Lの戦い レフト
レフトは杖ーー処女神杖を、対するゼクレテーアは槍を構える。
「星具の力を見せてやるよ!」
「偃月刀のサビにして差し上げますわ!」
決めゼリフと共に2人の魔法使いは地面を蹴って、飛び出した。
全く魔法使いらしくない始まりだ。
けれど、魔法的な要素がないかと言えば、そうではない。動き出しから僅かに遅れて、ゼクレテーアの姿が魔法のように掻き消える。
「例のステルス能力か!」
「その通りですわ」
返答の声は正面から聞こえた。
間合いを予測し、レフトは杖を振り上げる。
「え……」
それで、攻撃を防げたのは運が良かっただけだろう。けれど、そのチャンスを無駄にしないのは、運ではなく実力だ。
すかさず放った蹴りが、不可視のゼクレテーアに突き刺さる。
「くぁっ……」
お腹を押さえながら、たたらを踏むゼクレテーアが現れた。見えなくても触れられる。
レフトの顔に勝気な笑みが浮かんだ。
「それでも、万能とはいかないらしいな」
「えぇ、まあ。そうですわね」
ゼクレテーアが憂いを帯びた深いため息をつく。
衣装と合わせて、その姿は仕事に忙殺されたOLのようで、現実でもそうであるかのように違和感がない。
大人になってもああはなりたくないな、とレフトは密かに思った。
「その力、あくまで視界から消えるってだけか?」
「えぇ、そうですわ」
ゼクレテーアは笑みを浮かべながら、槍を構える。
「その他の五感ーー聴覚、嗅覚、味覚、触覚への干渉は出来ませんの。味覚は……試したくもありませんけど」
「俺にもそんな趣味はねぇよ」
食人鬼ならわかるかもしれないけど。と、レフトは苦笑する。
「私自身が解除するか、一定以上のダメージを与えられない限り、解けることはありませんわ」
「……素直に教えてくれるんだな」
「知ったところで、対処出来ないでしょう?」
ギシンの森の時は隠そうとしていたわりに、今は嬉々としてチートの詳細を語る姿に、違和感を覚えた。
ブラフか、他に狙いがあるのか。
「いや、俺なら倒せるさ」
そんな駆け引きはレフトには必要ない。
「倒せる? 随分と甘く見られたものですわね。あまり舐めないでもらえますか?」
「甘かろうと舐める気はねぇよ。さっき言ったろ」
「そうではありませんわ! ムカつきますわね! 分かっていてやっているのでしょう!」
「もちろん」
レフトの回答に、ゼクレテーアが絶句した。
が、そんなことは気に留めもせず、レフトは杖を構えて、その力の片鱗を解放。
「さあ、続けようぜ」
準備万端整えて、レフトが笑う。
「その透明化、攻略してやるからよ」
「……目に物見せてやりますわよ」
「見えなくなるんじゃなかったのか?」
「……言葉の綾ですわ! さっきから人の挙げ足ばかり取って、何のつもりですの!」
「目的なら果たしたさ」
「は?」
「消える相手と戦うんだ。相手のペースは崩しとかなきゃだろ?」
「…………っ!」
表情が引き攣った。それから、ハッと目を見開いて、余裕の笑みを浮かべる。クールに見えて、案外、表情が顔に出やすいタイプらしい。
「なるほど、そういうことでしたの。だとしても、それを話すとはおバカさんですわね。わたくしは、もう、惑わされませんわ!」
ゼクレテーアが動いた。
「不可視の刃に討たれなさい!」
その姿が掻き消える。とはいえ、初動からおおよその位置を把握することは可能だ。それを読んで違う動きをする可能性もあるが、その予測をしていてはキリがない。
レフトは眼前に杖を振り下ろした。
ーー手応えはない。
「あまいですわよ!」
ゼクレテーアの声が横から飛んでくる。それと同時に、鋭い衝撃が脇腹に走り、HPが半分近くまで一気に削られた。
