通り魔事件
月の見えないある夜のこと。
閑静な住宅街で通り魔事件が発生した。
事件発生2時間後、偶然にも犯行現場を発見した佐藤はパニックになるのをこらえながら警察に通報。
そして、すぐさま近所の警官が二人駆けつけた。
「おまわりさんこっちです!」
「これはひどい……」
彼らは道中で倒れる死体をいろいろと調べ始めた。
そして、それがひと段落すると、
「通報ありがとうございました。あとはこちらで処理しますので帰っていただいて構いませんよ」
と妙に落ち着いた声で言った。
佐藤は、一秒でも早くそこから立ち退きたく思っていたので、よろしくおねがいしますと頭を下げると、帰路についた。
しかし、現場から離れるにつれて、先ほどの事件が気になってきた。
誰が犯人で、何故あんなことをしたのか。
佐藤はくるりと踵を返し、犯行現場に戻った。
そして、角から死体があった場所を覗くと、二人の警官が死体を持ち上げ運んでいく。
佐藤はそれに疑問を思い後をつけた。
彼らは裏路地を少し歩き、山の中へ入っていく。
ついていくか否か、佐藤は悩んだが、ここまで来て引き返すわけにもいかない。
彼は意を決し、山へ踏み込んだ。
そして、彼は驚愕する。
警察官の二人は地に這いつくばり、ぺちゃぺちゃと音を立てながら通り魔事件の被害者を喰らっていたのだ。
「警官になったのは正解だったな。こういう事件はいくらでも起きるから手を汚すことなく人を喰える」
「あぁ。俺たちみたいな屍食鬼には最適の職業だ」
「そういえば、あの第一発見者も美味そうだったな」
そう言った警察官と目があった気がした。