第十七話 お詫び
「うぅっ……お母様」
フレイが軽く頭を振りながら、目を覚ました。バレットがちょうど駆け寄ったタイミングだった。
「フレイちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫。何ともないから、心配しないで、お母様」
フレイの言葉に安堵のため息をついたメリサは、バレットの視線が、両腕の術式に向いていることに気付いた。
「あっ、これはね。術式“回光気”といって、回復系の術式なのよ」
メリサはそう言いながら、バレットにも術式“回光気”を使用した。レイフォスに蹴られたお腹が光の粒子に包み込まれる。バレットは頬を緩ませ、どこか心地良さそうな表情を浮かべた。術式“回光気”はリオルに教わった術式だった。メリサの熟練度が低いために、リオルほど回復のレベルは高くはなかったが、ある程度のダメージであれば、多少は回復させることが可能だった。
メリサはチラリとレイフォスに視線を向けた。レイフォスが客に向かって『騒がせたお詫びに、商品はタダでいい。金はいらない』と言っているのが聞こえた。
メリサは視線を戻すと、バレットと協力してフレイを立ち上がらせた。フレイは石畳に転がるレイヴォステンを見て悲しそうな表情を浮かべた。よほどレイヴォステンを食べたかったらしい。
すると、フレイの様子に気付いたと思しきレイフォスが、籠を手に持ち、レイヴォステンを入れた。他にも様々な野菜や果物、商品等を籠に入れていく。籠がいっぱいになったところで、レイフォスはメリサたちの元に駆け寄った。
「気分を害したお詫びだ。これを持っていけ。もちろん金はいらない。タダでやる」
レイフォスはそう言いながら、メリサに籠を持たせてきた。メリサは戸惑いながらも、頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いや、礼はいい。そもそも俺があんたの父親をクズ野郎って言ったのが悪かったんだ。すまなかった」
レイフォスは深く頭を下げて謝ってきた。レイフォスは口が悪いだけで、根は良い人なのかもしれない。メリサは睨み付けたことを申し訳なく思った。
「それと魂の件だが、何も心配しなくていい。すでにルールに則って肉体だけだが、国外追放しているからな。規則違反で永住権を剥奪したとはいえ、魂が髪に宿っているのは何も問題はないだろう」
レイフォスはメリサを安心させるように言うと、店先に戻っていった。レイフォスの背中を見ながら、メリサはあらためて深くお辞儀した。
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