ティータイムにご用心!4
「そうでした、つみれ様、そういえば召喚の儀式から私ったらひっきりなしにつみれ様を振り回しては自分ばかりが喋ってばかりで……大変お見苦しい真似をいたしました、次期国王失格ですわ」
ルナフィオラは不安そうな顔をする。スリアミドラも、「お姉さまのせいではありませんわ、わたしが興奮しきってすぐつみれ様とお姉さまを引き合わせたがったのがいけないんです、ごめんなさい!」と慌てて謝る。二人の王女に急にそんな態度を取らせるわけにはいかないと、つみれも立ち上がって「そんなことないです」と弁護しようとした。が、そういえばまだ自分の体はパンツにまだ厚手のマントにくるまれているだけということをはっと思い出し、勢いよく立ち上がったのと同じスピードで座りこんだ。
「ウオーやっばいくら厚手の生地だからってやばいでしょ忘れてたっ!」
「つみれ様、あちらにお部屋をご用意してあります、着るものも用意させていただきましたゆえ、よろしければ……」
メイドがさっと後ろから、盛大にはだけかけたマントを素早くかけなおし、声をかける。
「はっはいはいいますぐにっ行きます行きますっ、私の体なんて目の毒ですからっすいませんすいませんっ!!!」
つみれとメイドが慌てた様子を見てルナフィオラは、ぱちぱちと瞬きをすると、微笑んで言った。
「……私、なぜスリアミドラがこんなにつみれ様のことを敬愛しているのかわかりましたわ。きっと、この飾り気のない人となり、気取ったところのないやさしさに惹かれたのですわね。」
「お姉さまも、おわかりになられましたか?つみれ様は、わたしたちにはないものがあるんです、どことなく大胆というか物怖じするようでしない強さというか……。
だいたい、わたしの話をまったく疑わずに、ここまで来てくれるなんてこと自体思いもしませんでした。わたし、お姉さまの召喚魔法が、つみれ様を選んでくれてほんとに良かったと思います。」
「これは、神様がお選びになったことです。感謝しましょう。」
メイドに案内されながら応接間を去ろうとするつみれの後ろ姿を、ルナフィオラとスリアミドラは美しい彫刻を賛美するかのような眼差しで見つめながら言葉を交わした。
テラスから見る太陽は傾き始めていた。夕方の始まりを感じさせる暖かな光線は、ここでずいぶんながいこと話し込んでいたのだと改めて感じさせた。
ルナフィオラは、遠のくつみれの背中に「晩餐の際にまたお声掛けいたします、つみれ様」と声を投げかけたが、その夜つみれが晩餐の席に現れることはなかった。ようやくたどり着くとまもなく、贅を凝らした客用の寝室を楽しむ暇もなく寝台にあがると数秒でぐっすり眠り果てていたのだった。