お宅拝見致しましたの
皆様御機嫌よう、 アンジェリーナですわ。
私達今楽しくバザールと呼ばれる市場を散策しておりますの。 見るだけなのが誠に残念ですわぁ。
人間には化けておりますけど、中身は「神」なので口にするもの 身に付けるものは人界の物なら「潔斎」されてなければなりませんの、
なのでウィンドウショッピングですわね。 ひたすら歩く、見る、それだけ、でも賑やかで活気溢れる人々を見るのは楽しいものですわ。
そう、私以前「守護天使」として地上に降りてましたでしょう?その時の食事はどうしていたかというと 簡単に言えば御守りしてる方の「気力」というものをエネルギーに使わして頂くのです。
我が愛し子ちゃんはそれは清浄な気をお持ちでしたから過ごしやすかったですわね。
「この外れだとカチガラス衆から教えていただいたのですが… あら?あの外れのポツーンッがそうではありませんかしら?」
「これは期待が持てそうですわね」
お隣をお歩きになられてる我が君様はにっこりと黒い微笑みを浮かべられておられますわ。 かくゆう私も、フフフ、フフフ、フフフ…
―――――この夏は何処に行っても誰もが「暑い」と挨拶代わり一言が出てくる酷夏………
湿気を持つどよりとした重い暑さの中、 その男は外に出るときは頭から目深に布を被り、 決してその顔を人目に曝さぬよう暮らしていた。
街外れにポツンと建つ粗末な小屋、
地元の子供達からは「お化け屋敷」と呼ばれるあばら屋そこに住むこの男の事を子供達は無邪気にこう呼ぶ
「吸血鬼のオッサン」
そして正体を知ってる大人達はその男の事を「路傍の虫」として接する。 これが最近出来た大人の決まり事……
(何故、何故、誰も、誰も、誰も)
粗末な室内の中にはテーブルすら無く、有るのはボロが掛かった寝台と、ギシギシ音をたてる木の椅子が1つあるのみ その椅子腰掛け「元勇者」は頭を抱えていた。
…………ジワジワジワ 外の木立から夏虫の唄がガラスが割れ、枠だけになった窓から流れてくる。
ため息と共に彼は椅子にギシギシと音をたてさせながら立ち上がる。
寝台の下から ゾゾゾッと音をたてて小さいが頑丈な作りの木製の箱を引きずり出した。
バチンッ、バチンッと留め金を外すと蓋を開ける そこにはこの場に不似合いな黄金色の輝きが 金貨が縁までぎっしりと詰まっていた…
「何故?金を奴等は受け取らないんた!何故だ!俺は勇者だったんだそ!奴等を今まで守ってきてやったのに!俺は!俺は!「あ奴等」に騙されたんだ!おとしいれられたんだ!俺は!被害者だ!」
―――――ふむ、カチガラス衆の情報通り中々のお育ち具合になっておりますわね、
フフフ、私達今一応「隠密」の術を掛けて不可視となってますのよ。そして主従揃って「元勇者」の突撃お宅拝見してますの。
「我が君様?お気づきになられまして?」
「ええ この者「虫けらの呪い」に掛けられてますわね。 ホホホ 術者は分かりますが、 やはりかなり迷惑掛けられてたのでしょうねぇ」
「はい、あの方達はこの者のお守りというか… 仮にも「勇者」でしたけど 闘う事しか脳がありませんでしたから、誰かがお側でトラブル処理しない事には周りがお困りになられる程に………まぁあの方々はボランティア精神にのっとりメンバーで要らしてたのでしょうね 」
フフフ、カチガラス衆の細かい視察による情報によると、
彼が「勇者」として立ち寄った街や村で買い物をしようとすると、
人々は無言で粗末な食べ物を投げ与えるそうですわ。
彼がお金を払おうとしても投げて返され 口汚く罵っても全て無視される始末、
み、見事ですわ!アリエノール様、フ、フフフ、フフフ
「いい落ちぶれ具合だわ でもアンジェリーナ?「虫けらの呪い」ですが一応「五分の魂」が有りますからね かなりの努力が要りますが這い上がれる筈ですよ この「阿呆」はどうして現状維持をしてるのでしょう そういう性癖なのしら?」
満足気に眺めながら我が君様は問うて来られます。
「まぁ少しの間で御座いましたが、お側で拝見しておりまして私が思うにこの御仁位でしたわ。 引退して自由なりたいっての思われないお方は…」
「まぁ、そうなの!ならば惜しいこと致しましたわね 忘れず「お尻ペンペン」付けとくのでしたわ!
まともに育ってたのなら「引退」等させない「魔物と1人で永久不滅に闘う」スキルを与えて満足させてあげましたのに…、闘いに全ての人生を捧げる事の無いようにと、情けをかけたシステムが裏目に出てしまったのですね」
ふむ そういうお考え方もありましたのね。
でもそれはそれで「呪われた運命」の様な気が致しますが……
……………「神の御子」として「祝福」と「お尻ペンペン」を与えられ、幼い時から「闘うべく」お育ちになられた他の皆様はこう言っておられましたわ
―――――「普通に暮らしたいなぁ…何時も静かに笑って 働いて 飯食って 誰にもほめられず 苦にもされず そういうモノに私はなりたい…」
何だか胸が詰まりましたの、 そして少し考えてさせられてしまいます。
「期限」があるとはいえ それまでは己の全てを魔物との闘いに費やし、生き抜いて行く…命を掛けて
その魔物発生の原因が1つのゼリーという事実をお知りになったら彼等達はどう思い、どうなるのか…
これは黒歴史です!決して表に出せませんわ!トップシークレットでございましてよ!




