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4

 壊れたお城を見つめていた女の子は、ほろほろと涙を流す。


「お城……。お母さんと、作ったのに。作ったのに!」

「ご、ごめん! 僕が直す! 直すから!」

「触らないで!」


 ばしっ、と叩かれてしまった。


「うっ、うわーん!」


 わんわんと泣いて、女の子は走って行ってしまった。


「……あ、ちょっと……」


 伸ばした手は、遠くなった女の子の背中には届かなかった。


 小さなアレキバは落ち込んだ。家に帰っても、ご飯を食べても、気分は晴れなかった。


 せめて商店に顔を出せば気分転換になるのに、今日は許されなかった。


 失意の中、小さなアレキバさんは眠りについた。


 翌日、アレキバはあの公園を訪れた。


 あのときの女の子がいれば謝ろう、と思っていたのだ。


 言葉だけでは許してくれないかもしれない。アレキバは小さいながらも一生懸命考えて、高値で取引されている貝殻を持っていることにした。


 ビクビクしながら公園をのぞきこむ。


 女の子は今日も公園に遊びに来ていた。


 今度は鉄棒で逆上がりをしている。


 くるん、と綺麗に回転し、地面に着地する。


 アレキバはまだ逆立ちなんてできなかった。


 なんなら、前回りでさえも上手にはできない。


 すごいなあ、と子供ながらに尊敬の心を抱く。


 アレキバはおそるおそる彼女に話しかける。


「あのう、ちょっといいかな」


 女の子はアレキバをみると、キッと睨みつける。


「私のお城を壊した人!」

「ご、ごめん! 本当にごめん! その、これ! プレゼント! あげる!」

 

 貝殻を差し出すも、彼女の機嫌は直らない。


「嫌よ。私、怒っているんだからね!」


 彼女は肩を怒らせて、公園からいなくなってしまった。


「……そんな……」


 アレキバは衝撃を受けた。許してくれると思い込んでいたからだ。


 しばらくアレキバは公園内に立ち尽くしていた。


 そんなとき、通りがかったトルーパー商店の人が彼に声をかけた。


「おい、おぼっちゃんじゃねえか。どうしたんだ?」

「……実は……」


 一連の話を告げると、おじさんは難しそうな顔で腕を組む。


「そっか……」

「プレゼント、どうして貰ってくれなかったんだろう」


 この貝殻は、トルーパー商店で高値で取引されている商品だ。


 彼にはよく分からないが、女の人がよく購入して喜んでいる。


 だから彼女も許してくれると思ったのだ。


 落ち込むアレキバに、トルーパー商店の人はしばし考え、一生懸命言葉を選ぶ。


「タイミング……。もあると思う。だが、なんだろう。誠意がなかった、とかかな」

「せいい……?」

「あー。誠意っていうのはな……。そう、思いだ! 思いをこめたプレゼントなら、許してもらえるさ!」

「思い……。どうやったら思いが込められるの?」

「そうだなあ。手作りしてみたらどうだ?」

「手作り……。けど、どうやったらいいんだろう。自信ないよ」

「だったら、その貝殻をもとに細工してみればいいんじゃないか? それなら簡単だろう?」

「うん……。自信ないけど、やってみるよ」


 アレキバは家に帰ると、彼なりに懸命に工作をはじめた。


 元々あまり手先が器用ではないので、出来は散々たるものだった。


 それでも、彼なりに誠意をこめて作り上げたのだ。


 彼は不格好な貝殻を握りしめ、もう一度あの公園に向かった。


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