くーとそら
4コマ漫画のイメージで書きたいと思ってますが…
「そらくん、今日も出動だよ~」
幼馴染のくーがノックもせずに部屋に突入してくる。
出動? まじめんどくさい。つまり、まめくさい。
当然、顔に出てたのだろう、くーがいつものようにむっとした表情になる。こんな表情でもかわいいと思えてしまうのだから、男という生物は情けない。
だから、ノックの件はスルーする。どうせ何度言っても無駄だし。
黙っていたら、くーがじっと見ている。そろそろ口開かないとヤバいやつだ。
「…えと、また、いつもと同じパターン?」
「…うん、たぶん、そうだけど。」
「あのさ、もうほっとかない?」
ぴーん。
部屋の空気が変わった。
そして、くーの目から光が脱落している。こういう投げやりっぽい姿勢、何より嫌がるんだよな、この子。長い付き合いだから、わかってるんだけどさ。
「うむ、沈黙は肯定の意味。」
「ほほう、そのペンタブレットはもう必要ないということでしょうか、そら様?」
「またかよ!」
いつもながら人質を取るとは卑怯にもほどがある。ペンタブは人じゃないけど。
くそ、Kめ。K=kuumiだ。
そして現場に到着した。
「あーあ、これもひどいなぁ」
思わずこぼしてしまう。帰っていい? よし、帰ろう。
「ダメです」
くーがじろりと見てくる。心の中、正確に読まないでくれますか?
昨今の創作では珍しくなくなった地の文読みの「異能」だが、くーの場合はまじもんだ。今は詳細を考えている余裕はないが、ほんとにひどいのだ。
「……」
「あの、むしろ何か言ってください。」
「…没収。」
え、来たよね? 俺、頑張ってここまで来たよね? お…
「私は鬼じゃない」
あの、まだ地の文にも表れてないことまでツッコむのやめてくださいますか?
俺がわかりやすいわけではない。くーがおかしいのだ。
2を89589933乗して1を引く、すなわち14889444…(24862032桁省略)…17902591!
意味がないけど意味のある数字の羅列に、くーが目を回している隙に…。
(うん、数字の並びにも桁数にも意味はないけど、発見されている中で一番大きい素数であるという意味はあるのだ。)
…
しまった、俺も気をとられてしまった。
ああ、星がきれいだなー。
「そらくん、ひどい」
「俺は悪くない。意味があるようでない…ようである世界が悪い」
うん、美少女のジト目だ。何のご褒美だろう。
こうして、お互いに数字にもてあそばれた我ら幼馴染コンビは、今日も仕事ができなかった。
「没収ね。」
こうして、俺とペンタブの短い付き合いは終わった。
仕事が始まらなかった…