NYキャップの彼
焼肉屋でアルバイトをする学生。
私は歩みを進める。
陸橋の下を曲がる…。
「あ、彼だ!」
NYのキャップ。彼は親元を離れて大学に通う学生。生活費を賄うために夜遅くまで郊外の焼肉屋でアルバイトをしている。
終電が駅を出て、しばらくしたころ…。
彼は線路までの長い距離を歩いて自宅アパートに向かう。
イヤホンでお気に入りの音楽を聞きながら自宅までの歩みを進める…。
郊外の焼肉屋。大学の講義を終えて、店に出勤する彼。
夕食どきの時間帯。忙しくオーダーをとる。注文品を客のテーブルに運ぶ彼。額に浮ぶ汗を腕で拭い、その腕を手ぬぐいで拭く。
怒涛の営業中の忙しい時間がようやく終わり、閉店。
「お疲れッス!」と店を出る彼。
NYのキャップを被り、イヤホンを耳にアパートへ向かって歩き出す。
「うん?待てよ…。なぜ、彼はアパートと店の長距離を自転車を使わないんだ?」
私の疑問が始まる…。
「いや、今どきリサイクルショップに行けば少額で自転車は古さボロさなど、程度を問わなければ手に入るはず…。なのに…。」
実は彼の大学はアルバイトをする焼肉屋とは全く別の方向にある。
だから、大学からアルバイト先までは自転車を使えない。そして、アパートから大学へ行くときの駅まで自転車を使ったならば、帰りは自転車を駅に放置しなならないのだ。
だから、いつも歩いている。来る日も来る日も…。
今日も同じ時間、私の向かいから彼は歩いてきた。
そして、何ごともないようにすれ違う。
やがて、私の自宅が近づいてきた。
さあ、いつものようにアイスキャンディーを買おう…。
次回につづく
彼は、なぜこのように、大学とも自宅とも離れた場所でアルバイトをするかのナゾはのこっている。