「ふ、油断しましたわね」
不敵な笑みのゼクレテーアが浮かび上がる。
「偃月刀の攻撃判定は、魔法攻撃力で行われますの。非力ではなくてよ」
「そりゃ凄い。そんなのあるなんて知らなかったな」
「何を白々しい」
レフトの賛辞に、ゼクレテーアは不快感を顕にした。
「昨日、あなたが使っていた武器も同類でしょう」
その指摘は、棒読み気味の言い方ではなく、内容についてだ。それも、憶測だろうに、間違っていないという自負に満ちている。
ごまかすのは難しいだろう。
「……バレてたか」
「大方、接近戦に応じておき、不意をついて装備を交換し、逆転という筋書きだったのでしょう」
レフトはニヤリと笑った。
「で? こっちの作戦を見破ったから何だって?」
「構え直す暇もなく殺して差し上げますわ!」
ゼクレテーアが姿を消しながら、走り出す。
レフトは素早く杖を前に突き出した。
「飛べ、火球。ファイアボール」
杖の先端から小さな火球が放たれる。
だが、火球は何にも当たることなく真っ直ぐに飛んで行った。
「当たるわけがないでしょう?」
余裕な笑みを浮かべながら、ゼクレテーアは槍を振るう。攻撃の前にチートを解いたのは、避けられないと考えたからか。
事実、レフトは槍を避けることが出来なかった。
直前の傷をなぞるように槍が振るわれる。緑色だったバーはすぐに黄色く染まり、赤くなって、消えるーー寸前で持ちこたえた。
「……意外とタフですわね」
首の皮一枚の命だが、レフトは不敵に笑う。
「戦士のライバルがいてな。物理耐久も上げてんだよ」
その右手には小さな盾。
防御は間に合わなかったが、防御力を上げるのは間に合ったのだ。
「あぁ、彼ですか。けれど、次の一撃は耐えられないでしょう?」
不敵に笑い返し、ゼクレテーアは三度姿を消した。
「ま、当たればな」
レフトは苦笑しながら、杖を突き出す。
「飛べ、火球。ファイアーー」
「学習能力がありませんわね」
虚空でゼクレテーアの声が響いた。
それで位置がわかったりはしないが、近づいてきてることは間違いない。今のレフトには、それで十分だ。
レフトは、心の中で願うことで、杖のモードを変化させた。それに合わせて、杖の先に生まれていた火球が消える。
「ーーボール」
詠唱が終わると同時に、燃えるような輝きを纏った杖を斜めに振り下ろした。
「……え?」
ーー手応えあり。
「一撃なんて、ありえーー」
ゼクレテーアの声がブツリと途切れた。見えなくなっているせいでわかりづらいが、HPが0になり居なくなったのだろう。
レフトはそう判断し、肩の力を抜いた。
「学習能力がないのはお前だよ。透明になっておきながら、同じ場所しか狙わないなんてな」
レフトは杖を振り下ろしたのは、姿を現して攻撃してきた時にいた場所に向かってだ。つまり、最後の一撃が決まったのは、彼女が同じ動きをしたからだった。
「まあでも、俺が勝てたのはこれのおかげだな」
処女神杖を撫でながら、レフトは小さく微笑む。そしてーー
「俺は勝ったぞ。ライト」
別の場所で戦っている戦友の無事を祈った。
【 チームL VS 魔法協会 】
【 レフト(Lv18)VS ゼクレテーア(Lv18)】
【 WIN VS LOSE 】
こんにちは。
今日は武器ガイドの銀として、解説させていただきますね。
ゼクレテーアの武器、偃月刀について。
あれは魔法使いのクエスト【星月夜の洋館に潜む影】で得た【月】シリーズのひと振りで、魔法攻撃力で物理攻撃が出来るという性能をしています。
魔法攻撃も普通に可能で、レフトと同じく魔法を乗せることも可能です。




