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公式チート・オンライン  作者: 紫 魔夜
第2章 チート解放編

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24/94

月の庭園

 ヴァルキュリアに敗北後、お互いに鍛え直すということで、レフトとは解散となった。鍛えると言っても、適当な場所でレベル上げをするくらいだ。

 それよりも、先にやっておきたいことがある。


【クエスト掲示板】


 今日解放された要素のひとつで、読んで字のごとくクエストを受ける為の掲示板だ。

 設置場所はここ、基礎領域(イェソド)の中央広場。女神の鎮座する噴水から少し離れた位置にある、紙の貼られた大きな立て札がそれだ。

 貼り紙はデザインだけであり、クエスト自体の表示はウィンドウで見るのだが。

「意外と多いな」

 ずらっと並ぶ20個のクエスト。下の1/5という表示を信じるなら、これが5ページ。つまり、最大で100個のクエストがあるということになる。


 指定されたNPCと会話をする【会話系(かいわけい)】。

 指定された物や人物を探し出す【探索系(たんさくけい)】。

 特定のアイテムを誰かに届ける【配達系(はいたつけい)】。

 特定の条件を満たして敵を倒す【討伐系(とうばつけい)】。


 様々なクエストが、色々なNPCから出されていた。

 初日にレフトが見つけてきた洋館のクエストも載っている。すでにレア武器はゲットしたので受ける必要はないが。

 対象のNPCを自力で探し出さずともクエストが受けられるのは、掲示板の良い点だ。全てが載っているわけではないのだろうが。

 他に面白そうなのは、闘技場(コロシアム)で受けられる武器スキルの習得クエスト。初期スキル以外の武器を使いたいと思ったら、これでスキルを習得出来るわけだ。

 武器だけでなく、魔法スキルの習得というのもある。キャラ作成時の魔法属性ーーレフトで言えば火属性ーー以外の属性を使うための救済処置だろう。魔法職以外でも受けられるが、魔法攻撃力が0の戦士(おれ)には関係ない。

 初級魔法習得というスキルではなく、魔法を単体として覚える方法もあるらしい。まあ、魔法攻撃力が0のーー以下略。

 受けるだけではなく、クエストの発注も出来るが、報酬に出来そうなものもないので諦める。闘技場(コロシアム)でゲットした首飾りをリオンにあげていなかったら使えたかもしれないが、喜んでくれていたし後悔はしていない。

 そんなことを考えながら漠然と眺めていると、最後のページに無視出来ないものがひとつ。


(よる)武器(ぶき)シリーズの強化(きょうか)素材(そざい)(よる)欠片(かけら)をプレゼント】


 名前からして【夜の斧(ナイトアクス)】が含まれていそうだし、依頼者も洋館のクエストと同じ【ウォーロック】という名前だ。

 しばらくは使う予定であるし、その強化素材というなら逃す手はない。

 討伐対象は【ナイトメイジ】という見たことのない名前のモンスターで、討伐数は1体。

 出現場所は……【コフの庭園】。

 地図(MAP)で場所を確認してみると、王国領域(マルクト)の端。まだ足を伸ばしたことがない場所だった。

「ナイトメイジ、か」

 (NIGHT)魔法使い(MAGE)だろうか。

 それとも、騎士(KNIGHT)魔法使い(MAGE)……語呂が悪い。言いやすくするなら、魔法騎士だろうか。

 クエストの報酬からすると前者のような気がするが、関連付けていると決まってるわけでもない。

 まあ、戦ってみればわかるだろう。

 俺は未知との遭遇に期待を寄せながら、庭園へ向かった。


 ◇


 月が印象的な庭園だ。

 空に浮かぶ月ではない。今は昼間だ。薄くてもぼんやりと見えたりする現実と違い、ゲームでは夜しか月は存在しない。

 存在するのは、至る所に置かれた月のオブジェ。

 そんな幻想的な庭園の中に、ターゲットがいた。

 いや、ターゲット()いたというべきか。

 灰色のローブで全身を覆う小柄なモンスターがうようよと徘徊し、それらを統括するように1体のモンスターが中央に鎮座している。

 全体的に黒を基調としたローブを纏った姿は、まさに夜の魔法使い。黒いとんがり帽子を被り、右手には木の杖。

 とても、レフトに似ている。というか、レフトが真似ているのだろう。

「ちょうどいいな」

 憂さ晴らしではないが、やる気が出たのは事実だ。

 チートは(・・・・)発動(・・)している(・・・・)

