満月の夜に
初めまして。しゃもじです。よろしくお願いします。
色々と語彙力がないので色々と拙い部分が多々あると思いますが読んでいただけると幸いです。泣いて喜びます。
雨が降り始めた。
朝に空を覆った雲は、昼を迎える頃には黒く分厚くなり、滝のような雨を降らせた。やがて風も強くなり、雷も鳴り始めた。
嵐だ。
そこには山があった。
雨は、土を削って流し、土砂崩れを引き起こした。
風は、根が剥き出しになった木を薙ぎ倒した。
落雷は、樹齢200年を超えた大樹を穿った。
山には多くの生物がいた。
たくさん死んだ。
土砂に飲まれ、木に潰され、風に飛ばされ、雷に焼かれた。
嵐は3日間続いた。
嵐が過ぎても、雨は続いた。
雨が止んだのは、嵐が過ぎた翌日の夜だった。
雲の隙間から差し込む月光が、山を照らしていた。
そこには、1匹の雌の狼がいた。
出産していた。
もともとこの狼は、近くの洞窟を巣にしていた。嵐の間も、番とその洞窟の中にこもっていた。
水は天井から垂れてきていたので問題はなかったが、最後に肉を口にしたのは、嵐が来た日に洞窟に逃げ込んできた鹿の肉を少しばかりのみ。
既に丸2日以上経過していた。
雨と風が弱まり、ようやく外に出れた頃には体力も限界に近かった。
月明かりが見えてすぐ、余力のあった雄の狼は狩りにでかけた。それを追いかけようと、雌の狼も洞窟を出た。
産気づいたのはその時だった。
最悪のタイミングだった。
通常、狼の出産は穴の中で行われる。木の洞や洞穴、ときには他の動物が廃棄した巣穴を選ぶこともある。
気づいた時には既に洞窟戻る余裕すらも無くなっていた。
出産が始まってから2時間以上経過していた。既に3匹の子を産んでいる。しかし、雄の狼はまだ戻ってくる気配はない。
時間が経つにつれて、夜鳥が集まってきていた。
十数羽ほどが枝の上にとまっている。不気味な光を放つ瞳が、狼とその子に向けられていた。
しかし、木の上から見つめているだけで、襲ってくる様子はない。なぜなら、狼が低い唸り声をあげながら威嚇していたからだ。
とはいえ、夜鳥たちは逃げようとはしない。夜鳥たちからすれば、逃げる必要がないからだ。
威嚇はしているが、攻撃してくることはない。出産の影響で、狼はだんだん弱っていく。自分たちはただ安全なところで待っているだけでいいのだ。
狼は焦っていた。
疲労も空腹に加え、夜鳥へ威嚇しながらの出産。通常よりも遥かに体力を削られる。
たとえ出産を無事終えたとしても、自分は死んでしまうかもしれない。生きていたとしても、夜鳥の群れから子を守らないといけない。
絶望的な状況に不安が募る。
狼の腹の中に残っているのはあと1匹。もうすぐ出産が終わる。最後の気力をふり絞る。
夜鳥も出産の終わりを感じとっていた。狼たちを見る視線が変わる。
強い風が吹いた。
月明かりが消え、あたりが闇に包まれる。
何も見えない暗闇のなか、狼は最後の子を産んだ。
瞬間。
空気が変わった。
夜鳥が一斉に飛び立った。
全身の毛が逆立つような悪寒が狼を襲う。
狼は異質な存在感を放つそれを咥えて放り投げた。
狼は震えていた。
その震えは、極度の疲労からきたものなのか、それとも恐怖からきたものなのか、狼自身にもわからない。
また強い風が吹いた。
雲が動く。
月明かりが差し込み、だんだん周囲が明るくなる。
ようやく異質な存在感を放つものの正体が見えた。
それは狼が産んだものだった。
しかし、それは狼ではなかった。
人型の生き物が立っている。
背丈は30cm程。真っ黒の皮膚。頭には白い髪を生やしている。細い体をしたそれが、同じく細い2本の足で立っている。さらに、それには腕が4本あった。
よく見ると、その生き物は震えていた。
生まれたばかりで、まだ『立つ』という行為に慣れていないからだろう。
その生き物は、震えながら歩き出した。ふらふらと頭を揺らしながら、一歩一歩地面を踏みしめている。
その生き物が進む先には木がある。その根本に、一部が地面に埋まった石があった。しかし、地面から露出している部分だけでその生き物より大きい。
その生き物は、その石にもたれかかるように手をついた。
再び狼は悪寒に襲われた。。
バキン!という音が響いた。
石の真ん中に、大きな亀裂が入って二つに割れている。
それは、割れた石と自分の手を交互に見た後、今度は木の枝を持った。
瞬間、枝の先が蛇のように動き出した。伸びて、とぐろを巻くように、グネグネと動いている。
やがて変形に耐えられなくなったのか、手元の近くが折れた。折れた先は地面に落ちると同時に変形が止まった。
狼はその場から動けないでいた。
本当なら一刻も早く逃げ出したい、という思いはあった。
しかし、出産の疲労と恐怖で身体が言うことを聞かない。それに加えて、生まれたばかりの子供が足元に転がっている。
その生き物と目が合った。いつの間にか、真っ赤に光る眼が狼のことをじっと見つめている。
一歩、その生き物が狼に向かって踏み出した。
狼は牙を剥き出しにして威嚇した。
しかし、そんな威嚇など気にもとめず、一歩、また一歩と近寄ってくる。いくら唸っても止まらない。その生き物が近づくほど、恐怖と嫌悪感が強くなっていく。
1m程の距離まで近寄ってきたその生き物は、狼に向かって手を伸ばした。
そこで狼の意識は途切れた。
目の前に倒れた狼を一瞥した後、その生き物は、空を見上げた。
雲の隙間から姿を現した満月が、青白い光を放っている。あまりの綺麗さに目を奪われてしまった。
その生き物は、月に向かって4本の腕を伸ばした。しかし、いくら手を伸ばしても次には届かない。やがて月は雲に隠れてしまった。
月が隠れてしまったことに、その生き物は肩を落とした。
そして、空を見上げて、また月が姿を表すのを待つのだった。
この日この山に、1匹の化物が誕生した。
人間出るのもう少し後です。次回はこの話で化物が生まれてから数年経った後の話です
数字の表記が統一されてないのは勘弁してください。そのうち修正します。




