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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第4章 領域解放編

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アルカナの使徒達

 ライトの前にシャドウが現れる少し前。

 レフトは足元に展開された魔法陣によって、別の場所へと飛ばされていた。ダンジョンのトラップに引っかかったかと思ったが、違う。

 ぽつりぽつりと松明の火が灯る。

 レフトを取り囲むように9個。

 それはレフトを取り囲むプレイヤーの数でもあった。

 素性を隠すためか、みな一様にフードを目深に被っており、色々な体格のプレイヤーがいるということしか分からない。

 その中で、レフトの正面に立つ小柄な人影が一歩、前に出る。


「トーナメントの時は、よくもやってくれたね」


 その声には心当たりがあった。

 ゆっくりと少年がフードを外す。

「シャドウか。ってことは、ネラもどっかにいるのか?」

「いないよ。姉さんはこんな数押しは好きじゃないからね」

 自嘲するような苦笑。それは一瞬だけで、不敵な笑みへと切り変わった。

「君こそ、頼りの騎士と引き離されて、本当は不安でいっぱいなんじゃないのかい?」

「はっ、そんなわけないだろ」

「その慢心を砕くために、数の暴力ってのを教えてあげるよ」

「出来るもんなら、やってみろよ」

 レフトの挑発には答えずに、シャドウは背を向けて、歩き出す。


「それじゃ、あとは任せたよ。【教皇】さん」

「ハハッ。承りました」

 シャドウの右にいた人物が前に出て、左にいた1番大柄な1人は彼に着いていった。残りは7人。

「では、手早く終わらせるとしますか」

 手前に立つ教皇が、静かに錫杖を構える。それに呼応するように、他のプレイヤー達も武器を構えた。

 武器を持った集団に囲まれてなお、レフトの余裕は崩れない。


「お前たちもシャドウ、黒影の仲間なのか?」


 一拍の沈黙。

 プレイヤー達は互いに目配せを交わし、それから全員が一斉に教皇へと視線を向けた。

「ハハッ。まあ、話してあげても良いでしょう」

 全員の視線を受け、教皇は愉快そうに笑う。

「まず、私達は共闘関係にはありますが、仲間というわけではありません。

 あなたが【厄災(the AR)占王(CANA)】へと至る可能性を潰す為、彼によって集められたのです」

「穏やかじゃないな」

 そして、たまたま巻き込まれたわけじゃないことが確定した。


「ハハッ。シャドウ曰く【厄災(the AR)占王(CANA)】に至るためには、1度の敗北も許されない、と」


 錫杖を掲げ、滔々と語る教皇。

「ならば、数押しで負けさせてしまえばいいというわけですな。ハハッ」

 全てのアルカナ系チート持ちを倒すことで発現するユニークチート。倒されれば権利を失うというのは、筋が通っている。

「でも、確証はないだろ」

 そもそも、厄災(the AR)占王(CANA)自体、アーケインの言っていた情報しかない為、レフトとしては信用しきれていなかった。


「ありませんねぇ、ハハッ」

 シャドウや教皇の情報源がわかるかと思ったが、そう上手くはいかないらしい。

「そんな曖昧な情報に、自分の可能性を賭けるのか」

「ハハッ。それは違いますよ」

 教皇は乱暴に錫杖を突き立てる。その動きにはどこか苛立ちが感じられた。

「私はすでに権利を失っています。どこぞの(けだもの)のせいでねっ!」

 フードから覗く口が噛み締められる。

「だから、死なば諸共というわけですよ! ハハッ」


「ーー否。我は声を荒らげて語る【教皇】の考察を、否定します」

 曲刀を持ったフードが前に出た。

 声からすると女性。だが、フードから覗く顔は人間ではなく蛇のそれであり、蛇人(SNAKEMAN)と呼ぶのが相応しいだろう。

「我々は彼から依頼を受けたまで。一切の私情は入っていません」

「ハハッ。そうでしたか」

 依頼というワード。そして、蛇人の特徴的な話し方にレフトは覚えがあった。


「お前、レヴィか」

「我は確信を持って問いかけてくるレフトに、拍手を返します。【身隠しの外套】で顔を隠しているのによくわかりましたね」

「いや、前も似たような格好だっただろ……」

 無感情に拍手する蛇人に、レフトは苦笑いを浮かべる。

「あぁ、既視感があると思ったら、マリウスとヴォルフが談論風発(だんろんふうはつ)していた例の魔法使いですか」

 レヴィの横、細剣を構えた女性が反応した。

「それなら、戦士の方にリベンジしたかったのですが、二者択一(にしゃたくいつ)を誤りましたね」

「我は小さく舌打ちをした【吊るし人】を叱ります。依頼に私情を持ち込まないように」


「も、申し訳ありません。レヴーーこ、【恋人】様」

 吊るし人、と呼ばれた女は、フードで顔の上半分を隠した上で、口元も左半分が白い仮面で覆われていた。

 外套から出ている手や足も白いことと、流星のような細剣。そして四罪天達(レヴィやマリウス)と知り合いであることから、その正体は察せされる。

「ベール、だったか」

 U18トーナメントの本戦でライトが戦った相手だ。

全面否定(ぜんめいひてい)。私は【吊るし人】です」

「……その呼び名、意味あるのか?」

