入学
学園では寮生活となる。
寮では1部屋に二人という構図だ。いろいろと持ち込みが可能なので俺はジャガイモとナスのプランターを持っていくことにした。
海軍司令官の息子であるボンと共に海辺で遊んでいた。
いつも通り遊んでいるとまたもやサンドガニに出くわした。
しかし、俺にとってもうサンドガニは怖くない。
俺は土魔法を展開する。
戦車砲などに用いられる「APFSDS弾」を参考に形を作る。
魔法で進路を調整するために安定翼をわざわざ生成する必要はない。
必死に逃げようとするボンに向かって
「安心しろ、見とけよ」と恰好つけて言う
ボンは俺が土魔法で生成している弾を見ると、興味津々でこちらに近づいてくる。
助走をつけるために弾を後ろに引いてそのまま魔法でサンドガニに標準を定めながら勢いをつける。
ブォン!と言う音とともに辺りに砂が舞い上がり、ドーンと地響きが起こる。
そして砂埃が晴れるとそこには大きな穴と粉々になったサンドガニらしきものが散らばっていた。
この騒ぎに司令部やメイドのリンさんが何があったのかと走って駆けつけてくる。
「大丈夫ですかアルト様!」
俺は何事もなかったかのようにふるまった。
「えぇ、それより地響きがしましたが何があったのでしょうか」
「嘘はダメですよ。アルト様・・・」
隠せるはずもなかった。
ボンはあの一件以降、土魔法にあこがれ、俺と一緒に土魔法の練習をしだすようになった。
しかし、土魔法であのような威力を出すのは相当な魔力が必要だ。
そして俺は暫くの間ここに来れないことを告げる
「ボン。俺、学校に行かないといけないんだ。だからしばらく遊べない」
「うん。それまでに僕もアルト君みたいに魔法が使えるように頑張るよ」
「じゃあ元気で」
別れはあっさりとしたものだった。
戻れるのは夏休みだけで、しかも俺は魔王の跡継ぎと言う存在。いつでも帰ることはできるのだ
入学試験前日、俺はイスタニックにあるジューデン家の屋敷にいた。
寮生活になり、俺一人で暮らしていくことになる。
メイドのリンとはしばらくお別れだ。
入学試験当日
入学試験と言っても簡単な計算と国語の問題である
俺はパパっと一瞬で解き、合格発表を待つだけであった。
俺はそれまで暇なので街の方にでも行こうかなと思っていると突然後ろからものすごい魔力を感じた。
後ろにいるものはただものではない。俺の第六感がそう告げる
すると肩をガシッと掴まれた。
そこにはあの大魔王イスタニックがいたのだ
「お久しぶりじゃの」
「へっ、あ、どうも」
俺は緊張のあまりまともに声が出せない
「そう緊張するな」
「あ、はい」
「ところでお前を学校に入学させるよう言ったのはわしじゃ」
「え?」
まさかの事実に驚愕する
俺は城でポンと遊びながらゆっくりしたかったのに
「お前には魔法の才能があるのをわしは知っとるからの」
「はぁ」
「それにお前には頑張ってもらわないと借き・・ジューデン領が立ち行かなくなるからの」
「今本音出てましたよね」
「なんじゃ?」
ニコニコしながら殺意丸出しで俺を見てくる
「いえ何にもありません」
「学園でしっかり勉強するんじゃぞ」
「はい」
「それでは、さらばじゃ!」
大魔王イスタニックは風のように屋敷から消えていった。
数日後、試験の結果はもちろん合格であった。
俺は入学準備を整えて入学式へと向かう
俺は魔王の跡継ぎであることを隠して学校生活を過ごすことにした。
その理由は2つ
1つ目は魔王の息子という事で力試しをしようと勝負を挑んできたり、魔王の妻の座を狙う女がすり寄ってくるためだ。
2つ目はジューデン家は馬鹿で無能という事が定着しているからである。俺はそんなことでいじめを受けたくなかったからだ。
そして入学式
ジューデンの名を消し、アルトと言う名で入学
みんな高そうな服を着ていた。
何故かというと、ここは学費が高く庶民はほとんど入学できないのが現状だ。
