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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第3章 U18トーナメント編

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黒影

 闘技場の中心に立つのは、4人のプレイヤー。

 片や、夜色の斧を持った重装甲の戦士と鏡の乗った杖を構える黒いローブの魔法使い。傍目に見れば、近距離アタッカーの戦士と遠距離サポートの魔法使いで相性の良いコンビだ。

 実際の中身は違うのだが。


「チートはどうだ、ライト(・・・)?」

「バッチリ発動中だよ、レフト」

 短いやり取りで勝利を確信し、ニヤリと笑う黒っぽい2人組。

 それを、俺は控え室(・・・)のモニターを通して眺めていた。

 要するに、あそこにいる戦士の中身はロキである。

 種属特性とチートでステータスとチートは同じなので俺でも同じだろうが、レフトの一存でロキに決まったのだ。

 ちなみに言い出しっぺであるレフトが行かないという選択肢は、誰からも出なかった。

 控え室には、俺だけでなくバナジウムもおり、闘技場の様子が写ったモニターを眺めている。

 その横には、更新されたトーナメント表もあった。


        優

        勝

    ┌───┴───┐

  ┌─┴─┐   ┌─┴─┐

 ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐ ┌┴┐

 チ 黒 逸 S い 星 闘 麗

 | 影 鬼 e つ 狩 士 し

 ム   火 L め り の の

 L   星 F ん の 誉 金

       3 ず 剣 れ 星


 これによれば、相対するチームは【黒影】。

 名前の通り黒っぽい衣装で揃えた小妖精(ELF)の女と小柄な少年の2人組だ。


「相変わらずね? レフトちゃん」

 褐色の肌をした小妖精(ELF)が身に纏うのは、肌の露出が多い黒のドレス。このゲームにおいては区別されていないが、その見た目はダークエルフと呼ぶ方が相応しいかもしれない。

 そして、レフトの知り合いと。


「過大評価し過ぎだよ、ネラ姉さん」

 そんな小妖精(ELF)を姉と呼ぶのは、黒いローブに黒い杖を持った少年。雰囲気だけなら、レフトを幼くしたような見た目だった。

「また因縁の相手なのか」

 ニヤニヤとした笑みを隠しもせずに、ロキが問う。

「少年の方は知らないが、ネラの方はベータの時にちょっとな」

「あら、ちょっとだなんてつれないわね? 一緒にナイトマジシャンを狩った仲じゃないの」

「あれは横取りって言うんじゃないか?」

「どうだったかしらね?」

 レフトとネラがバチバチと火花を散らす。今更驚きはしないが、ベータテストで因縁を作り過ぎじゃないだろうか。


「僕の姉さんを悪く言わないでもらえるかなぁ」

 少年が1歩前に出る。

「事実を言ったまでだが?」

「生意気だね」

「そういうお前は誰なんだ」

「僕かい。僕はシャドウ。姉さんを守る騎士さ」

 そう言ってネラの前に立つシャドウだが、小柄なので守っている感はあまりなかった。

「で、そちらの相方は?」

 シャドウの視線がロキに向けられる。

 1回戦と違って名前が表示されていない為、誰何の必要があるのだ。まあ、ロキの姿はライト(おれ)になっているのだが。

「よくぞ聞いてくれました」

 ロキは、ネラに対するシャドウのように、レフトの前に歩みでると、斧を構えて指を鳴らした。俺なら絶対にしない動きだと思うが、真似るつもりはあるのだろうか。


「俺はライト。夜空の写し身たる常夜の斧(オールナイトアクス)を使いこなす【レフトの騎士】ライトだ」


 そんな名乗りをした覚えはないし、勝手に変な称号をつけるな。と、控え室で思ったところで届かないのだが。


「君ら2人にレフト(こいつ)が出るまでもない。俺ひとりで十分だ!」


 無駄にカッコよく決めポーズを取っていたが、本物(おれ)はそんなこと言わない。言わない、よな?

