刹那の瞬間
佐久間と山川が交代で張り込みを続けることニ週間経過した。
ニ週間の張り込みでわかったことがある。大島可奈子は毎日十五時に起床。
十五時から十六時には、店の買い出しに出かける。買い出しが終わると、同じ喫茶店で読書をしながら、時間を潰して十八時過ぎにタクシーで店に出社する。
ニ週間のなかで、毎週月曜日は店を休んでオフを取ることがわかった。
この日は、決まって普段とは違うオシャレをして男とデートを楽しんだ。夕方から深夜までは、ホテルで過ごす。
ただ、毎週月曜日のデートの相手は違っていた。
「どちらが本命なんでしょうか?」
「どちらもお店の客とも考えられるね。来週の月曜日、もう一度尾行して確認してみてからでも遅くないさ」
一週間後の六月十四日、月曜日。
「大島可奈子が、アパートでました」
「よし、後を付けよう。今日はどちらの男と会うのか見極めようか?」
尾行を開始し、二十分経過。
街の繁華街を抜けて、毎週決まって男と待ち合わせしている場所へ到着。
「あれ?また違う男ですね。結局、毎週違う男とデートするんですね。でも、今日は地味ですね。ホテルには行かないんですかね?」
「どうかな?後をつけてみれば、きっとわかるさ。行こう」
大島可奈子と本日の男は、ホテルには行かず居酒屋に入った。
佐久間たちも、居酒屋に入り、少し離れた所に座って、様子を伺った。
大島可奈子は、店でもデートでも見せない真面目な表情をしている。
「何かいつもと表情が違いますね。あの男と何か相談でもしているんでしょうか?」
「ここからでは、聴こえないな。もう少し近くで聴きたいな。移動しようか」
佐久間たちが、席を立とうとした時・・・
「お前の馬鹿話に付き合ってられるか!儂を誰だと思っている!強請るなら相手が違うわ。このうつけ者め!」
「ちょっ、ちょっと待って!疋田さん!」
一緒にいた男が立ち上がり、突然、佐久間たちの方へ向かって歩いてきた。
そしてそのまま、店を出て行った。
意表を突かれた佐久間たちは、咄嗟に顔を下にしてやり過ごし、男が外に出るのに目を奪われた。
その時だった。
大島可奈子は、突然意識を無くし、そのまま動かなくなった。
「ーーーー!しまった!」
佐久間は大声を上げた。
「警察だ!すぐに救急車を!」
通報を受けた救急車が到着した。救急隊員は大島可奈子の状況を確認し顔を横に振った。
「警察の方ですか?警察病院の方へ搬送しますか?」
「・・・いえ。科捜研の方へ運んでください。連絡を入れておきます。科捜研の氏原まで、運んでください!」
(大島可奈子、済まなかった・・・一瞬、目を離した隙に、お前の命を守ってやれなかった。犯人は私が、いや私と氏原で取ってやる。もう少しだけ待っていてくれ!)
「・・・山さん!」
「・・・わかっております。こちらの現場検証はお任せください。応援もすぐに駆け付けます。警部は、科捜研へ!」
佐久間は後悔の念に駆られたが、今は一刻も早く、科捜研氏原の元へ急ぐことしか出来なかった。