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 ターゲット候補のカップルが、何も知らずに近づいてくれた。


「ねえあ・な・た。今日は縁結びのお人形買ってくれるんでしょう? 楽しみねえ!」

「お値段は張るけど、効力はめちゃくちゃあるんだろ?」

「ものすごい魔力の有る人が作っているんだって!」

「ああ。気になるなあ」

「ぬいぐるみを真ん中にして、今日は夜まで一緒にいましょうね? 本当は明日も夜までいたいけど、お仕事で無理なのよね」

「ごめんねハニー。代わりに今日はたっぷり愛してあげるよ」

「もう、あ・な・た」


 ポキリ、と枝が不自然に折れて、二人の頭に降り掛かった。


「う、うおう!? なんだ!?」

「もう、頭に葉っぱがついたじゃないの!」


 ぎゃあぎゃあ騒ぐカップル相手に、ホコリのような虫がぴょんぴょん跳ねる。


『ユウナ、やったのである。人間のカップルを不機嫌にさせたのである!』

『ふわふわ。甘いわね』


 灰色の髪の毛は真っ直ぐで長く、ぱっちりとした黒目は知的に輝いている。


 仕事ができそうなオーラが漂っており、その上彼女の体は宙に漂っていた。


 ユウナは半透明な手で頭を抱え、ゆっくりと首を横に振る。


『ほら、見てみなさい』


 カップルははじめこそ不快そうにしていたが、数十秒後にはお互いの腕を絡み合い、いちゃこらしていた。


『あの程度の嫌がらせは、カップルを燃え上げて終わりよ』

『うむ……。人間とは難しい生き物であるな』

『ふっふっふ。あたしも記憶喪失のハンデはあれど、立派な女子なのよ。ふわふわには負けられないわ』

『さすがリア充撲滅委員会幽霊支部委員長であるな……。して、どうやってあのカップルを別れさせるのであるか?』

『まずは徹底調査よ』


 カップルはベタベタと体を触りっこしはじめた。


 ユウナはぶん殴りたくなるが、グッと堪えて観察する。


 カップルの男は近くのベンチに座る。女性は荷物だけを置いて、飲み物を買いにいった。 

 

 男は彼女がいなくなると、あぐらをかいてニヤリと笑った。


 ユウナは幽霊なので、人の心が読める。


 男は心のなかでこう言っていた。


 ――けけっ。ちょろい女だ。今日一日遊んでやるよ。明日は別の子と遊ぶから、今日だけだけどな!


『……』


 ユウナはふわふわと見つめ合い、こくりと頷いた。



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