「あら、言ってくれるわね?」

「その慢心を砕くために、数の暴力ってのを教えてあげるよ」

 ネラは目を細め、シャドウは地面に杖を突き立てる。


召喚(サモン)。ナイトメイジ」


 杖を中心に魔法陣が展開され、10数体のナイトメイジが現れた。シャドウは召喚士(SAMOANER)か。

「さあ、無力な戦士を葬ってあげよう!」

 召喚者の命を受け、ナイトメイジ達が思い思いの魔法を放つ。正面から火の玉や風の刃が、頭上からは水の雨が、足元からは岩の針が迫る中、ロキは微動だにしない。

 全ての魔法をまともに食らい、平然と耐えた。


「え……?」

 笑顔のまま固まるシャドウ。

 魔法防御力の低い戦士に魔法を叩き込んで平然としているのだから、当然の驚きだ。

 体力(MAX )(HIT)タン( POINT)などのチートの存在を知っていたとしても、常に想定はしていないだろうし。

 まあ、アレは魔法防御力がカンストしてるからダメージが最小限なだけだが。


 と、少し目を離している間にナイトメイジは消えていた。


 ロキやレフトが倒したわけではない。

 モンスターの召喚だけでも常にMPを消費する上に、魔法の一斉使用である。召喚士(SAMOANER)のMPがどれくらいあるかはわからないが、すぐに底をついても不思議ではない。

 シャドウとしては、最初の一撃で決めるつもりだっただろうし。

 ちなみに似た職業の調教師(TAMER)というのも存在するが、あちらはモンスターとの個の契約であり、数は限られる代わりにプレイヤーのMPは消費しないらしい。

 閑話休題。


「まずは1人」

 ナイトメイジの猛攻で倒しきれずに呆然とするシャドウを、ロキが斧の一振で倒した。

「数を揃えたところで、庭園のザコには荷が重かったようですわね?」

「構えないのか? それくらいなら待ってやるぞ」

 相棒が倒れても、ネラの余裕は崩れない。ロキはロキでチートが発動しているからか、余裕の表情だ。

「では、お言葉に甘えさせていだたきますね?」

 そう言うと、ネラはストレージを操作して武器ーーではなく、小さな茶色の壺を取り出した。アレは……


「……ソロモンの魔壺、か」


 レフトが苦々しい表情を浮かべた。

 ギシンの森攻略戦後に聞いたところによると【ソロモンの魔壺】はベータテストの高難度クエストの報酬としてだけ手に入るレアアイテムだったらしい。

 そのクエストは正規版ではまだ発見されていないということも。

「ジャスティスに、レベルブレイカーを持っていたマリウスもか。どいつもこいつも気軽に使いやがって……まるでレアアイテムのバーゲンセールだな」

「半分正解ね?」

「なに?」

「バーゲンセールというほど安くはないけれど、これはあるプレイヤーが売っていたものよ?」

 ベータテストのレアアイテムを売るプレイヤー。

 真っ先に思い浮かんだのは、ムウシだ。アーケインとオルバー、そしておそらくジャスティスにも手を貸しているプレイヤーで、アイテムやチートの明記されていない仕様を知る男。

