ギシンの森 開幕
┏━━ 魔法使いの証 クエスト4━━┓
┃ ┃
┃ 【アイテム】を使用することなく ┃
┃ 様々な【試練】を乗り越えて、 ┃
┃ 【ギシンの森】の深奥に住まう ┃
┃ 【蟻神】のもとへと辿り着け! ┃
┃ ┃
┃ 尚、このクエストでは、個人の生 ┃
┃ き残り状況に関わらず、討伐成功 ┃
┃ で、パーティ全員がクリアとなる ┃
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扉をくぐった瞬間、目の前にクエストの表示が現れ、自分のHPバーの上に5本のHPバーが追加された。ギシンの森を攻略するまでは、強制的にパーティ扱いとなるらしい。
読み終わったタイミングを見計らってウィンドウが消えると、森の奥に扉が現れた。それも6つ。
クエストの説明を信じるなら、これが第1の試練か。
プレイヤーが6人いることを踏まえると、それぞれの扉に別れて入る必要があるのだろうが、扉には意味深なアルファベットが書かれており、適当に選べばいいというものではなさそうだ。
【ATK】【DEF】【INT】【RES】【AGL】【ALL】
書かれた文字の意味は何となく予想がつくが、それがどう関係するのかは扉だけではわからない。それを確かめるには、中央にある立て札を確認するしかなさそうだがーー
「なるほど。おい、見てみろよ」
先陣を切って確認したレフトがニヤリと笑みを浮かべる。
その時点で嫌な予感しかしないが、見ろと促されては見るしかない。
【扉の先には、1つステータスに特化したモンスター達が待ち構えている。それぞれの得意分野を見極め、攻略せよ】
「……なるほど」
ひとつのステータスに特化したモンスター。
ということは、アルファベットの意味は【ATK】【DEF】【INT】【RES】【AGL】だろう。
最後の【ALL】は全ステータスが高いということか。
第3のクエストで戦った【小領域の主】のようなステータスをしているという認識でいいのだろう。まさか、あのオーガナイトやナイトマジシャンがいるわけじゃないとは思うが、強敵には違いない。
ライダーとゼクレテーア、オルバー、仕方なしにジャスティスが内容を確認し、互いに距離を取り合いながら、立て札を囲むように陣取った。
しばしの沈黙。
嵐の前の静けさのような緊張感のある空気の中、口を開いたのはライダーだった。
「……この試練を確実に突破する為には、互いの得意分野を知る必要がある。であれば、自己紹介が必要であろう?」
その言葉に異を唱えるプレイヤーはいない。
「なら、まずは言い出した俺からだな」
ニカッと笑みを浮かべる巨漢。オールバックにサングラスと威圧感のある見た目をしているが、その笑みは暖かい。
「俺の名はライダー。仲間内のギルドで一応、ギルドマスターをさせてもらっている。初級魔法は一通り使えるが、得意なのは光魔法だな」
少し間を開けて、ライダーは続ける。
「チートは【詠唱破棄】。詠唱無しで魔法を使えるチートだ」
「ノータイムで魔法が使えるってわけか」
チートの説明にレフトが反応した。楽しそうな笑みを浮かべているが、今は戦う相手じゃなくて味方だぞ。
「うむ。そういう認識で構わない」
「やろうと思えば、声を出さなくても使えるってことか?」
「それはーー」
「それに答える必要はありませんわ」
答えようとしたライダーを、ゼクレテーアが遮った。
「情報共有としては充分でしょう」
「ただの興味本位だ」
「不用意な詮索はお止めいただきましょうか」
どこからともなく現れた槍が、レフトの首に突きつけられる。
「テーア、その辺に」
「……かしこまりました」
現れた時とは逆に、槍が掠れるように消えていく。
「わたくしはゼクレテーア。これがチートですわ」
これとは、槍を消したことだろうか。初対面時のやり取りを踏まえれば、自分の姿も消せるはずだ。
ちなみに、ふと気になって調べたところ、ゼクレテーアとはドイツ語で秘書の意味らしい。だから、OLのようなスーツを着ているのだろうか。
「このクエストをクリアするために協力はいたしますが、今後、我が主の不利となるようなことは認められませんわ」
ライダーの従者ではあるようだが、その方針は違うらしい。
「じゃあ、次は俺が行くかな」
不穏な空気を壊すように明るく声を上げたのは、オルバー。骨の鎧と毛皮のマントという野性味溢れる風貌の魔法使いだ。
「名前は、オルバーだ。悪いが、得意魔法とチートは伏せさせてもらう」
「名前だけ? ふざけているのですか?」
「一時的な協力関係だから、不要な情報は喋らない。あんたが言ったことだろ?」
「くっ……それは」
「でも、まぁ。信用は出来ないよな。だから、俺はーー」
ゆっくりとある扉の前に移動して、オルバーは鷹揚に手を広げた。
「【ALL】の扉で構わないぜ?」
ALL。つまり、全能力が高めのモンスター。
「ほう」「へえ」「なっ」
ライダーとレフトが楽しそうに笑い、ゼクレテーアが頬を引きつらせる。ジャスティスは相棒の無謀な発言にも無反応だった。