 ガラード達の時もそうだが、条件さえ満たせば自動(・・)で発動するチートらしい。


「じゃあ、試運転といきますか」

 斧を肩に担いで発動するのは、今のところ唯一の遠距離攻撃スキル【トマホーク】。直接攻撃よりも威力は下がるが、今は(・・)関係ない。

「喰らえ!」

 システムアシストに動かされるままに斧を全力投擲。

 チートのおかげか、そのスピードも普段より早い気がする。いや、気のせいか。

 ともかく。真っ直ぐに飛んで行った斧は、黒い魔法使いを一撃で粉砕した。経験値は表示されない。チートの仕様(・・)だ。

 もう少しでレベルは上がるのだが、仕方ない。


 その代わりのように、魔法使いがいた場所に黒い石が出現した。

 ちなみに、ドロップアイテムは近くにいる場合は、自動でストレージに入るようになっているが、遠くにいる場合は拾いに行く必要がある。

 ゆっくりと歩き出すと、その動きを阻止しようと周囲のモンスター達が魔法攻撃を仕掛けてくる。

 戦士は魔法防御力が低い職業だが、気にしない。

 火の玉が、水の雨が、風の刃が、岩の針が襲いかかってくるが、避ける必要はない。

「ふっ、効かんな」

 小さな魔法使い達の猛攻を受けながら、悠然と進む。

 圧倒的な強者ムーブは気分が良かった。

(よる)欠片(かけら)を入手しました】

 アイテムを拾うと、その名前が表示される。

 まさかのクエスト報酬と同じアイテムだ。詳細を確認することも出来るが、それは後にするとして。


「どうなってる?」


 クエスト達成のメッセージが出てこない。条件を満たしたことを告げるメッセージくらいはあってもいいと思うのだが。

「……こない」

 待てど暮らせど、メッセージは現れなかった。

 念のためにメニューの中から、【クエスト】を選び、【受領中(じゅりょうちゅう)のクエスト】を確認する。


┏━━━━━━━━━━━━━━┓

┃ 討伐対象(とうばつたいしょう)  ナイトメイジ ┃

┃ 討伐数(とうばつすう)    0/1   ┃

┃ 依頼主(いらいぬし)   ウォーロック ┃

┃ 報酬(ほうしゅう)    (よる)欠片(かけら)×1 ┃

┗━━━━━━━━━━━━━━┛


「あれ?」

 討伐数が【0/1】ということは0体を倒した――つまり、1体も倒していないということだ。

 チートのデメリット(・・・・・)として経験値が入らなくなるというのは書いてあったが、クエストの条件を満たせなくなるとは書いてなかった。

 だが、これが事実なら受け入れるしかあるまい。

「マッキュ」

「ほうほう」

「ウシュッ」

 わらわらと魔法攻撃を仕掛けてくる雑魚達も、俺をあざ笑うのか。ほとんど、ダメージを与えられない分際で。

「倒されたいか?」

 睨みつけてみても、モンスター達の動きは変わらない。


「なら、望み通りにしてやるよ」

 俺は斧を担いだ。

 発動するのは【トマホーク】。それを、1体ではなく、複数体を巻き込むような軌道で投げる。

 元々、軌道はイメージが反映されるのだ。

 無理のない範囲であれば、複数の敵を巻き込むことだって可能。ヒット数が増えると、威力は少しずつ下がっていくらしいが、それも(・・・)関係ない。

 たった一撃で、10数体のモンスターがポリゴンの欠片となり、経験値も残さずに散った。

 視界の端で通知が踊る。


【クエストのクリア条件が満たされました】


「は?」

 待ち望んでいたメッセージだ。

 だが、なぜこのタイミングなのか。

「まさか……」

 再びメニューを開き、【その他】から【モンスター図鑑(ずかん)】を開く。

 名前の通り、今まで戦ったモンスターが載っている図鑑だ。普段は五十音順に表示されているが、今は討伐順に並び替える。


┏━モンスター図鑑━━━━━━━┓

┃ 種族名       討伐数(とうばつすう)

