シュガーリリーにご用心!5
太陽の光の中で全てが白く霞みがかった美しい午後の庭を訪れたその村人は、リーニャの父親からワインの入った杯を受け取りながら、
「おや、あんた達もしかしてあれかい、シラノの旦那が言ってた旅人さんたちかい」と、スリアミドラとアルトのすぐに気がついてそう言った。
「外国のとんでもないべっぴんさん達が同行してるって旦那が言ってたが、どうだいどこの聖母様達かと思う美しさじゃあないかい!」
「まあまあうちの子の大事なお客さん達なんだからあまり失礼なこと言わないでくださいよ。それでシラノ様はどうだったの?」
やんわりと釘を差しながらラナが訊ねる。どうやら彼はシラノとこの島の砂糖生産組合の商談の様子を、今回用があって参加していなかったリーニャの父親に報告に来たようだ。村人は渋い顔をしてみせると片手をひらひらと振った。
「それがなあだめだめ、砂糖の値段のことで爺様が首を縦に振らないんだよ」
「今年は春に長雨が続いたからなあ、価格交渉も難しかっただろうなあ」
顎を撫でながらリーニャの父親が言う。村人は頷いた。
「そうそう、あのせいでサトウキビの収穫量がだいぶ落ちたもんだから、今年はいつもの五割増しの値段で買ってもらわないとって爺様が言ったんだよ。」
「なに、五割!?おいおいそりゃあ幾ら何でも価格を上げすぎだろう、いくらなんでも長年の付き合いってもんがある。」
「そうだろう!?他の連中も、爺様以外はみーんなお前さんと同じ意見さ。今回は天気のことだから誰の責任でもないし、シラノ様はいつも相場より高めに買ってくださってるだろ?だからそこまで上げなくてもいいじゃないかってみんな言ってるんだが、まあ爺様が総代をやってる以上は誰も決定権はないからなあ」
「それでシラノ様はなんで答えてたんだ?」
リーニャの父親は話の続きを催促した。
「『三割までなら考えられます』て言ってすぐ、爺様から『なら今年は売れませんな。』だとよ。
でもそこがシラノ様のえらいとこでさ、何も文句は言わずに『少し考えさせてください』だけ言って戻られたよ。」
「はあー爺様は堅物だからなあ。いい加減シラノ様とも良い付き合いなんだし、持ちつ持たれつでこんなときぐらい安くしてやるか、それかあれを売ってやってもいいだろうになあ。なんにしろ、もし値段の折り合いがつかずに今年はシラノ様が買わないなんてことになったら、みんな利益ゼロじゃあないか。」
リーニャの父も相槌を打つ。どうやらシラノは誠実な商人としてセイラゴンの住人達から慕われているようだ。
村人は「ほんとになあ、爺さんは頭かったいからなあ!あの年でああ頑固になっちゃおしまいだね俺はなりたくねえもんだよ。早く代替わりしてほしいもんさな!」と言うとワインを飲み干し、つみれが追加で作って持ってきた、イカとバジルの天ぷらに手を出すと舌鼓を打った。
「ん、なんだいこりゃやたら美味いじゃあないかい、これあんたが作ったのかい?!いやあーたまげたね、こんな美味い食べ物ささっと作れるなんて、相当洒落た店で腕利き料理人してたんじゃないかい?なんでこんな外れの小島なんかにきたんだい?」
見たことのない料理に興味津々といった顔で村人はあれこれ手を伸ばしては喜んだ。つみれからしたら、なんということのない居酒屋式小料理ばかりで大したことはない。
「い、いやーそんな腕利きなんて〜よくある駅裏の店でしてグヒヒ……」
照れ半分恥ずかしさ半分に答えるつみれに村人は太鼓判を押す。
「いやいやあ、あんたさては正体隠してるね、どこぞの宮廷料理人かなんかだろう!?あー、道理でこんな辺鄙なとこまで来たわけだ、ピンと来たよおれには……あんた達も砂糖を買いに来たんだろう?」
村人はそう言って自信満々に片目をつぶっておれは物分かりのいい男さ、と言わんばかりの顔をした。が、悲しいかな次のスリアミドラの言葉にずっこけた。
「あの、すみません、お話のお邪魔して……砂糖?とはなんですか?」
その場の全員の視線がスリアミドラの顔に集まった。いや、アルトは別だ。少し恥ずかしそうに俯いている。
セイラゴン風イカの天ぷら
1. イカは下処理(皮とワタを取る)し、食べやすい大きさに切り分け、白ワインに10分程度付けてから水分を拭き取り、小麦粉を軽くまぶしておく。
2.レモンのコンフィ(=レモンの塩漬け)を細かい千切りにする。
3. 天ぷらの衣を作る。ボウルに中力粉(薄力粉でも良い)、卵白、冷水を入れ軽く混ぜる。
4.1と2とバジルの葉を3のボウルに入れ、小さなかたまり程度にまとめる。
(スプーンを二本使うとやりやすい)
5.180℃に熱した油のなかに素早く滑り込ませ、揚げ上がった後はキッチンペーパーなどの上で油を切る。
完成!付け合わせにグリーンピースのペーストなどを添えると季節感も出て美しい。




