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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第2章 チート解放編

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チーム戦

【キングレオ・ナヘマー】

 そのモンスターを簡単に説明するなら、黒いライオンだ。より厳密にいうなら、目に付いたのは装備している鎧の黒か。本体の体毛も黒いが、それはどちらかと言えば紫に近い黒だった。

 見た目で変化しているのは、捻れた角が生えてないことくらいか。強化版と言っていたが、ビジュアル的には弱体化してるな。


「グルァア!」

 岩場から飛び降り、ナヘマーが吼える。

 1度しか聞いていないから断言は出来ないが、ラヌートと同じ声だろう。

「来るぞ!」

 違いは、もうひとつあった。

 ナヘマーは配下の獣(レオ・コルニス)を召喚することなく、巨体を震わせて襲いかかってくる。

 まだ何もしてないが、その金色の瞳は俺を捉えていた。


「かかってこいよ。ナヘマー」

 俺はガイウスから借りた鉄の盾を構える。

 鋭く大きな爪が、盾に向かって振り下ろされた。見た目に反して、衝撃はない。それが盾の効果なのか、防御力の高さゆえかはわからないが、これならいけそうだ。

 俺は盾を持っていない手で、小さな鐘を鳴らした。

「グルァア!」

 逸れかけていたナヘマーの視線が俺に戻る。再び振り下ろされた凶爪を、再び盾で防いだ。どっかの誰かさんのようにパリィは出来ないが、タンクの役目としては果たせているだろう。

「こっちは大丈夫だ!」

「ありがとう!」

 ガイウスが舞い上がる。

 俺の頭上を軽く飛び越え、ナヘマーの顔面目掛けて、剣を構えた。赤く輝きを帯びたその刀身から放たれるのはスキル技だ。

 三角形を描くように剣を振るい、最後に真ん中を突く。星狩(ほしが)りの(つるぎ)のガラードが使っていたあの技だ。名前は確か、トライアングル・ストライク。


「グルァア!」

 ダメージを受け、ナヘマーがガイウスに狙いを定めた。ガイウスはその視線を受けながらも、笑う。

 ナヘマーが腕を振り上げた。

「喰らいなさい!」

 その手を包むように水球が現れる。――ユーサイズが使っていたバブルスコールだ。

 発動させたのはユリウス。詠唱から発動まではタイムラグがあるはずだが、ナヘマーの動きを読んだのか。

 レフトに負けたイメージしかないが、彼女も優れた魔法使い(MAGE)であることは間違いない。

「ググゥ……」

 内部でも当たり判定があるのか、バブルは豪雨(スコール)ではなく、小雨を降らせながら小さくなっていく。

「あたしも行きますよぉ」

 巨体の下に滑り込み、フィックスが短刀を振り上げた。刀身が赤く光を帯びる。短刀のスキル技は見たことがないので気になるが、より気になるのは、フィックスの姿だ。

 浴衣なのは変わらない。

 だが、しっぽが生えていた。丸みを帯びつつも、先が尖った楕円形の尾のイメージは、狐か。よく見れば、頭には三角形の耳もついている。

 わかりやすく言って、けもの娘になっていた。

「見とれちゃダメですよぉ、ライト」

「見とれてない!」

 フィックスから目を逸らし、ナヘマーの顔を見ながら鐘を鳴らす。


「グゥ……グルァア!」

 ナヘマーは悩むように俺達を見てから、大きく口を開けた。ブラックホールのように黒い口腔だ。

 そこから、炎が噴き出された。

「くっ!」

 盾だけでは防げない。

 それでもダメージは微々たるものだし、モワッとした熱気がきただけで痛みはなかった。

 問題は他の3人だが。

「大丈夫、みたいだな」

 視界の端に表示された3本のHPバーは、全く減っていなかった。減っているのは、1番にある俺のHPバーだけだ。

 いや、もうひとつあるか。

「グルァ……」

 俺達を睨みつけるナヘマーのHPバーだ。

 まあ、2本目である青色のゲージが8割以上も残っているので、ダメージとしては大したものでは無いだろうが。

「うん。いい感じだね」

 ガイウスが俺の横で剣を構える。回避から接近の速さはさすがと言うべきか。軽装故にヒットアンドアウェイの戦い方は得意らしい。

「今の要領で行くよ」

 ガイウスは俺を見て、ニッコリと笑う。

「了解」

 返事と一緒に、俺は鐘を鳴らした。


 俺が敵を引き付け、3人が攻撃する。アイテムのおかげもあって、戦況は安定していたと言えるだろう。

 塵も積もれば山となり、ダメージの蓄積によってHPが半分を切ることもあったが、色が変わった瞬間にフィックスが回復してくれた。

 対して、自己回復も回復してくれる人もいないナヘマーのHPは、1割を切った所(レッドゾーン)だ。

「決めるよ」

「はぁい」

「えぇ! ()(そそ)水流(すいりゅう)。バブルスコール」

 ナヘマーの顔が水に包まれる。窒息しそうな絵面だが、そんなシステムはない。弱点部位(WEEK POINT)でない限り、与ダメージは同じだ。受ける側の精神ダメージは違うかもしれないが、NPCのモンスターにそれを求めても無駄だろう。

