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もう一度、魔女の母に会いたくて。  作者: ジデン タツバ
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私の全て、貴女の全て。

森の魔女が死んだ。

その知らせを聞いたのは既に彼女が死んでから1週間が経った時だった。


どおりで森が騒がしかった訳だ、と当時は納得半分、他の者と同じように、しっかりと涙を流した。


何も出来ないのが悔しくて、ではない。魔女として同い年の彼女を失ったのが悲しくて、大粒の涙を流していた。


久しく泣いた後の顔はそれはもう酷い表情だった。

私に出来ることを考えた。それが"ラブ・トリガー"を完成させる"事だった。

元は禁術、死者を1人だけ生き返らせるもの。代償は4人分の血肉。

禁術カテゴリー故に代償にテコ入れはあまりできない。ならせめて、と……魔術式を書き換える。


結果から言えば、想像以上に成功した。

代償も、命は変えられなかったが、1人の犠牲で済む。

……私は、あの魔女のためなら喜んで身体を捧げる──



「良いわ、泣きなさい?──あなたも、ね?」


力尽きて横たわる私に語りかける声があった。

その顔は以前と同じように端麗で、見る者を例外なく魅了するような。

実に懐かしい顔だった。

"老い"という形で贖罪をした私とは違う、あの時のままの綺麗な顔で、彼女がそこにいる。


彼女の声に釣られ、手をのばす。

貴女は私の手を取り、そのまま私を抱きしめた。

私の体を折らないように、しかしそれでも強く。

その時、初めて自分が泣いていることに気付いた。

大粒の涙が、暖かい雫が、目元から頬にかけて流れていく。喉からは絞り出すような、呻きにも似た声を上げる。頭の中には今までの記憶がフラッシュバックする。

初めて会った日、共に魔術を学んだ日、同じ人を亡くした日、共に笑って、泣いて、戦ってきた日々。

冷たかった身体に温もりが戻ってくる。重かった身体が若かりし日々のように軽くなっていく。


"あいたかった"


その一言をしゃくりながら伝えた。

彼女は笑いながら、私と同じ言葉を言った。


最後に、彼女にしか教えてない私の名を呼んで。


私は彼女の身体を強く抱きしめる。

今だけでいい。今だけ、貴女に甘えたい。

今まで会えなかった分の、想いを、悲しみを貴女に伝えたい。寂しかった。辛かった。泣きたかった。死にたかった。貴女に会うために色んな方法を試した。でもそれは全て自分の身を滅ぼすだけで、解決になんてならなかった。私の涙はもう偽物じゃない。私の気持ちは作り物じゃない。

小さな頃、貴女に叩き込まれた教えは、今まで私を動かしていた。ありがとう。貴女が親友で、貴女が私のそばにいてくれて、私と一緒にいてくれて、私を叱ってくれて、私を見てくれて、私は本当に救われたの。

私が私で居られたのは、あなたのおかげなの。

次は……私が、貴女を支えれるような人になりたい。

あの魔女()は将来きっとすごい(魔女)になる。

……その、手伝いをさせて? 私も、未来を見たいから。


彼女は笑って、もちろん、と答えた。

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