最終コーナーですわ
皆様ご機嫌よう、アンジェリーナですわ。
カチガラス達の橋を渡り、対岸の「若草の草原」に参りましたの。
………何処までも果てなく広がる緑は海原の様、吹き抜ける風の強さによって、ざっさぁー、さわさわ……と気まぐれに形を変えるのは、見ていて赴き深いものですわ。
「これはこれは、女神様、お待ちしておりました。ご機嫌麗しゅうございます」
地上の青空の様な澄んだ笑顔で「彦星」様がお出迎えにいらしておられました。
そのお召し物は涼しげな麻の上衣と下衣、良くお似合いですわ。流石は愛する旦那様の為に、織姫様が御作りになられた一品、どのような物がお似合いか、完璧でこざいますね。
彦星様のご挨拶をお受けになられまして、我が君様はおうように頷きなられます。
「織姫も、久しぶりだね。どうしてた?君の事だから、仕事ばかりなのだろう?」
続いて穏やかな笑みのまま、織姫様にお声をお掛けになられます。
久しぶりって?何時から織姫様は表にお出になられなかったのでしょうか……
ワーカーホリックでごさいますからね。そういえば、随分前にお聞きしたところ、
「一にデザイン、二にデザイン、三四は縫製、五に彦様!」
織姫様らしい御言葉でしたので覚えておりましたの。さぁ、私もご挨拶致しましょう。
「彦星様、今日は突然の申し出をお受け頂きまして、ありがとうございます」
「気にしないで、アンジェリーナもようこそ。さあ、あちらに用意をしているから、参ろうか」
自ら先にたちまして、草原の中程に張られている、白い天幕の処へと誘われます。
さわさわとと涼やかに吹き渡る緑の海原を歩きつつ私は、これからの計画を練りに練っておりました。
――――薄花色の空は何処までも広がる。
ただそれだけ、何にもない。もちろん、何にも出て来ない。ただあるのはサラサラと流れる天ノ川。
「やっぱり、何にも出て来ないなぁ、当たり前だけど、あ~あ眠たくなっちゃった」
誰に会うこともないので、大きな独り言をもらしても、恥ずかしくない。
「浮遊」、「風の移動」の術を身に纏ったアリエノールが、大あくびと共に天の川の水面をうつらうつらと眠りながら、遡っていた。
……目的地迄はもう少し。
―――「両手に花とはこのですね」
天幕の処へとたどり着き、両の手でお二方をエスコートなされて中へといざなます。
ほぉー!流石は天の「結婚したいNo.1」の地位の御方ですね。しかしこの御方様には織姫様がいらっしゃいますからね。
そういえば!思いだしましたわ、兄神様「海神」様の事を……
うーんあの御方は、まぁゼリー以外にも、中々大変な御方でございます。
大変美しい奥方様もいらっしゃいますのにねぇ、そういえば最近、こられてませんわね。
「乙姫」様、このお方、元はこちらのお方でしたのよ。
竜宮座のお姫様でしたの。我が君様とも仲がおよろしくて、兄神様との一件があった後でも、乙姫様とは御交流されてます。
ここしばらく此方にこられませんが、何かあられたのかしら。
私達は織姫様が作られた、キルトの上に落ち着きます。
私はクロスを広げて、用意してきたお料理や、お菓子を並べますと、彦星様もご自身の工房で御作りにならた、素敵なスィーツをお出しになられました。
うふふ!楽しいお茶会の始まりです。そしてここ迄事が運べれば後は大丈夫ですわね。
よほどのハプニングさえなければ、きっと上手く行くと思いますの。
さぁ、最終コーナーに差し掛かって参りましてよ!