「犠牲になるつもりですか?」
「そんなつもりは毛頭ないが、1人でもボスを倒せばクリアなんだから、おかしなことじゃないだろ?」
やれやれと肩を竦めるオルバー。
「随分と相方を高く買っているのですね」
「期待してるのは相方じゃないけどな」
オルバーと目が合った。
「というわけで、頼むぜ? ライト」
それを誤魔化すわけでもなく、矢を向けてくる。
ついでにゼクレテーアからは睨むような視線が向けられた。
「俺はライト。そこにいるレフトの付き添いで参加している戦士だ。というわけで、よろしくレフト」
早口に名乗ってパス。
ゼクレテーアの視線がレフトへと移る。チートの説明は飛ばしてしまったが、ゼクレテーアからの追求が怖かったからではない。断じて。
「俺は【黒の魔法使い】レフト。俺による、俺のための物語をクリアするため、このクエストは絶対にクリアしてやるよ」
月の杖をくるりと回し、レフトはニヤリと笑みを浮かべた。
「チートについて教えていただけますか?」
「基本的にモンスター相手に使えるチートじゃないから、詳細は伏せさせてもらおうか。文句はないよな?」
「……いいでしょう」
以前は対人用じゃないと言っていたが、モンスター相手に使うものでもないらしい。となると、ガイウスの仲間のような情報チートか、オルバーのような対戦時以外のチートか。
そういえば、一緒に行動してるのにお互いにチート知らないんだな。
「最後はあなたですわよ。ジャスティス?」
「……名前以外の情報を出すつもりはない。俺は俺の正義に従い、やるべきことをやるだけだ」
静かに呟いたのは、神父のような紅髪の男。
「それが通ると思ってますの?」
「俺は残った扉で構わない。それでも不満なら、勝手にやらせてもらうことになる」
腰に届く長髪が風に揺れ、静かに鞘に手を添える。
「あなたもですか……!」
「よい、テーア」
「……ボス」
「なかなか個性的なメンバーのようだが、それくらいの方が仲間としては頼りがいがある」
ガタイだけではなく、器も大きい男だ。ギルドマスターには必要な素質なのだろうか。
「では、扉を決めようか」
完全に仕切り役となったライダーの視線がオルバーに向けられる。
「先程自己申告があったが、本当に【ALL】でよいの か?」
「あぁ、問題ない」
「ふむ。では次に戦士のライト」
視線が俺に向けられる。
「他のメンバーが魔法使いであることを考え、一番苦手な【ATK】に行ってもらいたいのだが、構わないかね?」
「はい、大丈夫です」
魔法使いは物理防御力が低い職業だ。物理防御力が高い戦士に任せようというライダーの判断は間違っていない。
「ふむ。では、次にーー」
「俺が【RES】に行ってやるよ」
ライダーの言葉を遮るレフト。
「魔法使いの苦手分野ってなら、ここもだろ?」
「それはそうだが、構わないのかね?」
「チートを伏せたからな。これくらいの逆境は受け入れてやるよ」
いや、お前普通に殴りに行きたいだけだろ。
見た目はここにいる誰よりも魔法使いらしいが、戦い方は魔法+打撃戦なんだから。
というか、オールバックの巨漢、槍使いのOL、弓使いの狩人、剣使いの神父とか、魔法使いらしからぬプレイヤーが多過ぎるだろ。
「ふむ。では残るは【DEF】、【INT】、【AGL】の3つか。テーア、希望はあるかね」
「ボスより先に決めるなどおこがましいです。先にボスがお決めください」
恭しく頭を下げるゼクレテーア。他のプレイヤーに対する狂犬っぷりが嘘のような忠犬ぶりだ。
「ならば、【AGL】にしようか。詠唱がない俺が一番有利であろう」
「それならば、わたくしは【INT】にいたしましょう」
「ふむ。一番簡単そうなものが残ったな。ジャスティス、依存はないか?」
「……好きにしろ」
淡々と答えるジャスティス。
これで、扉の選択は決まった。先陣を切ったオルバーに続いて、それぞれが扉の前へと向かっていく。
【ATK】ライト
【DEF】ジャスティス
【INT】ゼクレテーア
【RES】レフト
【AGL】ライダー
【ALL】オルバー
「では、また扉の向こうで会おう」
「えぇ」「あぁ」「おう」「……」
ライダーの檄に思い思いに応じて、扉に触れる。カチリと鍵を回すような音がして、視界が暗転した。
……扉なのに開かないのかよ。
どうも。今回は先輩が不在なんで銅が担当させてもらうっす。
テーマは扉に書かれていたアルファベットについて……どう考えても先輩の案件なんすけど。ま、頼まれた以上はやるっすけど。
まずは、【ATK】と【DEF】は【Attack】と【Defense】で、どっちもスポーツ用語で攻撃と防御のことっすね。
【INT】は【|Intelligence】で、知性の意味っすね。
【RES】は【Resist】で、抵抗力的な意味あいっすね。
最後の【AGL】は【agility】で、俊敏性みたいなことっすね。
ゲームによっては違ったりもするみたいっすけど、このゲームでは上記の表記をしてるんで、よろしくお願いするっす。




