第十五話 フレイの怒り
「お前は確かクズ野郎が生んだ女じゃねえか」
フレイはレイヴォステンを取った後、図鑑に載っていた野菜や果物が他にないかを探していたが、男の言葉が気になって振り返った。
漆黒の衣装を纏った鋭い眼光の男が、メリサのことを見ていた。メリサは男のことを睨み付けているようだった。メリサと男は知り合いなんだろうか? 仮に知り合いだとしても、2人の間には不穏な空気が流れているし、良好な関係性ではなさそうだった。
「ほう、そこにいたのか」
そんな風に思っていると、男がポツリと呟く声が聞こえ、フレイは怪訝な表情を浮かべた。そこにいたとはどういう意味だろうか?
「クズ野郎を国外追放したはいいが、肉体だけで、魂がないのが気になっていたんだよな」
男はそう言いながら、メリサの赤毛を睨み付けているようだった。クズ野郎とは誰のことなんだろうか? 肉体だけで魂がないとはどういうことなんだろうか? フレイには男の言っていることが何も理解できなかった。
ただメリサが男の言葉で、怯えていることはフレイにも分かった。なんで怯えているのかは分からないけど、メリサをそんな気持ちにさせた男のことが許せなかった。
フレイの怒りが露わになり、血管が浮かび上がった。血管には小さな炎の粒子が流れていた。
「……お母様は私が守る。炎顔」
フレイが呟くのと同時に、左目の小さな口から炎が出現した。炎は瞬く間に、フレイの顔を象った。フレイに瓜二つの炎が凄まじい勢いで、男に向かって突き進んでいく。炎に気付いた男が、チラリとフレイを見た。
「フレイちゃん?」
メリサも気付いたらしく、驚いたように、フレイに視線を向けた。その目には戸惑いと困惑の色が見て取れた。
「母親の様子に気付いて怒ったか。仕方ないな。術式“五曲蔓延月華”」
男が呟いた瞬間、右腕に術式が浮かび上がった。右の掌から五枚の月の形をした花が出現し、澄んだ音色を奏で始めた。
その直後、フレイを象った炎の形が崩れて霧散するかのように消え失せた。と同時に澄んだ音色が鼓膜を刺激し、まるで脳内で爆発音が響きわたったかのような感覚に陥り、フレイは失神した。
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