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すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
異世界召喚されちゃう第一章
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お城の厨房にご用心!3

つみれがアルトに尋ねたとおり、壁時計が7時を指すのと同時に、王女達はしずしずと厨房に迎え入れられた。なにが起きているのかよくわからないといった顔のルナフィオラと、その後ろで未知の出来事に目を輝かせるスリアミドラの二人だ。

いつもこの時間に朝餐がはじまる、というアルトに二人を迎えに行ってもらい、つみれは準備万端といった調子でテーブルを整えた。といっても、厨房内の空いていたテーブルにクロスをかけただけだ。でも、それなりにきちんと整えることができてつみれは満足していた。調理する者にとって、時間にあわせてすべての料理がちょうどよく仕上がるのは心地よいものだ。

何から質問したらいいかわからない、というように顔をみつめてくるルナフィオラから視線をそらすべく、つみれは大きな声を出した。

「おはようございます!朝食できあがりましたー」

そう言ってアルトとともに王女たちのために椅子を引いてみせる。促された二人はとまどいながらも腰掛けた。

「ごめんなさい、朝ごはん、いつもは専用のお部屋があるって聞いたんだけど、ちょっとそこまで気が回らなくて」

そう言いながらつみれは手際よく大皿にもられたなにかを持ってくる。クレープに似ているが、もっとパリッとしているかんじだ。アルトにも、ここはやらせてと言い、席につくように指示する。そして、鮮やかな朱色が美しい瓶にはいったなにかや、暖かな湯気をのぼらせる鍋も持ってくると、おたまでお皿に注いだ。

「つみれ様、これは一体、」と問いかけるルナフィオラを制するようにつみれは切り出した。

「本日の朝食は、じゃがいもとキャベツとにんじんのポタージュ、柔らかく似てから潰して、別に作っておいたお野菜のだしで伸ばしました。潰し方も、ミキサーなんかじゃなくてちゃんと手動です。それからこのお皿の上のはフラットブレッド、酵母が入ってないパンのことね。本当はあの立派なかまどでふつうのパンを焼いてみたかったんだけど、イーストが見つけられなくて。でもおいしいと思うよ!あ、食べるときはこのジャムを塗ってね、りんごとにんじんとはちみつでつくったジャム、これは今日一番最初に仕込んだんだ。りんごは二種類の切り方をして、口の中のアクセントになるようにしてみました。」

昨日のうろたえっぱなしだったつみれとは違い、てきぱきと説明するつみれの動作に全員、魔法にかけられたかのように自然と食卓の上のものに手が伸びる。正直誰も、つみれの説明している内容の半分も理解できていなかったが、とりあえず見知っている食材が並べられているということに安心したのと、なによりもおいしそうな匂いが鼻をくすぐってくるのに抗えない。三人はおとなしくスプーンを口に運んだ。つみれはその様子をすこし心配そうに見つめた。が、その必要はなかった。

「えっこれっすごくおいしいです!」

今口の中で起こっていることが全然わからない、といった感じで全員口元を抑え、それから目を丸くして皿の上を凝視する。

「つみれ様、これはどのような種類の魔法なのですか?」

「お姉さま、私これがお料理というものなのだと思いますっ」

「差し出がましいですが、こ、これは異界の薬学の一種、とみるべきでは」

三者三様のリアクションに、つみれは破顔した。正直自分の料理にはひそかに自信はあったし特に大したものを作ったという感じはしなかったが、この異世界の住人の好みに添える自信はなかったので、やっと安心した。手に汗をかいていたのが嘘のように引いていく。

「あーよかったっほっとした!好みじゃなかったらどうしようか、作りながら心配してたんだー」

椅子にどっと凭れる。こぼれてくる笑顔を止めたいのだが制御することができない。どうやら思った以上に気を張っていたようだ。三人が上品に、でもそれなりに食べるのが止まらない、といった感じであれこれ手を伸ばしているのを満足そうに眺めたあと、あ、そうだった、と思ってつみれは三人に問いかけた。

「そう、そう、あの、これが私ができる料理ってやつなんだけど、気に入ってくれたかな、ならいいんだけど……」

「もちろんです!」

ルナフィオラとスリアミドラは素早く返した。アルトは立場上何も言わないが、うんうんとうなずいている。

「私、料理がこういうものだと、やっとはじめてわかりました。これまであの棚の食材は戦前より切らしたことがありませんでしたが、どれをどう使うのか検討もつかないまま、伝統のままにただ並べているだけでした。本当に、料理というものは存在したのですね……」ルナフィオラが言う。

「いやいやいやっそんな大げさなもの作ってないし、材料があったからこそできたんよ」とつみれは照れながら答えた。

「料理って、甘かったり、さくさくしてたり、ねっとりしてたり、いろんな感触があるんですね。私達が料理だと思っていたものとすごく違います」

窓から差し込みだした太陽の光にキラキラと輝く、スプーンの上のジャムの表面に見惚れながらスリアミドラが言う。つみれは逆にその普段食べているもののほうが気になった。

「参考に、どんなの食べてるか教えてもらってもいい?」

「え、えーと、アルト、もともと予定されてた今日の朝餐のメニューはなんだったのかしら」

「いつもどおり、りんごのすりおろし、刻んだ野菜、麦のだんご、以上です」

「えっけっこう簡素だね……麦のだんごってどんなの?」

「小麦粉を水で練ってゆでたものです」

「あ、うん、で何かと和えてあるの?」

「いいえ。これだけで食べるものです。朝昼晩この国の主食で、あとは当城の場合、だいたい切られた野菜と日々の丸薬が横に添えられます。」

丸薬をメニューに数える王国がどこにあるだろうか。早起きして料理してよかった。つみれは心のそこからそう思った。


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