第二十二話 歴史
「お母様、さっき騒いでいた人たちは何?」
「抗議活動の人たちよ。人工生命に対して良くない感情を抱いているの」
「良くない感情? どうして?」
フレイは眉間を寄せて、僅かに首を傾げた。
バレットも不思議そうに、泡状の髪の毛で『?』を形成して疑問を投げかけてくる。
「これは前にリオルさんから聞いた話なんだけど、100年前までは術式の精度が今に比べて全体的にかなり低くくてね。人工生命の自我がなくて暴れ回っていたらしいの」
メリサはリオルから聞いた話をフレイたちに語り始める。
「人工生命の暴走で数百人の死傷者が出たらしくてね。事態を重く見たジェロヴィゲル国が創立したのが生命管理局。元々は人工生命を制圧するために出来た機関なのよ」
メリサの話をフレイとバレットは真剣な面持ちで聞いていた。
「生命管理局は人工生命たちを次々と制圧し、事態は瞬く間に収束したの。十数年の時を経て、全体の術式の精度が上がったことで、人工生命に自我が芽生えるようになったみたいでね。それ以前の人工生命のように、暴れることはなかったようなの」
メリサは歴史を語りながら、『リオル・ミチェスの酒場』の建物が見え、足を止めた。
「そうして生命管理局は自我が芽生えた人工生命を管理する機関に変わったの。抗議活動の人たちは人工生命が自然の摂理に反していることに加え、暴走するんじゃないかって危惧しているのかもしれないわね」
「それであの人たちは良くない感情を抱いているんだね」
フレイは俄然がいったとでもいうように、何度も頷いた。
「ガルルルルル!」
バレットも納得したとでも言うように、軽く唸り声をあげた。
「あの、送っていただき、ありがとうございました」
メリサはヴィオスに向き直ると、頭を下げて丁寧にお礼を告げた。
「いえいえ、構いませんよ。それでは私はこれで失礼します」
ヴィオスは頭を下げ返すと、踵を返し、元来た道へ戻っていった。
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