なのでここに入学するものはどこかの魔王軍の幹部だったりの息子であったりする。
最初に寮に案内されると同級生であるアポロと言うやつに出会った。
「俺はアポロ。魔法学科に入学した。よろしく」
俺はアポロが出してきた手をつかみ
「俺はアルト、俺も魔法学科だ。よろしく」
「奇遇だな」
アポロはがっちりと手をつかみ握手する。
どうやら寮の仲間は当たりみたいだ
この学年は1クラス30人の3クラスで、魔法学が1クラス、剣術が2クラスであった。
俺が席に着くとアポロは前の席だった。
そして俺がその後ろの席に着くと隣の奴が話しかけてきた
「よう、俺はジャンディよろしくな!」
ジャンディはめちゃくちゃデブだった。
地球であればピザとハンバーガーを馬鹿みたいに食ってコーラでキメるような体格をしている
「アルトだ。よろしく」
「アルトか、いい名前だ。ところでアルトはどんな魔法が得意なんだ?」
「得意っていうのは考えたことないけど土魔法をよく使うかな」
「土魔法か、俺は風魔法が得意なんだぜ」
風魔法か・・・やったことないな
俺が廊下を歩いていると
「あっ」どこからか聞いたことのある声が聞こえた。
後ろを振り向くとミソラがいた。
「雑魚がな・・」俺は慌ててミソラの口をふさぐ。男性が付き合ってもない女性の口をふさぐのはどうかと思うのだがしょうがない。
「俺は雑魚じゃない。アルトだ」
「だって弱かったじゃん」
「俺は剣術に関しては興味がないからね。魔法なら君に勝てる自信があるよ」
「ふーん」
ミソラが興味がなさそうに返事する
「ここで雑魚って言わないでね」
「じゃあジューデン様とでも?」
「それもダメ。ここではアルトって普通に呼んで!」
俺がそんな話をしているとアポロがやってきた。
「アルト、食堂に行かない?」
「あ、いいよ。行こう」
「ところで彼女はアルトの知り合い?」
「まぁ、そんなところ。そんなことより早く食堂に行こう」
「あ、あぁ」
俺はさっさとミソラから離れたいがために話を無理やり切り上げる
食堂に行くとジャンディが待っていた。
「おーい2人ともこっちだ」
「うわっ」
そこにはステーキが何枚も重なっておりパンもお皿からはみ出し、今にも崩れそうなぐらい積みあがっていた。
「ここの肉、家で食べる肉よりいいもの使ってるぜ」
並びお皿にステーキとパン、そしてスープを盛り付けてもらう
席に着きステーキを口の中に運ぶ
ステーキは確かに美味しい。
噛み応えがあり、噛むたびに肉汁が口の中にあふれ出す。
スープはカブのスープだった。こちらも美味しい。
昼休み、俺は一人で学校の中庭を歩いていた。
そこには沢山の花や野菜が育てられていた。
俺がしゃがんで花を眺めていると「植物に興味があるのかな?」
後ろから声をかけられた。振り向くとTHE魔女って感じの女の人だった
「えぇ、母親がよく花を育てていたのでその影響で」
「へぇ~」
「ところでこの花は?」
俺が指さした先にはチューリップのようでチューリップではない花があった、
明らかにほかの花と違う雰囲気があったので聞いてみたのだ
「それはハントリップっていう花と言うより魔物かな」
「え、魔物?」
「えぇ、この花の中には甘い蜜が入っていてそれで虫をおびき寄せるの。そして虫が入るとこのように花が閉じて魔力でエネルギーに変える」
「なるほど、とても面白いですね」
「でしょ、よければ放課後私の研究室に来ない?」
「あ、あのお名前は?」
「あぁ、忘れてた。私の名前はミオナ。魔法陣と植物の担当よ」
「私はアルトと言います。魔法学科の1年生です」
「あら、でも私は2年生の担当だからね」
「そういえばこの学校は植物についても学ぶんですね」
「えぇ、2年生の1年間だけあるよ。行軍中に毒のある植物とかを食べないようにするためにね」
「へぇ~」
そんな話をしていると昼休み終了を告げるチャイムが鳴り響く
「もうすぐ昼休みが終わっちゃうよ」
「あぁ、それでは」