関係者集結
科捜研で佐久間から、連絡があった捜査本部長の藤田、山川、高田紀子の義兄である高田勝彦、情報提供者である井上遙は、科捜研の特別室に集まった。
時刻は、二十三時を回っていた。
佐久間は、関係者に対して挨拶をする。
「みなさん、初顔合わせとなる方もおられます。私から紹介いたします。どうか、お静かに。そして取り乱さぬようにお願いいたします」
佐久間の横には、科捜研リーダー氏原も並び、二人で頭を下げる。本部長の藤田も、ただならぬ空気を感じ黙った。
「まず、警視庁捜査一課、藤田本部長」
藤田は、黙って頭を下げ、挨拶した。
「次に、同じく捜査一課、山川刑事」
「お久しぶり、おじさん?」
「山川です。よろしく」
「次に、高田紀子の義兄、高田清氏の兄である高田勝彦さん」
「ーーーー!」
「最後に、国本香織殺害の重要な情報提供者である井上遙さん」
「ーーーーーー!」
一同はざわついた。それもそのはず。捜査する側、被害者、情報提供者がその場に居合わす機会などないからだ。
「佐久間警部、どういうことかね?君は守秘義務を知らんのかね?」
藤田は、立ちながら机を叩いた。
「落ち着きたまえ、藤田本部長!」
「ーーーーーー!」
「お疲れ様です。疋田県会議員」
捜査一課藤田は、うろたえた。
「何故、あなたがここに?」
「前に君に言わなかったかね?捜査情報を知らせよと。君は守秘義務の前に私との約束を果たしたまえ!」
「・・・はっ、申し訳ありません」
「本部長、今回の事件解決は民間の方の協力なくしては、終わらないでしょう。今回の提案で失敗した場合、私と氏原は辞職する覚悟でこの場に臨んでいます」
「・・・聴こう。話したまえ」
「この一連の事件、高田清と国本香織の殺害は高田紀子が実行犯です。証拠が揃いました。勝彦さんには申し上げにくいですがこのままお聴きください」
「・・・覚悟してました。伺います」
「次に井上遙さん、あなたと高田紀子が取り合った恋人は、この男ではないですか?」
佐久間は、内ポケットから一枚の写真を取り出し、井上遙の前に提示した。
「・・・・・はい。間違いありません」
「佐久間警部、この男は誰だね?」
「三田村一成、科警研勤務、そして三船敏朗、佐藤健太を殺害した大島可奈子を裏で操り殺し、高田紀子を操る真犯人、つまり本ボシです」
「ーーーーーー!何だと!」
「本当かね?何故わかった?」
「それをお話しするには、井上遙さんが勇気を出して情報提供してくれたからです。そして、高田勝彦さんも現場検証時農薬成分が検出したことを高田紀子に私の依頼通り黙っていてくれたからです。心から感謝いたします」
佐久間は、これまでのことをホワイトボードに書き出した。
「なるほどな。それで、国本香織が殺害されたことに辿りつき、高田紀子の罪が確定、三田村一成までわかったという訳だ」
県会議員疋田は、佐久間に尋ねた。
「佐久間警部、君はこれからこの答えをどう進展させる?二人を逮捕して、終わりにするのかね?」
「高田紀子を逮捕しても、三田村一成は証拠が揃わない。今のままでは、逃げられるでしょう。そこで、囮捜査をしてみたいと思います」
「ーーーーーー!」
「科警研に勤務する三田村一成に嘘の捜査情報を流すんです。これまでの捜査記録について、中野区でおこった毒殺の検証記録や大島可奈子を何者かが操り殺したこと、杉並区においては、高田紀子が農薬とスズランを使用したこと、高田紀子に恨みの持つ者が証言し真犯人が浮上したことをです。」
「正気かね?これでは、三田村一成が勘付くのでは?」
「だから、良いんです。三田村一成しか知らない事実です。捜査一課が、毒殺を少しずつ解明して、高田紀子まで辿りついた。情報提供者も出た。高田紀子を逮捕すれば、真犯人まで行き着く。しかし、これを科捜研と折り合いが悪く毒殺成分にケチがついて科警研に交代を希望する。この時点で三田村一成は、必ず慌てるはずだ。早く二人を消さなければとね」
山川が挙手して、佐久間に質問した。
「あの、警部。この通りだと高田紀子、井上遙・・さんの命が危ないのでは?」
県会議員疋田も同感の表情をした。
佐久間は、笑った。
「もちろん。今のままではね。三田村の行動をコントロール、おびき出すんだ。今から十日後に高田紀子を逮捕予定とすれば、まず、三田村は自分を裏切った井上遙さんを消そうと画策を必ずするでしょう。だから、これからまず高田紀子の身柄を拘束します。そして、明日から十日間、井上遙さんには裏で護衛を二十四時間付けます。また、科警研の三田村一成にも監視に複数員配置。すると、三田村一成から井上遙に必ず接触。ここで井上遙さんから、居酒屋で会おうと提案してもらいます。居酒屋で会った時、わざと席を立ってください。そこで三田村は、ビールに毒を盛るでしょう。大島可奈子と同じようにね」
「何故、そんなことがわかるんですか?」
「人間、追い詰められると、パターン化をするものです。面白いくらい当たると思いますよ。人前で消すには、三田村には毒殺しかない。しかも、証拠が残らないようにするには、あなたが席を立った時しか出来ないからですよ。これが、違う場所、例えば公園とかだと予測が出来ない。だから、必ず居酒屋にお引き出してください」