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『てなわけで、アレキバさんとエリーシャさん、両片思いだったわよ』
「鎖越しで聞いていたから、知っている」
シンは腕組みをする。どうすればいいか困っているようだ。
「両思いならば、くっつける必要はない……?」
『本来ならそうだけど、結局あのあと一言も喋らずに解散していたわよ。あれは相当こじれているわよ』
「なぜこじれるんだ……? 両思いなんだろう?」
『お互い、本音で語り合えないのよ』
「……分からない。全く分からない」
シンは本気で戸惑っていた。
かちりと、意地悪スイッチが入った。
『へえ、なるほどねえ。シンさんは恋愛を食い物にしているくせに、両片思いのこじれってのを理解できないってことねえ』
ユウナはニヤニヤと笑う。
『わかったわ。あなた、今まで彼女どころか、異性を好きになったことないでしょ』
「うぐっ」
図星だった。
ユウナはニヤニヤしてシンの周囲をまわる
『ふっふっふ。なら理解するのも無理ねえ。あたしはわかるけどねえ。経験がないなら分からないのも仕方ないわねえ』
ユウナは煽りに煽った。
自分が恋愛経験があるかどうかさえ知らないのに、シンを小馬鹿にしまくった。
それが、彼女に悪い方向に進むと知らずに。
怒りと羞恥心で震えていたシンが、ぴたりと制止した。
顔を上げて、彼はものすごく悪い笑みを浮かべる。
「そうだ、私は恋愛なんてものを知らない。幽霊の君は、どうやら恋愛上手のようだ」
『ふふふ、当然!』
「本来なら両片思いと知らせていただいた段階で解放してあげようと思ったが、君ならそれ以上の成果を持ってこれそうだ」
『うん?』
シンは、口端をあげる。
「付き合ってもらいましょうか? カップルのこじれがなくなるまで」
『……』
ユウナの脳内には、とあることわざが浮かんだ。
口は、災いのもと。