プロローグ
新シリーズですっっ!!!
続くかどうかは…モチベーション次第…ですね笑
「ねぇ、知ってる?この国に、双子のお姫様が産まれたんだって!」
「双子…ってことは9番目と、10番目のお姫様か。…はぁ。帝国の未来のためとはいえ、なんだか複雑な気分ね…。」
「帝国の未来?何の話?」
「あら?あなたは知らないの?この国に伝わる、9番目のお姫様のお話…。」
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今から5000年前。この国──アイダン帝国は1人の皇帝と皇后を持って、建国された。当時、このアイダン帝国の誕生は、多くの人々に祝福され、それはもう盛大に建国式が開かれた。
そんな華々しい建国式の真っ最中、突如神より神託が下った。
〈この国に誕生するであろう皇女達。その内の10番目の皇女は、この国を豊かに発展させる力を持つ。帝国を向上させる為には、必要不可欠な存在となるだろう。〉
それは、10番目の皇女に対する神託だった。それを聞いた人々は、大いに喜んだ。帝国の未来を確実なものとする言葉。誰もが安心したことであろう。しかし、その後続けて下った神託に喜んでいた誰もが、黙ってしまうこととなった。
〈 だが、そんな力には勿論代償が伴う。10番目の皇女が力を持つ代わりに、9番目の皇女は成人後5年以内に必ず死ぬ。死因は様々だが、それが皇女の定められた運命となる。 〉
要するに、10番目のお姫様のために、9番目のお姫様が犠牲となると言うことだ。
そんな信託が下されたものだから、建国祭の終盤は、終始暗い雰囲気となり、幕を閉じた。
それから10年ほど経ち、9番目のお姫様が生まれた。そして、その3ヶ月後に、別の皇妃によって10番目のお姫様が生まれた。皇帝は2人に事情を何も知らせず、ただただ愛情を注いだ。何も知らせずに2人を守れば、神託を回避できるのではと考えたからだった。
しかし、その17年後。成人から2年経った9番目のお姫様は、不治の病で息を引き取った。それからというもの、10番目のお姫様は力を蓄え、帝国を発展させていった。
そして、5000年もの間、9番目のお姫様は誰にも助けられることも無く、20歳になるまでに、皆、死んでいった。神託は、全て、現実と化した。
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55代目の皇帝、イガレス・サレート・アイダンは書斎にて、書類の整理をしていた。彼は冷徹皇帝として名高く、12番目の王子として生誕しながら、皇帝の座に上り詰めた強者だった。だが、そんな彼の頭の中に浮かんでいたのは、彼のイメージからは想像も出来ない事であった。
(先代の10番目の姫である彼女が身ごもっているのは、双子だ。つまり、この出産が成功すれば…ついに、9番目と10番目の娘が生まれる。覚悟はしていたが…。死ぬとわかっている子を持つとは、何とも辛いものがあるな)
彼の性格は、冷血冷酷だと思われがちだが…それは彼が取り繕っているだけで、実際のところは違う。本来の彼は、温和で優しい人柄であり、人を思いやれるおだやかな人物であった。兄弟や両親を殺し、皇帝になったのも、全て腐った国にさせない為。自己中な考えしか持たない彼らに、この国を任せてはダメだと判断したからだった。
そんな彼にとって、国のためとはいえ死ぬ運命の子供を育てるのは、とても辛いことだった。
「産まれないことを願うのは、おかしいのだろうか…」
皇帝として、願ってはいけないことを思う自分に、思わず乾いた笑いが漏れる。ただ、10番目の皇女を求めるため、9番目の皇女も産まなければならないのはどうしても納得できなかった。例え、そうするしか、なかったとしても。
しかし、そんな思いも虚しく、その日の夜に、2人の皇女が生まれたという報せが、彼の耳に届くのだった。
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報せを聞いた俺は、即座にその場へ転移をした。そこに居たのは、俺の后であるイリア・カイデル・アイダンと、生まれたばかりの2人の赤子。
双子と聞くからそっくりな顔をしているのかと思っていたが、2人の顔は全くと言っていいほど似ていなかった。
