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6

 アレキバは複雑そうな表情で、その人を見る。


「……リバイさん……」


 シンが片眉をあげる。


 ――リバイ? 


『なに? 知りあい?』


 ――トルーパー商店のライバル会社の社長だ。アレキバさんが砂漠超えをしようとしたライバルを邪魔した噂があっただろ? そのライバルが、あの人だ。


『へえ……。確か、ライバル社の砂漠超えは失敗して、死者こそでなかったけど怪我人続出したんでしょ? なるほどね。険悪な雰囲気になるのも仕方ないわね』


 アレキバは背中にエリーシャを隠しつつ、静かな声でいう。


「リバイさん、あなたの砂漠超えについて、我々トルーパー商店はなんの関与もしていません。そんな卑怯なことをする暇があれば、社員に休暇を与えます」

「言うだけなら、いくらでも言えるんだぞ」


 リバイは嫌悪の目でアレキバを睨む。


「今に見てるんだぞ。すぐに我らの会社も砂漠超えしてみせる」


 捨てセリフを吐いて、リバイは会場を去っていった。


 しばらくすると、パーティーの参加者も賑わいを取り戻したものの、リバイの影響が尾を引いているのか、どことなく空気は忙しない。


『なんか、嫌な感じ』


 ――そうだな。だが、まあそれはアレキバさんがどうにかする。


 シンは微笑む。


 ――ありがとうな、これで神からの依頼が達成だ。


『どういたしまして』


 ――明日には、どうせ神が私の夢に不法侵入してくるだろう。それを聞いて、お前は解放だ。


『そうそう。さっさと首輪を外してほしいわ。早く犬猫の立場から逃れたいわ』


 ふわふわは、不思議そうに耳打ちする。


『ユウナ、なんだか苦しそうだけど、大丈夫であるか?』

『……へ? 苦しそう? ……そう?』


 ユウナは首を傾げる。


 自覚はないが、言われてみれば確かに胸が痛いような気がしてきた。


『……まあ、あたしも、この作戦が結構楽しったってことかもね』


 シンと真剣にふざけ合う時間は、中々に退屈しなかった。


 けれど、時間は過ぎるものだ。


 シンは神父として別の仕事をしなくてはならない。


 そしてユウナは、……また、一人ぼっちの幽霊に逆戻りだ。


『ユウナ……』


 ふわふわは、心配そうにユウナの周りをふわふわする。


『……ごめんね。なんでもない。あたしには、ふわふわがいるもんね』


 バシバシと頬を叩く。


『……よし。シン、どうせ今夜にはトモシビ様があんたの夢に出てくるでしょ? 完了報告を済ませて、契約終了にしましょ!』

「……」

『シン? どうかした?』


 シンは少し悩んでから、こくりと頷いた。


「そうだな……。そうしよう」


 シンには、ユウナの寂しそうな声がバッチリ届いていた。


 ここまで完璧に作戦が成功したのも、ユウナがいてのことだ。


 何か、お礼がしたい。そう思っていた。


 ふたりとも、完全に神様からの頼み事が終わった体で、あれこれ考えにふける。


 だが。


 翌日になっても、シンの夢には、神様は訪れなかった。


 



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