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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第2章 チート解放編

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チートいろいろ

「あ、もちろん、無理強いはしないよ」

「いや、話すよ」

 ガイウスはそう言ってくれたが、話したくない理由があるわけじゃない。今回は発動しないとしても、だ。


「俺のチートは【初見殺し】と書いて、【(the )(FIRST)殺し( CONTACT)】。初めて戦う相手だと、HP以外の全ての能力が最大値になるチートだ」


 しばしの沈黙。

 口を開いたのは、満面の笑みを浮かべたガイウスだった。

「まさに初見殺しだね」

「いやいや、知ってても対応出来ないから、違うでしょ」

 ユリウスがツッコミを入れる。その指摘はもっともだ。いわゆる初見殺しとは、知らないで挑むと無理ゲーだが、2度目以降あるいは知っていれば簡単に攻略出来るものを指す。

 だが、俺のチートは知っていても初対面で勝つことはまず不可能。全能力がカンスト値だというのは――特に序盤は――圧倒的な差だ。

「まあ、出オチ的なチートなんだけどな」

 なにせ、2回目以降は全く発動しないのだ。

 プレイヤーはともかく、設定的には別個体であろうモンスター相手でも、1度倒した種類には発動しない。

 そのうえで、圧勝出来るチート発動時は経験値が入らないというデメリット付きだ。


「出オチなら、あたしもですよぉ」

 ニッコリと話に入ってきたのは、フィックス。小柄に浴衣で可愛らしい少女なのだが、なんとなく苦手なタイプだ。

「あたしぃ、今は、チートないんですよぉ」

「今は、ない?」

 出オチなチートだと言っておいて、二言目にはないと来た。だが、俺の疑問は想定内とばかりに フィックスは笑みを浮かべる。

「元はぁ、星の(CONSTEL)導き(LATION)って言ってぇ、星具(せいぐ)が手に入る消費型のチートでしたぁ」

「なっ……」

 星具といえば、レフトが求めているものであり、星狩(ほしが)りの(つるぎ)が欲しているものであり、オルバーが手に入れたものだ。

 言葉に詰まった俺を嘲笑うように、フィックスは短刀を取り出した。

 あれが、星具なのか。

「もちろん。十二宮(じゅうにきゅう)じゃないですけどねぇ」

「え?」

「あたしのこれは、こぎつね座【小狐妖刀(ヴルペクラダガー)】」

「あー、なるほど」

 おとめ座に挑み過ぎて忘れていた。

 レフトはあの時、星具の中でも特に優れた十二宮(じゅうにきゅう)星具、と言った。つまり、12星座には劣るとしても、残りの星座分の星具もあるということだ。

 彼女が持つのは、その1つということらしい。


「僕のチートも説明しておくよ」

 落ち着いたのを見計らって、ガイウスが話を切り出した。正しくは、横道に逸れた話を戻したというべきか。

「僕のは起死回生と書いて【起死回生(REVENGER)】。減少したHP分だけ攻撃力が上がるチートだよ」

 起死回生とリベンジ。しっくりくるようなこないようなチグハグな組み合わせだが、そこを気にしても仕方ないのだろう。俺のチートだって、ファーストコンタクトだから、初見だけで殺しの部分は入ってない。

