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2

 夕方から入店したのもあり、太陽はもう沈んでいた。


 さて外に出たが、ユウナたちの姿が見当たらない。


 セシリーに怪しまれないように注意しつつ見渡す。


 とはいっても、どうせここにいるだろうと思い、上を確認しただけだ。


 やはり、すぐに見つかる。  


 猫カフェの屋根の上で、暗闇に染まる町並みを眺めていた。


 もちろん、ふわふわも一緒だ。


 ホタルのような白く光る虫は、白くおぼろげに輝くユウナに寄り添っている。


 ユウナの目は、迷子のように夜景を見下ろしていた。


 彼女の瞳が、シンを映す。


『あら、もう出てきたの?』


 ひょい、と身軽に屋根から降りる。


 さっきまでの憂いに満ちた表情は綺麗さっぱり消えてなくなっている。


『猫を見たら、何かしらの記憶は戻ると思ったんだけどなあ。無理だったみたいね』


 ユウナは大きく伸びをする。


『まっ、仕方ないかな! 諦めが肝心ね。うんうん』


 彼女は微笑む。


 その笑顔が、どこか淋しげにみえたのは、彼の思い違いではなかろう。


 ユウナが見ていた景色を眺める。


 この街に生き、この街で生活し、どうせこの街で人生が終わるであろう私にとって、街の夜景なんて見ても感じるものはない。


 今日もどこかで誰かが残業しているな、なんて現実的なことしか思わない。


 それでも、ユウナがこの風景が好きというのなら。


 ……シンも、好ましく思えるようになった、気がする。

 

 ――ユウナ。もし行く先がないのなら、うちに来てもいいぞ。


『孤児院に? でも……』


 ――別に嫌ならいい。たまに遊びに来る程度でもいい。


 ユウナはパチパチと目を瞬かせる。


 なぜだか恥ずかしくなり、ユウナから視線をそらす。


 ユウナはぶっ、と吹き出す。


『まーたあたしを働かせるつもりなの? 二度目はお金たんまりもらうわよ!』


 ユウナは声をあげて笑った。



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