かわいいが校則を凌駕するのは自明!!(Q.E.D.)
起承転結を探すべからず…なのです
私は悩んでおりました。それはもう、とてもありきたりなことで悩んでいたのです。
…と、思っておりました。
でも違いました。そして、それに気がついたことでさらに悩んでしまいました。
「殴りたいですわ…」
もはや言葉にしてつぶやかないと、その衝動に負けそうでした。
「説明したら殴らせていただけるかしら?」
説明はきっとできると思うのです。でも説明はできても、説得はできないこともわかってしまうのです。
「自分が正しいと信じている方たちがうらやましいですわ」
まさに、そのことだったのです。ですから、
「殴りたいっ!……………………ですわ。」
つまりはそう言うことなのでした。
「その気持ち、わかる人にしかわからないもんね?」
「え?」
涼やかに響くタイミングのいい声に、思わず振り返りますとそこには私と同じ学校の制服の女の子と男の子が並んで歩いていらっしゃったのです。
お見かけしない方たちですわ…。
絶対に一度お会いしたら忘れないと確信できるのですが、全く記憶にございません。
…えっと、
女の子の方は少し栗色の入った見事な黒髪を肩のあたりまでストレートに流してらっしゃいます。
切れ長で大きな瞳は賢さを感じさせる落ち着きを見せつつ、好奇心や無邪気さを思わせる深みのある輝きが印象的です。
やや面長の白いきれいな肌に、魅力的な瞳を中心に、整った鼻梁と上品な薄い口元、そして明らかに小さく感じる耳が絶妙に配置されていまして、女の私が見ましても気品という点でずば抜けているように感じられます。
ところが、そんなお顔立ちの圧倒的な高貴な印象とは対照的に、白いカッターシャツをかなり大胆に開けて、学校指定のリボンよりも明らかに幅広の鮮やかな赤いリボンタイを結び付け、お脱ぎになったベージュのジャケットをカバンと一緒に肩に乱暴に背負っていらっしゃいます。
…ええ、自分の胸の魅せ方をよくご存じのようです。
さらにスカート丈も短く、膝の上まで薄い黒い布が覆っていて、白く強調される部分が…って、完全にストッキングではないですか? え、許されるのですか? これ?
「だって、かわいいは正義!かつ校則も正義! ここで、正義の名において、かわいいは校則より大事である。ならば、かわいいが校則を凌駕するのは自明!!(Q.E.D.)」
私が口に出していないのにその女の子は私が瞬間に抱いた疑問に答えていきます。
でもいいえ、そんなのは断じて答えになってないですわ!
「…本気で言ってるからな、こいつ。そして、この論理で風紀の連中も黙らせてしまった。俺にはかわいいがこいつに適用されたっぽいのが一番謎なんだが…」
そう補足する男の子もまた、特徴的だと言えます。
ゴっ! ガっ! ドバっ!
お姿を脳内スケッチしようとしたのですが、この瞬間、最初に拝見した時とはすでに顔かたちも服装も何もかも変わり果てておられました。
ずっと見ていたはずなのですが、何があったのかさっぱりわかりません。
「オレオマエキライ」
「そういう素直じゃないところだけは好きよ。」
おふたりの雰囲気から兄妹か幼馴染なのかもしれません。
「姉は私です!」
「ふざけろ!」
なぜでしょう? 仲がいいのは明らかなのにちっとも美しくありません。
ふたりとも印象的で恵まれた身体的特徴を持ってらっしゃるのに、まさに台無しです。
美しくありません。
「で、どなたなのですか? あなた方は。」
ほんとうにどうでもいいのですが、この間、およそ15秒だというから驚きです。
勢いは正義?