「HPが残り1%だったら、攻撃力は約2倍って感じだね。場合によっては起死回生っていうか、八つ当たりになるんだけどさ」

 言い得て妙な表現だった。

 まあ、ピンチになるほど攻撃力が上がっていくというイメージでいいのだろう。デメリットがあるのかはわからないが、いや、使いづらさがデメリットか。

 攻略サイトに載っていたチートにも、使いづらさからか、明確なデメリットが書いてないのはあった。

 HPが減ることで発動するというのは、それに近いのかもしれない。

「あ。だから、防具を強化してないのか」

「いや、違うよ」

 違った。てっきり、被ダメージを大きくすることで早々に高威力を出せるようにしたのかと思ったのだが。


「ライト。君は、隠しステータスって知ってるかい?」

「あぁ、武器の耐久値とか鋭さとかだろ?」

「そうだね。その中のひとつ、重さが重要なんだ」

「重さ?」

「そう。例えば君が装備している鉄の鎧だけど、現実でそれを着て戦うなんて難しいだろう?」

「だろうな」

「それは何故だい?」

「なぜって、そりゃ、重いから」

「そう。それがゲームだとない。わけはないだろう。感じないくらいまで、落とされてるのさ。重さがね」

「……なるほど。だとしても、それが?」

「その重さの隠しステータスは素早さに影響があるんだよ。もちろん、数値に出ないところでね」

 つまり、斧や鎖帷子(くさりかたびら)のように素早さの数値がマイナスされるものとは別に、重さが作用する要素があるということか。

「このゲームにおける素早さのステータスは、いわば全力疾走で出せる速さだ。本人のコンディションにも影響されるし、重さも関係してくる」

 面白い話だ。まあ、鈍足な俺にはあまり関係ないことだが、覚えておいて損はないだろう。

「そして、現状で1番軽くなる方法が、初期装備の布の服だったんだよ」

「なるほど。でも、見た目だけでも変えたりは」

(デザイン)装備にも、重さはあるよ。それも、見えなくなる装備品とは別にね」

 それはどういう理屈だ。

「まあ、この服を気に入ってるわけじゃないから、軽い装備品を作れるようになったら変えるさ」

 その言葉にユリウスが反応した。

「解放戦までには頼みますよ」

「それは難しいかな」

「……自分の立場を考えなさいよ」

「いや、それは……」

 ガイウスがたじろぐ。

 チームのリーダーとしてということだろうか。まあ、ユリウスもフィックスも見た目を意識した装備みたいだし、言われても仕方ないか。

 かくいう俺も、初期装備じゃないだけで見た目なんて気にしてはいないのだが。

 気にするかどうかは、性別の差か。


「そんなことよりぃ、ユリウスのチートがまだですよぉ」

「わ、わかってるわよ!」

 ユリウスはたじろがなかった。

「私のチート(cheat)は、魔力満(MAX MAGIC)タン( POINT)よ。魔法とか特技でMPを消費しないわ」

 PVで出てた体力(MAX H)満タン(IT POINT)魔力(MP)版か。魔法を連発出来るという意味では、魔法使いと相性のいいチートだと言えるだろう。

 彼女はその状態でもレフトに負けたらしいが、魔法を使う隙も与えてもらえなかったのか。接近戦を得意とするレフトが相手なら、十分に考えられる話だ。

「これで満足かしら?」

 その視線は、フィックスに向けられていた。

「バッチリですよぉ」

 フィックスは笑顔で答える。

 そこに悪意は全く感じられないが、ユリウスは不満げだった。そんな2人の様子を見て、ガイウスが苦笑い。

 この3人はリアルでも知り合いなのだろうか。

 ふと、そんなふうに思った。

 リアルの話はご法度なのでしないが。


「そろそろ作戦を決めませんか?」

 代わりに脱線した話を本筋に戻す。

「そうだね」

 すかさずガイウスが答えた。素早い切り替えは頼れるリーダーの素質だろう。

「といっても、セオリー通りの戦い方だね」

 ガイウスはひとりひとりの顔を見ながら、役割を説明する。

「ライトが敵の攻撃を引きつけるタンク。

 僕がメインの近距離アタッカー。

 ユリウスは遠距離から魔法でサポート。

 フィックスはユリウスの側でライトを中心に回復を担当。

 みんなはどう思う?」

「それでいいと思うわよ」

「んー。ひとつ質問いいですかぁ?」

