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すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
三国目 南国の島国セイラゴン
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シュガーリリーにご用心!4

だめだ、だめだ。手が止まらない!

ラナから調理用ナイフを渡された瞬間から、つみれはまさに料理「熱」とでもいうべきものに取り憑かれたかのように動き出した。

南国の恵まれた気候のおかげで豊富な食材の数々がつみれを刺激する。この世界に来て初めてみる、久しぶりの海の幸、米、唐辛子、その上野菜もフルーツも、大カゴにたっぷり盛られているのはどれも近所づきあいでもらったもので余って困ってるくらいだから自由に使って、と言われて、つみれは次々に創作欲がほとばしり出た。

「じゃ、つみれさん、にんじんの皮むいてくれる?」「はい!」シュルルルルルルル!!!!

「これは薄切りで、できるかぎりの薄さで構わないから」「はい!」タタタタタタタタ!!!!

「つみれさん、速いわねーっ!もしかしてお魚も触れるのかしら?お願いしても大丈夫?」「はい!鱗落として三枚下ろしでいいですか?こっちは皮剥いどきます?」シャシャシャシャシャシャ!!!!

「って、つみれさん、私より全然お料理上手じゃない、びっくりしちゃった!」

つみれの素早く的確な包丁さばきを見たラナと、バイト先では店長からいつも「白井さーんもっと早くできない?!」と言われまくって鍛えられていたつみれはお互いに驚きあった。

つみれは「ゥェッヘヘ……」と照れ隠しに笑いながら、「まあ、本業なんで」と言い、流石に「異世界では居酒屋勤務してましたー」とまでは言わずとも、リシアでは馬車で屋台を出していたことなんかを話した。

「まあ、食材の都合で簡単なものしか売ってないから、まだまだこれからなんですけどね」

そうつみれが会話を締めくくった頃にはすべてのメニューができあがっていた。

匂いにつられたのかそれともちょうど良い頃合いを本能で察したのか、リーニャに引き連れられていった一行も戻ってきた。

「わーっなにこれママ何作ったの?なんか嗅いだことない匂いする!」

「あらリーニャちょうどいい時に帰ってきたわね!パパとおばあを呼んできてね、お昼にしましょ」

スリアミドラはスリアミドラで、葡萄棚の木陰に置かれたテーブルが綺麗に食卓として整えられるのを見て、両手を組んで目をキラキラさせている。

「ええーっリーニャちゃんのお家の皆様はここで午餐を頂いておられるのですかっ?素敵ですっ!!!まさに絵画『海辺の午後』のようですっ!!!」

「絵画のことはよく知らないけど……そうね、夏場なんか天気のいい日はここでほとんどいつも午後を過ごすのよ。セイラゴンの午後の日差しはきついから。」

いかにも田舎の農家の風情がある、どっしりとした木を削って作った素朴なテーブルや椅子は、色合いからいっても何世代にも渡って使われてきたのだろう、円熟した色味がある。その上に皿や水差しを並べながらラナは柔らかい表情で答えた。

「はい葡萄棚が天然のパラソルになってて素晴らしいですっ!セイラゴンの皆さんは素敵な暮らし方を知っているんですね!」

ゆっくりと全員が食卓に集まり始め、庭はにわかに活気づいた。

恰幅の良いリーニャの父親が目を細めて手をこすり合わせながら「やあやあとんだご馳走ぞろいじゃあないかと」と言い、ワインの栓を抜いた。ポン、と爽快な音に合わせて楽しい昼食が始まる。もちろん全員の目は見たこともないつみれの作った料理に釘付けだった。

「えっと……まずこれ、小さめのイカがたくさんあったので中に唐辛子とオリーブの実と細かく切ったエビで詰め物をして蒸し煮にしたものです。それからこっちはお魚にラナさんの庭のハーブとパン粉を混ぜたものをふりかけてかまどで軽く焦がしたもの、それからこれは知らない貝なんですけど多分ムール貝みたいなもんかなと思って、むき身をかるく燻製してます。この野菜ソースをかけて食べるとピリ辛で美味しいかも。それから……」

次々と続くつみれの饒舌な説明とともに、全員がどれも次々に平らげていく。

「すっごい、おばあがこんなに食べてるのはじめて見たよ!!」

そうリーニャがはしゃぐのも当然なくらい、どの席の皿も次々と空になっていく。

「わたしゃあ長いこと生きてきたし、うちの嫁も随分料理上手だと思っていたけれど、やっぱり、異国の料理というのは洗練されてるねえ」

「あら、おばあさま、それはつみれ様が特別なだけですわ。でも、海のお魚がこんなに美味しいなんて私もはじめて知りました。キャロトリアには海がありませんから。」

「いやあ、わしも、まさかイカやエビをこんなにうまく料理できる国がセイラゴンの外にもあったなんて、知らなんだ!リシアの人間はこういうものは苦手だと有名なもんで、ほんとに驚きましたよ」

つみれは困ったような喜んでいるような顔で讃辞を慎ましく受け取った。普通に料理した、というよりも、他人んちの台所で好き勝手やらせてもらってありがたいくらいなのに、相次ぐ称賛にむしろ気が引けるくらいだ。

「さあ、こんなお御馳走の最後で申し訳ないんだけど、私の作ったものもお客さんに食べていただかなくてはね」

そう言って微笑みながら、ラナが大きな器に盛られたものを持ってきた。リーニャが椅子から飛び出すようにしながら「やった!」と歓声をあげる。

それは魚のアラで採った濃厚なスープと米、それにこの地域固有の海藻であるセイラゴン草から採ったエキスを大きなセイラゴン貝の貝殻に閉じ込めて炊き込んだご飯で、旨味が何重にもなった濃厚な料理だった。

「すごい、こんなの初めての味です!これは絶対日本でも売れるだろうなー、貝を開けて食べるっていう見た目のインパクトもあるし、何よりとってもおいしい」つみれはそうぶつぶつと言いながら一気に平らげる。スリアミドラやアルト、デルテアネもそのファンタジックな見た目に興味を惹かれたらしく楽しそうにしているのがラナを喜ばせた。

「嬉しいわ、この料理は最近じゃ作る人が少なくなってきてるんだけど、昔はお嫁入りする前には誰もが習ったものよ。」

そう言いながら優しい目でリーニャの父を見つめる。ワインで気持ちよくほろ酔いしている彼もにこにことして、「お前、どうだい、この作り方をお客さんに教えてさしあげたら?お客さんたち、外国で屋台をやってるそうじゃないか、これもメニューに加えたらどうだい」

「はいっよろこんで!」

こうして賑やかでのどかな昼の宴は無事過ぎて行った。普段は静かな家から楽しそうな声がするのに誘われて、通りすがりの村の人々入れ替わり立ち寄っては挨拶をしていっては、つみれの作った料理をつまみ舌鼓を打つ。その中にはちょうど、シラノと取引をしているさとうきび農家の者もいた。


文中でリーニャパパが、「セイラゴンの外の民はエビを食べない」という話をしてますが、これほんとかどうかわかんないんですけど、昔中世ヨーロッパのある地域の人は エビを食べ物ではなく肥料として扱っていたと聞いたので、、、笑!

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