 外套も含め、正体を隠そうしている割には、口調などを誤魔化す気がなさ過ぎる。

「そ、それは……」

「我は後輩を援護し、答える。あなた以外の我々が、今後に遺恨を残さないために必要だと」

「レヴィ様……」

 ベール(暫定)が熱っぽい声を漏らした。

 言葉の意味までは届いてないようだ。


「我も、その話は聞いておらんな」

 2人との会話に区切りが着くと、レフトの背後、一際大きな男が声を発した。その手には、特徴的な赤いハンマー。

「……アーケインか」

「ぬは。よく分かったな」

 アーケインは豪快に笑う。

「何回会ってると思ってんだよ」

 それに規格外の体格とレア武器のせいで、レヴィとは別の意味で、外套が意味を成していなかった。

「我は単純に、レフトと戦う場を用意すると言われただけだ。こうなるとわかっていれば、断っていた」

「ハハッ。シャドウの二枚舌には困ったものですね」

 アーケインに詰め寄られ、教皇が後退る。

「ですが、やる気がないなら、離れても結構ですよ。きっちり、報告はさせていただきますがね。ハハッ」

「ふん。好きにしろ」

 教皇の横を通り抜け、アーケインは闇に消えた。


「なんや顔見知りばっかで、居心地悪いわ」

「「世間は意外と狭いってことですよ」」

 短刀を持った青年のぼやきに、似たような鉈を持った2人の女が同時に反応する。

「おっ、息ぴったりやな。あんさんら、双子なん?」

「「こりゃ、失礼。こ」の娘のことは気にしないでください」

「ま、まぁ、そう言うんなら、触れんとくわ」

 そのやり取りを聞き、レフトはもしやと視線を向けた。

 3人とも、フードから見える口元に特徴はない。だが、途中で言葉を止めた女の頭上には、カーソルがなかった(・・・・)

「なぁ、もしかしてーー」

「ボクは【塔】です。初めまして、左」

 レフトの言葉を遮るように、答える塔。

 わざわざ初対面を強調したあたり、むしろ知り合いである可能性が高くなったが、追求はしない。なぜか訳されたプレイヤー名もスルーすることにした。


「ハハッ。話したのは失敗でしたね」

 素性が割れた恋人(レヴィ)吊るし人(ベール)に、居なくなったアーケイン。テンションの下がった青年と動かなくなった月の相方。

 悪化した味方の状況にため息をつきながら、教皇は錫杖を構えた。

「とはいえ、まだ数はこちらが優勢です。手早く終わーー」

「うぉらァ!」

 教皇が吹っ飛ばされる。


「悪いな。気が変わった」


 やったのはアーケイン。外套を脱ぎ捨て、機械の身体を露わにした大男が、赤いハンマーで打ち抜いたのだ。

「やはりこのようなやり方は気に食わぬ」

 ハンマーを肩に担ぎ、アーケインはレフトに並ぶ。

「だから、レフト。貴様の味方になってやろう」

「敵の敵は味方、ってか」

「うむ。だが、代わりにひとつ、我の願いを聞いてくれるか」

 傲慢な彼らしからぬ殊勝な態度。

「出来ることならな」

「貴様にしか出来ぬ事だ。ハーフライフで構わないから、我との一騎打ちを受けてくれ。

 ーーこれで、最後だ」

 道連れにしようとする教皇とは逆。自分なりのケジメをつけて、身を引こうとする。それも、HPが半分になった時点で終了するハーフライフ対戦(DUEL)で。

 その敗北が条件にカウントされないのかは疑問だが。

「ふっ」

 意外な気遣いをみせたアーケインに驚きつつも、レフトは口角を吊り上げて不敵な笑みを浮かべる。

「お前に負けたりはしないから、好きなだけ挑んでこいよ」

「ぬはっ! いいおるわ!」

 小さく笑い合い、2人は武器をかち合わせた。


「ハハ、ハハハッ、ハーハッハッハ!」


 教皇がゆらりと立ち上がる。

「一撃でHPを半分以上減らされるとは……。ハハッ、油断しましたな」

「倒すつもりだったのだがな」

「ハハッ、そうですか。それはあまり調子に乗らない方がいいですよ。あなたがそちらについたところで、まだ数はーー」

「ボクも抜けさせてもらうよ」

 教皇の言葉を塔が遮った。

 口元に笑みを浮かべながら、小走りでレフトの横に移動する。

「いいもの見せてもらったし、もっとヤっていいんですよ?」

「何もヤらねぇよ! てか、やっぱ、お前あの時の、……」

 聞き覚えのある反応に答えようとして、言葉に詰まる。間違いなく会ったことはあるが、

「……名前、聞いてなかったな」

「【塔】、でいいですよ。左」

「それ、絶対違う意味で使ってるよな?」

「おりょ? 意外とそっちも詳しい感じで?」

 嬉しそうにくっついてくる塔を、レフトは押し退けた。

「てか、そんな気軽に裏切っていいのか?」

「恩義に感じてるなら、あの戦士とイチャつく気になった時に、教えてくれると嬉しいな」

「だから、教えねぇよ」

 腐った塔から視線を逸らし、教皇へと向き直る。

 その近くには、恋人(レヴィ)吊るし人(ベール)に短刀の青年。人数の減少を受けて、包囲網は崩れ、向かい合う形に変わっていた。


 レフトは深く息を吸って、呼吸を整える。


「さあ、さっさと終わらせるぞ」


 こんにちは、銀です。

 たくさんのプレイヤーが出てきましたが、どの方も見覚えがある気がしますね。誰かさんの言ったみたいに、意外と世間は狭いのか。

 それとも、意図的に巡り会うようになっていたのか。

 レフトの戦いを心行くまで、ご堪能ください。

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