 ユリウスは素早く同意したが、フィックスは疑問があるらしい。ユリウスがキリッと睨みつけたが、フィックスはどこ吹く風といった様子だ。

「言ってみてくれ」

 ガイウスが苦笑しながら、続きを促す。

「ライトのチートはぁ、発動しないのですかぁ? 発動するならぁ、回復の必要なさそうなんですけどぉ」

 その疑問は当然だ。

 そして、俺はその回答を用意してある。

「しないよ。キングレオ・ラヌート(・・・・)は戦ったことがあるからね」

「あはぁ」

 なぜか、笑われた。

「それなら、きっと発動すると思うよ」

 笑うだけで説明しようとしないフィックスに代わり、ガイウスが説明を始める。


「僕らが挑むのは、キングレオ・ナヘマー(・・・・)だからね」


「え……?」

 どういうことだ。

 闘技場(コロシアム)にいるキングレオといえば、キングレオ・ラヌートのはずだ。わけも分からないまま挑んだ後に調べたが、キングレオ・ナヘマーなんていなかった。

 それは間違いない。

 というか、同じような名前のモンスターを2体も用意しないだろう。見た目まで似ていたら、その存在価値はほぼない。

「チート解放前に行ったんだろ?」

「……初日、だな」

「わぁお、ベータテストのボスキャラに初日に挑んだんですかぁ。なかなかクレイジーですね」

「悪かったな」

「悪くなんてないですよぉ。たぁだ、あたしなら絶対やらないですけどぉ」

「フィックス。その辺に」

 俺をからかうフィックスをガイウスが止めた。

「はぁーい。ごめんなさぁい」

 全く謝罪の意思がこもっていない謝罪だ。

 まあ、本気の謝罪を求めてるわけじゃないからいいんだけどさ。

「……本題に戻ってくれると助かる」

「あぁ、悪かったね」

 いまいちど話を戻そう。


「いま、挑もうとしているキングレオは、俺が初日に戦ったキングレオとは違うということでいいんだな?」

「その通り。チートが解放されたその日に、出現モンスターが変わったんだ。それがキングレオ・ナヘマー。キングレオ・ラヌートの強化版だと思ってくれればいいよ」

「……なら、戦ってないな」

 つまり、初見殺し(チート)は発動する。

 防御面もカンストだ。

 壁として全ての攻撃を引き受けたとしても、回復が必要な域には落ちないだろう。もし落ちたとしても、アイテムで回復出来る範囲だ。

「なぁら、あたしも前線出ていいですよねぇ」

 フィックスが短刀を振りながら笑う。

 ヒーラーなのに、戦えるのか。

「僕達の回復があるだろう」

「大丈夫ですよぉ。そのためにぃ、壁がいるんですからぁ」

「…………」

 ガイウスが沈黙した。

「あな――」

 代わりにユリウスが何かを言おうとするが、ガイウスは肩に手を置いて静止する。僅かな視線の交錯で、ユリウスは下がった。


「ヒーラーは数が足りているから、攻撃も出来る人がいてもいいかもしれない。それは、前から考えてた」

 ガイウスが真っ直ぐにフィックスを見据える。

 フィックスは不敵な笑みは崩さずに、ガイウスを見上げた。

「ヒーラーであることは忘れるなよ」

「わかってますよぉ」

「……ならいい」

 決まったみたいだな。

 ユリウスは口を尖らせていたが、ガイウスの決定にケチはつけないだろう。俺は決定に従って動くだけだ。

「ライトが敵の攻撃を引きつけるタンク。

 僕がメインの近距離アタッカー。

 フィックスも近距離アタッカーで、必要に応じて回復を担当。

 ユリウスは距離を取りながら魔法でサポート。

 これで行くよ?」

「えぇ」

「はぁい」

「了解」

 ガイウスが大きく頷いた。

「行こう!」


 どうも、銅っす。

 ついにライトのチートが本人の口から語られたっすね。

 相手が初見の場合に限り、HP以外、つまりMP、物理攻撃力、物理防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、素早さがカンスト値まで上がるのは言ってた通りっすけど、隠し効果として毒や火傷などの定数ダメージも1に抑える効果があるっす。

 明記されたデメリットは経験値が入らないことだけっすけど、オルバーの時みたいに1度発動したら戦闘しなくても消費されるので、油断大敵っすね。

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