第三話 魔術師?
「あの、魔術師とは一体・・・?」
そんな困惑した反応が始眼が自己紹介した後に返ってくる。
「そうゆう反応になるわよね。まぁ、普通に過ごしてれば関わるはずがない存在だから困惑するのも当たり前ね」
まだよく分かってない隊員たちに向き直る。
「まず魔術師は私達女性が持つ能力とは異なる力を使って戦う存在のこと。その私たちとは異なる力が魔術なのよ。そして、魔術師のほとんどが魔術師教会「SERA」に入っているわ。そのSERAから派遣された魔術師が彼なのよ」
立火が隊員たちに向けて説明し始眼める。
「魔術師は裏社会の人間。私たちValettaが<表>を担当するのに対して彼らは<裏>を担当してる」
そこで一人の隊員から立火に質問がくる。
「あの、<裏>というのはなんですか?」
六火がその質問に答えようとして、ふと自身の腕時計を見る。
「おっと、ごめんさいね。私はこれから会議があるから帰らなきゃいけないの。魔術師については始眼がもっと詳しく説明してくれるはずだから。それじゃあ、あとは頼んだよー」
そう言うと六火は始眼に後のことを任せて寮を出て行った。
始眼はその様子を見送った後、目の前の隊員たちに向き直り説明を始眼める。
「それじゃあ、さっきの質問も含めて魔術師についてもう少し詳しい説明するよ」
始眼は魔術師について六火よりももう少し詳しく説明する。
「魔術師はValettaと同じく人を救ったりする仕事だよ。でも、魔術師はValettaの様に表立って活動はしない。どちらかというと、マフィヤやヤクザみたいな裏の仕事だよ。そして、さっきから出ている<裏>というのは<裏社会>を意味する言葉だよ」
それを聞いて女性隊員の一人から質問がくる。
「具体的にはどういったものがあるんですか?」
始眼は少し悩んだあと、
「まぁ一言で言うなら<裏の管理>かな。麻薬や違法なものの取り締まり。あとはちょっとしたいざこざの解決とかかな」
と笑顔のまま答えた。
先ほど質問した隊員が再度質問をする。
「そういった荒事は私たちValettaが担当することが多いはずです。どうしてわざわざあなた方がその<裏>を管理しているんですか?」
その質問を待ってましたと言わんばかりに始眼は説明をする。
「まず、俺たち魔術師が戦う相手は魔獣と呼ばれる存在だよ。生き物にはみんな生まれた時から必ず<魔力>っていうのを持つ。その魔力が暴走して突然変異してしまった動物が魔獣だよ。そして、その魔獣と昔から戦ってるのが俺たち魔術師」
一人の隊員が口を開く。
「そんな存在がいるなら〜、なおさら私たちが担当してもおかしくないはずですよね〜」
「そこに関してはこれから説明するから安心しなよ」
始眼はひとつ咳払いをする。
「魔術師が戦うのは魔獣だけじゃない。人間とも戦うんだ」
「人間とも?」
隊員の顔が曇り始眼める。
「そうだよ。そして、ここからが君達が<裏>を担当していない理由だ。魔術師はマフィアやヤクザといったものの監視と抗争の仲介役を担っている。それと同時に魔術を悪用する存在の確保も仕事のうちなんだ。ただ、まぁ分かると思うけど<裏>の犯罪者は普通じゃない。危険すぎる奴しかいない。なら、どうなるのか?」
冷たい空気が漂い、周囲を包み込む。
「確保ではなく<処分>と言う形になる。ようは殺すんだよ。人をね」
始眼は笑みを浮かべたまま淡々と言う。
「Valettaは表舞台の存在。出来るだけ綺麗でなくちゃいけない。そんなValettaが人殺しをやってるなんて話を聞いたらかなり面倒なことになるでしょ?そこで俺たち魔術師が代わりに汚れ仕事を請け負ってるわけなんだよ」
隊員たちは理解するのと同時に空気が重くなる。
だが、そんな空気を壊すかのように手を叩く。
「空気が重くなってるとこ悪いけど、人を殺すといってもそんなに頻繁じゃないからね。ほとんどは魔獣の討伐がメインだからそこまで空気をジメジメしないでもらえると助かるな。じゃないとそろそろおっきなキノコが生えてきそうだよ」
始眼はそんな冗談を言うと説明の締めに入る。
「まぁそんな感じで魔術師の説明は終わるよ。何で派遣されてきたのかはまだ事情があって話せないけどそのうち知ることになると思うよ。そう言うわけで、これから居候させてもらうよ。Valetta第七師団の皆さん方」
そう言って始眼は説明を終えた。
「それでは今度は私達の自己紹介をしようと思い・・・」
今度はValettaの女性隊員達が自己紹介しようとしたところで始眼がさえぎった。
「自己紹介はしなくていいよ。みんなのことはある程度は六火さんから聞いてるから。俺のことに関しては過ごしていくうちに分かってくると思うからそこのところはよろしく」
Valetta第七師団の自己紹介を始眼は断ったが一応頭の中で全員の情報を復習することにした。