 まあ、あの技は被弾数でダメージの増減はありそうだけど。

「あはぁ。トドメ、なのですよぉ」

「あぁ、そうだね」

 フィックスは短刀をナヘマーの脚に突き立てた。

 ガイウスは飛び上がって、トライアングル・ストライクを発動させる。4連撃のその技だけが空中で出来るのか、効率がいいからなのかはわからない。

 ただ、ガイウスが空中で発動させるのはいつもあの技だった。

「終わりだよ!」

 斬撃により刻まれた三角形の中心に、刃を突き立てる。根元まで深く突き刺さった一撃が、ナヘマーのHPを削りきった。

「グルァァァァ!」

 雄叫びを残し、ナヘマーが砕け散る。

 4400という莫大な経験値が表示されたが、俺に恩恵はない。

 そういえば、ラヌート戦の時は死に戻りしたが、勝った場合はどうなるのか。

「なあーー」

 近くにいたガイウスにそれを尋ねようとするのとほぼ同時、足元に魔法陣が浮かび上がり視界が暗転した。


 強制転移させられた先は、闘技場(コロシアム)の控え室。勝とうが負けようが戻ってくる場所は同じらしい。

 部屋に待ち構えていたパナケイアは「おめでとうございます」の一言を残して出ていってしまう。

 セリフの差はあれど、この対応も勝敗には関係ないらしい。

「ありがとう。ライト。おかげで助かったよ」

「俺もいい経験になった。ありがとう」

 健闘を称え合い、俺とガイウスは固く手を握り合う。男同士の熱い友情的なノリで、少し楽しくなった。


「それで、経験値の分配なんだけど」

「分配?」

「あぁ、僕らは任意割りにしてあるんだよ」

「なるほど」

 俺とレフトは均等割りにしているから意識していなかったが、任意割りなら分配という言葉に説明がつく。

 そもそも、経験値の分配方法は2つだけではない。

 俺とレフトがやっている人数で等分する方法とガイウスがやっているらしい終了後に任意で分配する方法。それ以外に、与えたダメージに合わせて分配される方法や割り振る割合を固定した不均等割りなどがある。

 閑話休題。


「俺のチートはデメリットとして経験値が入らなくなるっていうがある。だから、いらないよ」

 今だって見えてないだけで、なんらかの影響があった可能性は否めない。例えば、経験値が元の3/4になっていたりとか。

「それだと僕の気が収まらないんだけどな」

「クエストの報酬だけで大丈夫だ」

 確か、アイテムをひとつとあったはず。

「……うーん。いや、まあ、それはあげるよ」

 そう言って、ガイウスは所持アイテム一覧を開いて、見せてきた。

 しかも、選ぶように作ったようなストレージではなく、本人の普段使いのストレージだ。布の服とか装備品が混ざっているから間違いない。

 あの羽のついた剣は【フェザーソード】というらしい。羽のついた剣だから、(フェザー)(ソード)なのだろう。序盤に相応しいシンプルなネーミングだ。

 それが、なぜか4つも入っていた。


「剣の予備多過ぎないか?」

 武器破壊(アームブレイク)などの対策で予備の武器を持っておくことはあるだろう。俺が銅の剣を手放してないのも、それがあるからと言えなくはない。

 それにしても、4本はいらないだろう。

「あぁ、それは試作品なんだよ」

 ガイウスの回答は予想の斜め上をいっていた。

 試作品ということは、武器錬成で作り出したものだということだろう。だが、あれは失敗すれば何も残らない。

 つまり、目の前の男は成功したにも関わらず、追加で3本――あるいはそれ以上――作ったということだ。

「この4本はそれぞれ、攻撃力や効果が違うんだ」

 そういいながら、ガイウスは装備していた以外の3本の剣を取り出した。


「今使ってるのは、攻撃力は2番目だけど素早さの上昇率が1番高かったやつ。これは、攻撃力だと1番だけど素早さが最下位で、こっちは逆で攻撃力は1番低いけど素早さ上昇率はこれと同じくらいなんだよね。最後のこれは、1番最初に作ったやつで、結果的にはどっちも3番目になってるね」


 ガイウスはひとつひとつの剣を手に取りながら、楽しそうに語る。だが、見た目は全く同じだった。

 というか、普通に考えて同じ武器なんだから、同じ形だろう。

 見分けがついているとしたら、逆に怖い。

 俺は適当にひとつを指さして言った。

「なら、その素早さ上昇率がトップタイのやつをくれ」

 選んだ理由は、素早さが下がる斧から切り替えた時のギャップが1番あるから。

「こんなものでいいのかい?」

「あぁ、ガイウスさえ良ければだけどな」

「全然構わないよ。使い道もないのに捨てられなかっただけだからね」

 そういいながら、ガイウスは俺が指さしたのとは別の剣を差し出してくる。本当に見分けがついているのだろうか。

 俺は借りていた盾と鐘と引き換えに、剣を受け取った。


「これで解決だな」

「本当に、経験値はいらないのかい?」

 その顔は戸惑っているというより、困っているという表情だ。それでも、言い出したことを曲げるのは性にあわない。

 困らせるのも、不本意ではあるのだが。

「あぁ、いらない」

 俺が小さく首を振ると、ガイウスは握り拳を突き出した。


「なら、勝負をしよう」


 どうも、銅っす。

 今回は【進化するチート】について、解説っす。

 種族や職業の上位種や上級職に対して、一部のチートは進化先が用意されてて、そのひとつが【起死回生(REVENGER)】。

 このチートを持つプレイヤーが一定時間、部位欠損状態を維持するという条件を満たすと、【死灰復燃(AVENGER)】というチートに進化するっす。

 このチートでは物理攻撃力・魔法攻撃力だけではなく、物理防御力と魔法攻撃力、素早さも上昇するようになる他、部位欠損によっても上昇するようになって、ステータスは最大で3倍近くになるっす。

 まあ、色々あるってことっすね。

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