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すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
異世界召喚されちゃう第一章
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ティータイムにご用心!2

合点が行くと、つみれは急に楽しくなってきた。さっきからずっと見慣れない世界にひとり落とされて、次々と先行きが見えない心配な気持ちしかなかったところに、急に聞き慣れたニンジンのことがでてきて気持ちが和らいだのが自分でもわかった。

「じゃ、てっとり早く言うと、ここはニンジン大好きうさちゃん王国ってわけなんですね」

全員の頭にぴよんと伸びるウサ耳が急に面白くなってきたつみれは冗談半分に訊ねる。しかしルナフィオラは静かに「はい、」と答えた。なんとなく流されてここにいるだけのつみれに対して、次期国王として国の歴史を語るルナフィオラの口調はいたってまじめだった。

「さきほど申しましたとおり、薬草キャロトがなくては私達の生活は成り立ちません。そこでこれまではこの至宝を秘匿すべく、私達は鎖国として、われわれだけで過ごしていたのですが、次期国王として私に求められていることは、もうそれだけではないはずなのです。

世界大戦の終戦以来、どの国も経済交流、文化交流が少しづつはじまっています。でも私達キャロトリアは山間に隠れた王国であるということもあり、長い歴史のなかで、他の国々から忘れられつつあります。」

言いながらルナフィオラは嘆息する。

「このままでは、この国の民は、みな外界を恐れたまま世界の潮流から取り残されてしまう。私はそれを変えたいのです。もっと、この世を知り、他国の人々にキャロトリアという国に来ていただき、大昔、戦前のように自由に人が行き交う世にしたい。今のままでは、キャロトリアだけが戦争を続けているのと変わりがないのです。

私が即位するまであと二年あるとはいえ、すでに私はいま修行期間として父とともにここを治めており、国を出るわけには参りません。そこで、即位の時が来るまでに、私の代わりに外の世界を実際に見てくる者として、私の最愛の妹、スリアミドラが名乗り出てくれたのです。」

……目の前のルナフィオラは、実際のところきっと自分とそう歳も違わないはずだろう。なのに、なんてしっかりした意見を持っているのだろう。つみれは、控えめで慎ましいルナフィオラの優しい顔から発せられる強い意志に感嘆した。

スリアミドラも同じ気持ちなのだろう、また感極まったような表情を浮かべて姉の顔を見つめている。

でも、なぜこの、率直に言って、まずいお茶の最中に急にそんなことを述べ始めたのだろう?彼女がかしこいからこそ、こんな会ったばかりの怪しい相手なんかにいきなり話すべきことだろうか?

ティーカップに目を落としたつみれの疑問を見透かしたように、ルナフィオラはまた語り始めた。

「つみれ様がお考えのこと、わかる気がします。当ててもよろしいですか?このお茶の味の話をしていたはずでは、ということですよね。」

「あ、あ、あははー……」

言い当てられた恥ずかしさからつみれは頭をかく。まじめな話の最中にそればかり気にしている、と思われたような気がして気まずい。

「実は、あれは、この国での伝統的問題といいますか……その……私どもキャロトリアの民は、誰一人として、料理という物を知らないのです。」

恥ずかしそうな顔をしたのは、今度はつみれではなくルナフィオラだった。

「は、?」つみれはよく意味がわからず聞き返す。助け舟を得るべく周りを見ても、スリアミドラもあのメイドも、少し顔を赤らめて下を向いていて何も窺えそうにない。

少しの沈黙のあと、 スリアミドラが恥ずかしそうに手を上げた。

「あの、そう、なんです、実は、このお茶もお菓子、わたしが初めて、想像で作ったっていうか……っ!」

ますます意味がわからない。想像で作るということは、レシピがないという意味だろうか?それなら、わかる。つみれだってこれでも飲食店勤務なだけあっていくつか自分で考えたレシピもあるが、それはある程度経験がある者がやることで、初めてという言葉が並列される意味がわからない。

眉根を寄せはじめたつみれにうまく伝えようと、スリアミドラが続けた。

「と、図書館で見つけたんです、この城の、王家の者だけが入れる図書館があって、そこの何百年も昔の書物に、この、お茶に添えるお菓子というものの作りかたが載っていたのです、それで、だいたいこんな作り方かなと思ってやってみたのですがっ」

理解ができない。つまり、初めて作ってみたということだろうか?

スリアミドラに変わって、ルナフィオラが説明する。

「実は、この国は、薬を作ることに関しては十分発展しているいるのですが、いわゆる料理を作る文化というのが最低限しかないのです。

たとえば、草を煮るとか、きのこを焼くとかいうことは今も知識としては知っているのですが、他国のように何となにを混ぜるとおいしいとか、どの肉とどの草を合わせて煮込むべきとか、そういう高度なものは戦争によって失われてしまった文化というか……、どうやら昔は他国との交流で料理の文化というものもあったようなのですが、戦争で失われてしまったというか、料理を知らない者が料理をさらに知らない世代を育て、そうやって時を経るうちにいつからか薬作りだけに特化した国になってしまって……

これこそ、私が心配しておりますこの国最大の問題なのです……。他国はどこも特色ある料理を持ち、豊かな文化を形成していると聞きます。

対して、キャロトリアは、薬学をはじめ魔法、芸術、と各分野はそれなりに優れていると自負しているのですが、衣食住、という言葉があるように、果たして料理の無い国に、他国の人たちが訪れたいと思ってくれるか、国交を結ぶのに相応しい一流国だとみなしてくれるかどうか……

『料理の不在』は、私の理想とする開かれた国づくりに最大の暗雲をなげかけているのです。」

いやいや最大の暗雲って、そこまで、とつみれは言いたくなったが、真剣なルナフィオラにはそんな雰囲気はない。

「そんなとき、私の即位予定が決まったある夜、キャロトリアの女神様からの宣託の夢を見たのです。

次の満月の夜に、愛する者を生贄に、礼拝堂の貧者の泉で召喚の儀式をし、その時もしも私に十分な力があれば、生贄となった者は無事帰ることができ、そして運命の救い主がともに現れこの国の平和の発展を助けていただけると……

私には、すぐに理解しました。それでスリアミドラを異世界に送ったのです。そして、幸いなことに、召喚は成功し、つみれ様、あなたが来てくれたのです。つみれ様、きっと、あなたがスリアミドラとともに、キャロトリアに料理をもたらしてくださる方。私は確信しております。

……いかがでしょうか?」

そこまで語り終えると、ルナフィオラはつみれの目を改めて覗き込んだ。

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