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もしも、願うことが許されるなら
愛していると、嘯く資格は失った。
幸せだと、謳う権利は自分で捨てた。
それでも、もし。
願うことが許されるなら————、
「ファーストキスがこんなのじゃ、一生超えられそうにないや」
唇を離して微笑う少女に、なんと答えれば良かっただろう。
自分の感情一つ、まともに掬い上げられない頭で考えたって無駄だから、言葉にはしない。
ただ、ありったけの力で抱き締めた。
抱える腕に込めるのは祈りだけ。
もし、もしも。
許されるなら————君に幸あれ、ただそれだけを。
その日、夕暮れが染める海に、
初恋が一つ。
波に攫われて、溶けた。