再捜査
被害者を科捜研に委ねた佐久間たちは、一旦捜査一課に戻ることにした。
「確かに、佐久間警部が推薦するだけのことはあると思います。現場検証で、ああ言い切れるとは、感服しますな」
「奴が言い切る時は、大抵毒薬の見当が付いている。氏原が言う通り、胃の中で何か見つかると思うよ」
捜査一課に戻った佐久間は、一課長に捜査状況を中間報告した。
「戻ったか。実は交通捜査係から、気になる情報がつい先程入ったよ」
「気になる情報ですか?」
「三月二十一日に、東高円寺駅近くで発生した交通事故は知っているな?」
「はい。交通捜査係が単独事故処理をしたと部下から報告受けています」
「交通捜査係が念のため、保険金の流れを保険会社に確認してみたら、受け取りが身内でないんだ」
「誰が保険金を受け取るんですか?」
「同地域で杏奈というスナックを経営するママこと、大島可奈子が受け取り人だ」
「確かに妙ですね。保険会社の契約は被害者自身で行い、受け取りをママにしているんでしょうか?」
「それが、大島可奈子自ら、被害者の三船敏朗に保険金を掛けたらしい。保険会社も不審に思い、保留しているそうだ」
「保険金殺人なら、事故車のどこかに証拠が隠れているかもしれません。まだ、所轄署駐車場に保管されていると思いますから、連絡を入れ、鑑識官を派遣しましょう」
佐久間は、その場で所轄署に連絡を入れ事故車の厳重保管を依頼し、一般車を保管駐車場から遠ざける指示をした。
同時に、捜査一課内の鑑識官五名を、直ちに再捜査検証に派遣した。
「鑑識官に告ぐ。被害者の三船敏朗は痴呆症の疑いがあったはずだ。単なる持病による事故なのか、それ以外の証拠が他にあるのか疑って調べてくれ。もし、持病がなく、痴呆症に見せかける為の薬などの証拠があるのか、現場検証から何としてもヒントだけでも掴んでくれ」
「薬物反応が出ると想定して、再度必要な機材を投入して臨みます」
「課長。無いとは思いますが交通事故と今回の事件について、繋がりがあった場合は、特別捜査本部を設置したいのですが」
「準備しておこう」
「それでは、科捜研に行って結果を聞いてきます」