第二話 成長
「どうしたの? 私の可愛いフレイちゃん」
メリサは甲高い声で泣くフレイを抱っこすると、あまりの可愛さに頬ずりした。フレイの頬を伝う涙は燃えたぎる炎のように熱かった。よく見ると、涙の中に小さな炎が燃えていた。涙の熱い理由が分かり、メリサの頬は緩んだ。
フレイの可愛い顔に見惚れていると、赤毛に肩を叩かれた。僅かに顔を後ろに向けると、赤毛が炎で『お腹が空いているんじゃないか?』と文字を作り出していた。確かに赤毛の言うとおりかもしれない。炎で文字を作り出しただけで、言ってはいないけれど。
「フレイちゃん、お腹が空いているの? だったら、これを食べて」
メリサはそう言いながら、自分に瓜二つの果実を手に取り、フレイに食べさせた。フレイは果実をかじり、飲み込んだ。その直後、フレイの全身の皮膚がまるで意思を持っているかのように蠢きだした。激しい波のように、皮膚が揺らめき、大きさを変えていく。
フレイはポキポキと骨を鳴らしながら、赤ん坊から10代の美少女へと急成長を遂げた。赤毛の長髪に、赤い瞳は母親のメリサによく似ていたが、左目の中心に小さな口がある点は違っていた。
フレイは左目の小さな口から炎を吐き出すと、真っ赤なローブを錬成する。火の粉が部屋に舞う中で、フレイは優雅な動きで真っ赤なローブを着た。
メリサはフレイの急成長した姿に心の底から感動し、大きな拍手を送った。照れくさそうに微笑むフレイの姿に、メリサはキュンとした。
「フレイちゃんのローブ姿、すごく可愛いわ。左目の小さな口もキュートだし」
「……お母様の真っ赤なゴスロリ姿も可愛いと思う」
「へへっ、そうかな?」
メリサはフレイにゴスロリを褒められたのが嬉しい反面、照れくささもあり、ほんのりと頬を染めた。恥ずかしさを誤魔化すために、メリサはそれぞれの指の中心にある眼球を開いた。
フレイが興味深そうな表情を浮かべているのを確認すると、メリサは手の甲を上に向け、眼球から真っ赤な泡を吹いた。
真っ赤な泡は壁に向かって飛んでいく。真っ赤な泡が音もなく静かに壁に触れた。その直後、壁が炎を纏う女性へと姿を変えた。髪の毛が泡状になっており、目はどこか虚ろだった。
「ガルルルルルル!」
炎を纏う髪の毛が泡状の女性は獣のような咆哮を上げた。
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