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すりみつみれの冒険おやたい❣  作者: みどりのヤクルト
異世界召喚されちゃう第一章
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お風呂上がりにご用心!

今日の仕事を終えてなんとかアパートにたどり着き、シャワーを浴びる。湯船に浸かりたいがそんな時間はない。体を最低限暖めると髪を乾かすのもそこそこに冷蔵庫を漁って、小さなおつまみチーズとビールの缶を手にソファに転がりプシュッと鳴らす。

もう時間は0時を回っている。明日は早出シフトだから8時間後には職場に戻らなければならないと考えると、ベッドに行くのも億劫だ。

白井つみれは目をこすりながら、明日すべきことを頭の中で整理していた。まず着いたら店を開ける前に冷蔵庫のなかの在庫確認をしよう、めんどうだけどそろそろ霜取りもしなければいけない。火曜日は魚系の食材がたくさん届く日だからそれまでにやらないと。あーそれから予約のお客さんの人数確認して、来月のシフト考え直さなきゃ。たしか水野さんは来週水曜日、そんで飯田くんは明後日バイト来れないって言ってたな。明日は来るんだったっけ?朝電車の中でラインして確認しとかなきゃ。

……もう無理。やることありすぎる。もう起き上がることなんてできない。今日はこのままここで寝てしまおう……

結構洒落た居酒屋で働いているといえ、やることはがっつり力仕事だ。料理をするのもそこそこ好きだとはいえど、ほんとうはこじんまりしたカフェで静かにパンやお菓子を焼いていたかった白井つみれは、まじめなお姉さんキャラとして新入りバイトくんから店長まで誰からも頼られっぱなしでそろそろ限界だった。

空になったビール缶をからからと振りながら、つみれは独り言をつぶやいた。「あービール飲んで酔って寝るとかこういう荒んだ生活したいタイプじゃなかったのにいー」

じたばたと足をふろうとしたがその元気もない。その上、風呂上がりからパンツ一丁にブランケットをかぶっただけの格好のままだ。

(あー独り身社畜ライフ〜なにもかもむなしい……)

そう思いながら、つみれはごろんと寝返りをうった。もう今日はここで寝ちゃう。。。

そう思ったときだった。

――ジャーッドガドガドガバンバンバン!!!!!!!!!!!!!!

風呂場の方から激しい音がしてつみれは飛び上がった。

(えなにストーカー!???いやちがうよねこんな喪女んち来ないでしょえじゃあなに!?????)

なにか犬か猫かなんらかの生き物が暴れまわっているような激しい音だ。ついでにシャワーの流れているらしい音もとまらない。

つみれはソファの背もたれを盾にするごとく構えると、何がおきてもいいように、左手にビール缶、右手に手近にあったリモコンを握りしめた。汗が止まらない。こういうときに限って、スマホは隣の部屋で充電中だ。

(も、もう、むり、どうしよ、ていうか、ヒィーっ)

急に頭の中に、先週たまたま観てしまった【体験!〜真夜中の怪談スペシャル〜】の映像がフラッシュバックする。その中で流れていた「風呂場の女幽霊」の話だ。

――あとで不動産屋に聞くと、昔その物件で女が自殺したという……

ナレーションが頭の中で再生されつみれはおもわず悲鳴をあげた、

と同時に風呂場の中でうごめくなにかも、甲高い叫び声をあげた。そのまま、風呂場のドアが弾けとばんばかりの勢いで開き、その「なにか」がレーザービームのようなものすごいスピードで飛び込んでくる。つみれは避けようも驚く暇もなかった。ただ、それがなにか薄いピンク色っぽい塊であるということだけは目視できたが、それが理解できたときには、その物体は稲妻のような華麗なターンを繰替えし、つみれの背後どまんなかに衝突していた。

「ぶッ」

なんともみっともない音を出してそのままつみれは倒れた。意識が遠のく寸前に、オタク趣味コレクション戸棚の上においていた「プリンスナイト☆サバイバル」主人公ベルベットサンド様の完全ED時に見れる絵が飾られたフォトフレームが落下しガラスが割れる音が後ろで響いていたのだけはわかった。

(これが私の人生のさいごなのね……)


地縛霊の怨念ってやつ……つみれは意識を失いつつ硬い床に倒れこんだ、はずだった。


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