 彼ならば、レアアイテムを売っていても不思議ではない。


「……よくそんな胡散臭いものに手を出したな」

「量より質。プレイヤーよりも遥かに強い、ソロモンズデビルを召喚出来ると聞けば、欲しくなるでしょう?」

 気がつけば、ネラはレフトの前に立っていた。ロキは斧を向けているが、話を遮るつもりは無さそうだ。

 控え室にいる俺に出来るのは、その茶番を傍目に見ているだけ。

「ベータ版からナーフされてる可能性だってあるだろ」

「買う前に強さは見せてもらったわ?」

「だとしても、1回きりの戦力だろ」

「いいえ? これは悪魔が倒されない限り何度でも使えるのよ?」

「なるほど。だが、大事なことを忘れてるぜ」

「大事なこと?」


「U18トーナメントじゃ、アイテムは使えない。それは回復アイテムじゃないそれも同じだろ」


「確かに、あなたはそうなのでしょう?」

 不敵に笑い、ネラは壺を掲げた。

「けれど、私はその程度のルールには縛られない!」

 ネラの手からこぼれ落ちる壺。

 地面に落ちて割れたそれから、無数の蛇が現れた。どう見ても壺の体積より多い蛇の集団は散らばるのではなく、絡みあって、折り重なって、集まっていく。

 大蛇にでもなるかと思ったが、そのシルエットは2本の足がついた人型だ。

 蛇の質感はそのままに、境目が溶け合っていき、2本の角が生えた大柄な蜥蜴人間が姿を現した。


「便利なチートだな」

「えぇ、とっても。ーーシュヴァルツ」

 ネラと問いかけに答えるようにシュヴァルツーー固有名はソロモンズデビルーーが剣を構え、蛇らしからぬ生え揃った歯でニヤリと笑う。

 ジャスティスが召喚した時と見た目が違うのは、ランダムなのか、プレイヤーによって違うのか。


「圧倒的な力の差を見せて差し上げなさい?」

「確かに、戦う前から結果は見えてるな」

 ネラの背を守るように立ったシュヴァルツと、ロキが武器を構えて向かい合う。

「さあ? 私達もやりましょう?」

「俺はそうしてやりたいんだがな」

 嬉々とした表情のネラに苦笑いで答えるレフト。

「どういうことかしら?」

「言っただろ」

 答えたのは、一撃(チート)でシュヴァルツを倒したロキ。


「俺ひとりで十分だ、ってさ」


「へ?」

 柄で軽く小突いただけで、ネラのHPは全損した。


【   チームL  VS    黒影    】

【 レフト(Lv18)VS シャドウ(Lv18)】

【 ロキ(Lv17) VS ネラ(Lv20)  】

【   WIN   VS   LOSE   】


 使っている側は楽しいのだが、客観的に見るとえげつないチートだな。発動されたら並大抵の攻撃ではほとんどダメージを与えられず、かすり傷程度でも攻撃を受けたら耐えることは出来ない。

 物理魔法両方でその性能を発揮しつつ、動きさえ最速。

 予選でのロキの話から、受けたダメージをそのまま相手に返す技である【アズカウンター】には注意が必要だが、カンストした攻撃力を耐える手段は多くないだろうし、HPが高めの戦士ならば簡単に負けはしない。

 そんなことを考えているうちに、レフトとロキが控え室に戻ってきた。


「圧勝だったな」


 素直にそう告げると、ロキは無邪気な笑顔でピースサイン。俺の姿を使っているが、その明るい表情はどうやったら出せるんだ。

「ま、ライトでも出来たんだろうけど」

「いや、それは無理だ。ナイトメイジも、ソロモンズデビルも初見じゃないから、チートが使えない」

「つまり、俺の名采配だったわけだ」

 レフトがニヤリと笑う。だが、

「お前は何もしてなかっただろ」

「失礼な。立派に口撃(こうげき)してただろ?」

「それは口での攻撃か」

 相手を煽っていたとも言う。

(That's )(right)!」


 と、言い争いをしていたら話が進まないな。

 レフトのボケを無視してバナジウムに向き直る。

 レフトとロキも姿勢を直し、3人の視線が集まると、案内人は深々と頭を下げた。


「チームLの皆様。準決勝進出が決まりました」       


 こんにちは。

 後輩くんの不在でチートまで担当している、銀です。

 今回はルールの裏をかくプレイヤー達についての解説です。

 例えば、ネラ。彼女はチートの効果でアイテムを使ってましたが、受付時にはレベル18以下という条件を踏み倒して参加しています。

 他にも、レベル制限の確認フラグ自体を踏み倒して、全員が成長限界(Lv21)で参加してるチームもいます。

 これらは、チートを活用して、の行為なので我々としても容認しています。

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