不思議だなと思いつつ、俺がまじまじと2人の顔を見つめていると、急に片方の娘の目が開いた。そして、
「あ、あば。あぅ。あばぁ!」
と喋りだした。そして、俺の方に手を伸ばしてくると、キュッと俺の服の袖を掴んだ。その力はすぐにでも離せるくらいに弱いものだったが、
「キャハハッ!」
顔をくしゃっとさせて笑うその子に、俺はなんだか引き寄せられる力を感じた。吸い込まれそうになる、ガラス玉のような綺麗な瞳。先程までは、産まれて欲しくないと願っていたのに。この気持ちは、一体どう言った感情なのか。
「な、なんてことだ…」
「もう目が見えているのか!?まだ生まれてから30分もたっていないのだぞ!?それに、人を見分けられるなど…。どういうことだ。こんな事は初めてだ!」
「なんと可愛らしいお顔なんでしょう。流石我が君のお嬢様ですわ!」
周りの使用人達がザワついている。いつもは、出産後など立ち会っていなかったから、普通の赤子がどのレベルなのか分からないが、この子はそんなに天才なのだろうか。
「この子は9番目と10番目のどちらだ?」
俺が尋ねると、出産を見ていた女医が気まずそうに言った。
「そちらは…9番目のお姫様で、ございます。イガレス様。」
「そうか…。この子が。」
じゃあ、この子が、死んでしまうのか?こんなにも、魅力を秘めた、この子が。あと、20年以内に。
目前にその事実があっても、到底信じたくはなかった。
「ま、まぁ、それはもうしょうがないですよ。そういう運命なんですから。それよりも、早く名前を決めましょう。皆さん、何か意見はありますか?」
特に何も思っていないかのように、皇后がそう言うと、使用人達は真剣に悩み出した。様々な意見が上がっていく。そんな中で、俺は、今も当たりをキョロキョロと見回している、不思議な娘に手を伸ばして、抱っこしてみた。
小さな手が、クリっとした目が、可愛く笑ったその口が、俺の視界を釘付けにする。
「…リリス」
「え?」
この子の目を見ていて、ふと浮かんだ名前。
「リリス・カーモイル・アイダン。それが、この子の名前だ。もう1人の方は、お前達の案から決めるといい。」
そう言うと、俺は抱いていた娘を元の位置に戻し、先程までいた書斎へと転移した。
9番目の娘の名前なんか、決める気じゃなかった。自分で決めてしまったら、愛着が湧いてしまうから。でも…この子だけは、どうしても。自分で、大切に育てたいと。そう思った。
「いい、名前ですね」
同じく転移してきた執事のローダンが、そう話しかけてくる。
「別に、ただ思いついた名前を言ったまでだ。」
「ですが、貴方様が子供に名前をつけたのは、初めてでしょう?どれもこれも、いつか帝位争いで死んでしまうかもしれない子供に、情を抱かないために。」
「…まぁ、そう、だな。」
今までも、何かと理由をつけては、名付けを断っていた。だが、今回だけは。他の子供たちと比べて、1番この手から離れていってしまう可能性の高い彼女だけは。なぜだか近くに置いておきたくなった。
「神託とはいえ、ずっと続いてきたとはいえ。これからも続くとは限りません。貴方様が守りたいと、近くにいて欲しいと思ったのであれば、希望を持ってみるのもいいのではないでしょうか。」
9番目の皇女としての運命を背負って生まれてきた俺の娘。確率が1%もないとしても、…生きていて欲しいと、思ってしまった。
「あの子のために、最善を尽くす。それが、俺が9番目の皇女に出来る、俺の娘にできる、最大限の行動だ。」
「…えぇ。そうですね。」
そう言うと、ローダンは「お食事をお持ちします。」と言って、部屋から出ていった。
1人、静かになった書斎で、俺は先程見た吸い込まれるかのような瞳を、思い出していた。
あの、不思議な、9番目のお姫様のことを。
初めてのハイファンタジーでした。
(未だ2作品めですけど笑)
どうでしたでしょうか?
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別作品、「カウントダウン〜死ぬまでの時間がわかった時、あなたは何をしますか?〜」の方も是非見てみてくださいね!
お読みくださりありがとうございました(o^∀^o)