているのだ。
他の居酒屋では交代で術式を発動して食料を保存しているらしい。それも基本的に練習さえすれば誰でも使える低レベルの術式を使用していると聞いたことがある。
だが、リオルは高度な術式を交代することなく、常時発動して食料を保存している。二人の従業員によれば、少なくとも、数年以上は一度も途切れることなく、術式“氷冷陣”を使用し続けているらしい。
膨大な魔力を有するリオルだからこそ、成せる芸当だった。
メリサはひんやりとした空気を肌で感じながら、商品でいっぱいの籠を棚の空いた隙間に置いた。
図書館の籠は後で真上のリオルの家に置かせてもらおう。
メリサは興味津々で食料庫内を見回すフレイとバレットに声をかける。
少し名残惜しそうにしながらも、フレイとバレットはメリサの後をついていき、酒場に戻った。
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