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すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
異世界召喚されちゃう第一章
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ティータイムにご用心!3

そう問われて、つみれは考え込んだ。

たしかに、ルナフィオラが言ったことは筋が通っていると思う。自分は一応、まあ飲食でそれなりに働いているだけ、料理が少しはできる。それは確かだ。

それに、スリアミドラがどうしてうちの浴室から飛び出してきたのか、どうしてあんなについて来てほしいと頼み込んできたのか。正直、なんで自分でなきゃいけないのかは今も半信半疑だけれど、どうせ自分は大した人生を謳歌していたわけでもない。なんといっても、仕事だってバイト歴が長いだけで別に安定してるわけではないし、適当に話すくらいはできるけど飛び抜けて仲いいバイト仲間がいるわけでもないし、そもそもバイト仲間たちとは年が離れてるし、恋人がいないのは自分だけだから話についてけないこと多いし、家だって別にコンビニとアニメショップが近いってだけで適当に決めた安アパートだし、恋人はいないし、ていうかそもそも彼氏がいたことないし。

……こう思い返してみると、自分の人生って結構、さみしい。

どうせ適当に流されてるだけの生き方をしてるんなら、こうやって必要とされるっていうのも、悪くないかもしれない。それに、コスプレみたいなカッコのお姫様と色々な国をまわってみるだけでいいって、結構楽しそうだ。なにかまだ知らない新しい料理のレシピとか、見つけられるかもしれないし。

「一応確認ですけど、それって危なかったりとか、責任が発生する、とか難しいことはないんですよね?こう、この国の政治的なナントカ〜みたいな、そういうややこしいのはちょっと」

「もちろんです。つみれ様がもしお力になってくださるのなら、スリアミドラとともにこの国の大使として私からの直々の通行証をお渡しいたしますから、それが身元の証明になります。それに、基本的に危険な国というのはこの世界にはもうございません。世界大戦はどこもずいぶん昔に終結していますし、万が一仮になにかあったとしても、スリアミドラも魔法が少しは使えますから、身の安全は保証できます。」

つみれは強くうなずくルナフィオラの顔を見つめた。嘘のないまっすぐな眼差し。開国への強い意志と、スリアミドラと自分への信頼と期待で満ちている。

つみれは、呼吸を整えると、「ほんとに自分でいいなら、はい、やってみます。」と、少し自信なげに答えた。

「つまり、単純に、この子、あ、妹さんのお料理研修旅行のお手伝いをすればいい

ってですよね。(やっば名前難しすぎて忘れちゃった)」

スリアミドラをちらっと見ながらつみれはルナフィオラに尋ねる。

「そのとおりです!すみません、私、いつも説明がながくて、でも、つみれ様のおっしゃるとおり、要は、キャロトリアの外にはどんな国があって、どんなものを食べているか。それがわかれば十分なんです。あとは、持ち帰っていただいた情報をもとに、こちらで古代の文献と照合して、料理というものの文化を復興できれば良いのですから。

もちろん、全てにかかるお金は事前に十分にご用意させていただきます。」

ルナフィオラ、スリアミドラ、それから直接的ではないもののメイドの視線、三人の熱意、嘆願、思いが自分に注がれているのを感じた。こんなに人に必要とされたのは、人生で正直はじめてだ。

「……わかりました、やります!」

つみれは、一気に答えを吐ききった。

そもそも、頼まれたら断られないタイプなのだ。 答えは最初から決まっていた。

二人の王女は、あからさまに喜びを顔にだした。重い肩の荷が降りたらしい溶けるような笑顔を見せるルナフィオラと、初の王女らしい任務が始まることへの興奮を隠せないスリアミドラは、お互いに抱きしめ合って幸せそうに目を閉じる。政治的な背景がないつみれにはわからないが、二人にとってはこのことはとんでもなく重く待ち遠しい夢の一歩だったのだろう。

スリアミドラはつみれにも飛びつき、「ありがとうございます、わたしの聖者さま!」と叫んだ。それを見て感極まったのだろうルナフィオラも思わず席を立ち、その輪に加わると控えめながら感謝を込めてつみれの頬に軽いキスをした。思いがけず鼻をかすめるルナフィオラの甘く上品な香りにつみれはうっとりとする。

(えすごいおしとやかな女の子って感じの匂い……)

ちょっと危なげな表情を浮かべる自分にメイドからの厳しい視線が注がれるのを感じ、つみれははっと姿勢を正した。

(やば女の子に興味ある人と思われちゃってないよね…!?いや、なくはないけど、こんな美少女たちにちやほやされて興味ないほうがおかしいけど、けどあのそういう意味で誤解されたくないっていうかいやでもっていうか)

「召喚の儀式からお時間が経っております。姫君方、お客人は随分とお疲れのようにお見受けいたします、あまりお苦しめになられませんよう」

コホン、と軽い咳をしてメイドが提案した。はしゃいでいた二人ははっと動きを止める。

「ごっごめんなさい、私達、つい楽しんでしまって、はしたありませんでしたわ。そろそろつみれ様をお部屋に案内して差し上げましょう、確かにお疲れのご様子ですわ。」

単純に二人の美少女に揉まれるという日頃縁のない出来事に精神が高揚しているだけのつみれだったが、確かに、このままでは身が持たない。バイトから帰ってきてから、いろいろなことがありすぎた。


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