┃               ┃

┃ ナイトメイジ     13 ▕

┃ ナイトマジシャン    1 ▕

┃ ヴァルキュリア     1 ▕

┗━━━━━━━━━━━━━━━┛


 表示が全てを物語っていた。

 最初に倒したのはナイトマジシャンという全く別のモンスターだったから、クエストはクリアにならなかった。

 チートの説明にクエストに関することがなかったのも、影響がないからだ。

 全て、解決した。あとは掲示板に戻って報酬を貰うだけ。

 ただ、今度からは倒したらすぐにモンスターの名前を確認しよう、と静かに決意した。


「いやぁ、凄まじいパワーやなぁ」


 拍手の音に合わせ、軽薄そうな声が響く。

 声のした方に顔を向けると、考古学者風の服を着た青年が手を叩いていた。近くに他のプレイヤーの姿は見えないので、俺に対してだろう。

「ナイトメイジを一撃で一掃なんてやるやないの」

 関西弁の学者は目を細め、ニマニマとした笑みを浮かべながら、じわじわと近づいてくる。

「それに、魔法をぎょーさん打たれてもビクともしないタフ(・・)さもある」

 見られていたのか。

 誰も見てないと思ってたのに。

 ちょっと、恥ずかしい。


防御系(・・・)のチートやろ?」


 公式PVに出てきた体力(MAX )(HIT)タン( POINT)のようなものが防御系だろうか。

「……まあ、そんなところだな」

 厳密には違う(・・)が、細かく説明する義理はない。

「おっと、そない怖い顔しなさんなや。取って食おうなんて思うとらん。ただのーー」

 青年はおどけたように片手を上げ、もう片方の手を懐へ入れる。そこからゆっくりと取り出したのは、夜色(・・)をした短刀。

「同じ穴の狢や」

「夜の欠片を集めてるって訳か」

「ご明察」

 レフトの話から、あの洋館のクエストを受けているプレイヤーは他にもいると思っていたが、こうも早く出会すのは予想外だった。


「自分はニコラいいます。チートの効果は、まあ、MPの自動回復みたいなもんです」

「俺はライトだ。ということは、魔法職なのか?」

「残念ながら、盗賊(THIEF)ですわ」

 男ーーニコラはへらへらとした笑みを浮かべる。レフトも大概笑っているイメージだが、勝気なアイツに比べると、こちらは胡散臭い笑みだった。

 糸目や関西弁のせいもある気がするのは、偏見か。

「そこで、あんさんの力を見込んで頼みがあるんやけど」

「協力しようってか?」

「ーーご明察。話が早くて助かりますわ」

 ニコラの目が薄らと開かれる。

「ナイトメイジからのドロップ率、めちゃ低いやろ?」

「確かに低いな。俺もそう思う」

 ナイトメイジからドロップするということを知らなかったが、上位種のナイトマジシャンからドロップするのだからおかしなことではない。

 13体倒して1つも出ていないから、低いのも事実だろう。

「自分そんなに強くないもんで、1体倒すだけでもやっとなんですわ」

 初対面からぐいぐい来る感じは少し苦手だが、悪い提案ではない。協力した方が狩りやすいのはメリットだ。ドロップしたとしても山分けになるため、より多く倒さなければならないデメリットもあるが。

「あんさんには必要ないかもしれへんが、よければ手伝ってもらえるやろか?」

 ここから先はチート(・・・)にも頼れない。

「いいだろう。……俺にも得はあるからな」

「よっしゃ、交渉成立や!」

 ニコラはにこやかに手を差し出してくるが、その手は取らなかった。

 苦手なタイプだからではない。断じてない。


 こんにちは、お久しぶりの銀です。

 今日はチートが出てきていないので、武器ガイドとして、私が解説を担当させていただきますね。

 初日にライトが挑んだ【星月夜の洋館に潜む影】というクエスト。その中で得たのが、【夜】の武器である夜の斧(ナイトアクス)でした。

 このクエストで入手出来る武器のシリーズは4つあり、空にきらめく無数の【星】、月の満ち欠けのように変幻自在な【月】、長く使っていけるように強化出来る【夜】、不意に現れるレアな一筋の【流星】というコンセプトになっています。

 ですから、夜の武器シリーズだけ、強化素材が手に入るクエストが用意されているわけです。

 ちなみに、レフトが手に入れたのは月の杖(ムーンスタッフ)で、【月】の武器シリーズとなっています。

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