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すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
異世界召喚されちゃう第一章
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ティータイムにご用心!1

「いつの間にここまできたんですか!?」

そう言いつつも、つみれはほっとしつつ二人のもとに近づく。スリアミドラは、

「お姉さまは、礼拝堂の玉座からなら、この城内であれば好きなところに移動できるのです!」と尊敬を込めて答えた。

「好きなところ、ではなくて、幾つかの主要なポイント、だけですわ」ルナフィオラはそう訂正しながらにこにこと微笑む。

「例えば、ここ、私達にとって、私用で大切なお客さまとお会いするのは必ずこの部屋なのです。それで、つみれ様もここにお招きしたのです。さあ、どうぞ、お座りください。」

そう言って、テラスに用意されたテーブルに着くように促した。後ろで例の案内してくれていた女が、つみれのために豪華な椅子を引く。きっと、彼女は国王直下のメイドかなにかなのだろう。「あ、ど、どうも……」とお礼を言っておずおずと腰掛けると、ルナフィオラが、「ご足労いただきありがとうございます。つみれさまには少しどのような城なのか知っていただきたくて、ここまで歩いていただきました。

もっと楽になさって、お茶と、なにか軽食をご用意しておりますから」と微笑みかけた。

こうみえてもつみれは、カフェ勤務を志望していただけのことはあって、紅茶やハーブティーには目がない。このような贅沢な空間で供されるお茶、とはどんなものだろう、と疲れた目をキラキラさせた。そういえば、確かに、ビールとおつまみチーズひときれ、あとなにかスッとする味のスリアミドラに飲まされた丸薬以来何も食べていない。緊張の連続で眠気は来ないものの、なにか暖かいものなんかをお腹に入れてリラックスしたかった。

そんなワクワクしたつみれの目の前に、さきほどのメイドが同じく美しいテーブルセットをセッティングし始めた。白く輝く器に注がれる、嗅いだことのない香りのお茶に、見たこともないボール状のお菓子かなにかがサーヴされ、期待が高まる。全員に行き渡ったところで、早速つみれは好奇心からお茶に口づけた。

……それは、なんともいえず、青臭かった。匂いの時点であまり良い予感がしたとは言えなかったが、口をつけた以上仕方なく飲み込む。

苦い。

苦い。

苦すぎる。

コーヒーやチョコレートのような心地よさのある苦味ではまったくない。生の雑草をそのまま粉にして飲まされているような気分だ。

口の中を早急に切り替えるべく、つみれは、ティーカップの隣に並べられていた焼き菓子のようなものを手にした。小さなマドレーヌに似ている。が、口にした途端、つみれは自分の歯が欠けるかと思った。

ガチガチに固まった、まるで焼き固められたセラミックのかたまりだ。

舌の上で濡らされて溶け出した表面が漏らしはじめる味は少し、なんというか……これは、生臭い。

「ブエッ」

思わず吐き気が襲いかかるのを、失礼かと思い懸命に止めようとする。が、その様子を見た二人の王女たちは、顔を見合わせたあと、つみれの反応はいかにも当然、といった顔で、ルナフィオラは両目を閉じ、スリアミドラは口をいの形に開けて気まずそうに肩をすくめた。

メイドだけが冷静に、水をグラスに注いで勧めてよこすのを、これ幸いとばかりにつみれは急いで受け取り飲み干した。

「っっぷハァ!!あーっ水おいしっ」

それから息を整えてテーブルを見渡し、

「あっ違うんです、こっ あのっほらここまで登ってくるまでに喉が乾いちゃってて、あはは、はっ、ウっ」

「いえ、お気遣いなさらなくて結構です……正直に申しまして、おいしくなかったのですよね」

食道からせり上がる苦味と臭みに対抗すべくなんとか取り繕おうとするつみれに、諦めに似た表情で手を胸の前で重ねながら、ルナフィオラが制した。

「大変申し訳ございません。実は……」

そこまで言ったルナフィオラの言葉を遮って、スリアミドラが言葉を飛び込ませた。

「ごめんなさい、それ、わたしが用意したんです!!!」

不等号記号を二つ並べたような目をして、スリアミドラが盛大な声を出す。 「わ、わ、わたし、お料理とかやったことなくて……でもどんなものなのか知りたくて……っ、それでっぜひ、わたしのお願いに答えてくれたつみれ様を、ぜひおもてなししたくて……っなのに、なのに……」

スリアミドラが一生懸命謝ろうとするのを見てつみれは慌てた。この風景はバイト先でクレームをつけられた時にひたすら謝る自分を彷彿とさせるので見たくなかった。

ルナフィオラが割って入る。

「つみれ様、不快なものをお口に入れさせてしまいましてすみません。でも……これが、この国の限界なのです」

少し言われたことの意味がわからず、つみれは「え?」とだけ答えた。説明するべくルナフィオラは言葉を続ける。

「すこし昔話になりますが……、遠い昔、何百年ものあいだ、世界のほとんどは領土争いの戦乱に揉まれていた時代にありました。

その中でキャロトリアは僻地の小国で後ろ盾もなく、かつ十分な武力を持たないことと、キャロトリアの製薬技術が他国に攻撃の理由を与えるには十分であること、などを憂慮した過去の王達は鎖国政策を採り、ここの国民は他国から隔絶された生活を送っていました。その間は平穏で問題もなく過ぎたのですが、それが終焉してから今、百年程度でしょうか。戦乱の世はとうに終結し、すべての国が国交をほぼ完全に取り戻しつつあるといわれていますが、今になってここ、キャロトリアだけがそうした世界の和平を求める流れに遅れをとっているのです。

現王、つまり私達の父の世代から開国に向け方法を探っていましたが、外界への恐れから民の世論も厳しく……そこで、二年後に控える私の戴冠式を機に、新国王初の仕事としてキャロトリアの開国を宣言したいと思っているのです。」

苦いお茶からの突然の難しい話に、つみれの頭は十分に回らない。しかし、真面目な性格なのだろう、ルナフィオラはそのまま話し続けた。

「我が国の特色は、薬作りに長けている点です。礼拝堂をお出になられてすぐ、目の前に花園があったのをご覧いただいたと思います。」

ああ、あの小さな白い花がたくさんあったところか。とつみれは思い返す。

「あ、はい、覚えてます、なんか小さいかすみそうみたいなのがいっぱいあって、キレイだなーって」

「そうです、あれが、神話時代から続く私達の薬作りの源、にして国名の由来でもある、キャロトの花なのです。」

キャロト。どこかで聞いたことがあるような。キャロト。キャロト、キャロト、

キャロット。

「あーっ、あれ、そっか、ニンジンの花だったんだー!!!」

急に合点がいったつみれは大きな声をだした。「そっかそっか、どっかで見たことあると思ったんだよねー!食材図鑑かなんかでみたんだったかなーっ」

全員、聞き慣れない「ニンジン 」という言葉にきょとんとしていたが、つみれだけは嬉しそうにうなずいていた。

「そっかそっかーっ、それでウサ耳だったんだーっ、ウサギといえばニンジンだもんねーっあー急に納得ー」

このあいだ評価を残してくれた方、ありがとうございました!また読みに来てくれるとうれしいです。

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