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誰だよそれは

 客観的に言って、俺、木戸雄介の異世界トリップにいたる流れは親切丁寧だった。

 うん。間違いないね。


 いやね? 普通さ、異世界にトリップするような場合って、いきなりわけもわからずトリップするのが普通じゃん。で、大体草原とか森とかになんの説明もなく投げ出されるわけよ。で、大体、しばらくすると美少女キャラとかに助けられて、そんで世界観の説明とかされるじゃん。いやフィクションの話だけどね。


 でさ、目的もなんだかわからないんだけど、旅とかしてるうちに魔王とかと戦う羽目になる。



 でもそういうアニメとか見るたびに、俺だったらイヤだな。と思ってたわけだよ。だってさ、美少女に会う前に死にかねないでしょ。


 その点、実際遭遇した俺の場合は良かったよ。ちゃんと案内係の人がきてね。これもクールな感じの美少女でね。前髪パッツンの黒髪でね。

コレコレこういうわけなので、異世界に行きませんか? 異世界にいったらできればコレをこうしてほしいんですよ。え? どうしてアナタなのか、って? それはこうだからですよ。そうそう。異世界にトリップすると、こんな能力が目覚めることになってるんですよ。


 とってもわかりやすい説明だったよ。細かいところの説明は今度するけどさ。

 大事なとこだけ説明すると、まあ俺が異世界トリップを決意した大きな理由は3つある。


 一つ目、トリップする人が俺だけじゃない。1万人もいる。いや知らない人だけど、現地で会えるでしょ多分。そんだけいりゃ、俺一人が背負う責任も危険度も下がる。究極トリップするだけしておいて、他の人に仕事してもらって、俺はノンビリしててもいいわけだ。


 二つ目、このトリップにおける目標を達成した人に与えられる特典が最高だった。願いがなんでもかなう。究極だよ究極。


 三つ目、俺に目覚める予定の能力、つまり異世界トリッパー1万人が覚醒する能力。これがね。なんとも中二な心を刺激した。

 歴史上とか伝説の英雄だの偉人だのの力が付与されるんだってさ。

 それは俺がそういう人物の生まれ変わりで、英雄の魂を持ってるからなんだってさ。

 え? それってつまり人間ってことだよね? いくら英雄でもドラゴンとか倒せるわけ? と、思ったそこのあなた!

 

 これも上手いこと出来ててね。英雄ってのは人々の憧れの存在じゃん。信仰みたいなもんじゃん。神様って信仰で力増すって説あるけど、それホントなんだって。だから人々が思うイメージが魂をブーストしてくれて、すげー強くなるんだって。


 たとえばさ、関羽っているじゃん。三国志のな。一人で千人と戦える武将でした。って普通に書いてあるけど、実際そんなわけねーじゃん。

でも『そうだった』って信じてる人が沢山いたら、その数とかイメージの強さに応じて、そうなるんだって。三国志とかのアクションゲームが流行ったし、最近だとすげー強いんじゃないの。


ってことはさ、そんなのが1万人もいたらヤバイじゃん。めっちゃ強いじゃん。チートい1万人だぜ1万人。無敵じゃん。っつーか、俺の前世がそんな有名な人ってのも衝撃的だし、誰なのか知りたかったし。


そんなわけで、俺は異世界にトリップしたね。

 

 ああ忘れてた。テンプレだけど目標は魔王を倒すことだよ。


 あわよくば俺が魔王を倒すよ。んで願い叶えてヒャッハーするよ。でもやばそうだったら隠居してスローライフを送るなり諸国を適当に漫遊するよ。英雄の力あれば楽勝でしょ。誰かやってくれるよ多分。って思ったのだよ。



 と、こんな感じで親切丁寧、スーパーイージーチートモード、ローリスクハイリターン!!! これで乗らないわけないでしょ。大体そうでなくても異世界行ってみたいのに。男子高校生ならみんなそう思ってるよね?


そうこのイージーモード、なんでそうなったのか、 理由はなにか、ってのはおいおい説明するよ。


 さっきから説明はしょりすぎだろ、って? ああそうだろうね。


 でもさ、今、俺、それどころじゃないんだよ。

 実際トリップしてみたらさ、


 意外と。


 ヤバイ状況になっちまったんだよ。だから現実逃避してんだよ


 ヤベェよこれ。下手したら死ぬよ。


 「木戸さん!! そっちの3人はお任せします!!」


 すぐ近くで、ショートカットが似合う礼儀正しいナイスキャラの女の子がレイピア抜いて戦ってる。この人もトリッパーね。こっちきてすぐ出会ったんだけど。


 「……3人? 俺が、やんの?」


 「お願いします!」


 この華奢で可愛らしい子はエリカちゃんっていうんだよ。美少女だよ。しかも強いんだよ。さっき聞いたら、この人はダルタニアンっていう人の生まれ変わりなんだって。映画でみたことあるよ。三銃士な。いきなりのビッグネーム。素晴らしい剣捌き。あっちで4人と戦ってるよ。

 


 「……うーん。エリカちゃんさぁ、こっちの3人も倒してくれていいんだよ?」


 「すいません! さすがに! 全員は無理です!」


 剣をキンキン打ち合いながら答えてる。やっぱすげぇな。やっぱそうかぁ。相手の人も誰だか知らないけど英雄だもんね。


 「でもさぁ」


 「早く! このままだとやられちゃいます!」


 そういわれてもなぁ。ちなみに俺の前には3人の男が刃物構えてるよ。多分戦国時代とかの武士なんじゃないのかな。前世。俺が英雄とやらの生まれ変わりなのわかってるから警戒して様子見てる。慎重だなぁ。

 そうなんだよ。俺、大事なとこに思いが及んでなかったんだよね。

 魔王を倒したトリッパーはどんな願いも叶えられます。それつまりさぁ、倒してない人はダメってことだよね。


 ってことはさぁ、是が非でも叶えたい願いがある人からしたら、他のトリッパーは全部ライバルだよね。


 いないほうがいいよ派の人もいるよね。


 他のトリッパー、死ねばいいのに。って思う怖い人もいるよね。


 あ! そうか! 殺せばいいんじゃね!?


 って人も、いるよね。



 この有様だよ!! 人間は醜いよ!! 俺って実はイイヤツだったんだな!! 性善説論者かよ俺!!!! やべぇよ!!

 しかもこいつら、この世界の旅人らしき人たちを襲ってたのよ最初。それをエリカちゃんが止めに入って、そしたらこうなったんだよ。ちなみに旅人さんたちならとっくに逃げたよ。

 

 で、なによエリカちゃん。俺に戦えって?


 俺さ、あんまり結構歴史小説とかが好きで、英雄、とかだったら大体知ってると思ってた。戦国時代とか三国志とかその辺にはかなり自信がある。だから速攻で自分の前世がわかると思っていた。そして無双できると思っていた。思って、いたんだ。


トリップするときに、案内係の人が、俺の前世、つまりチート能力のもとの英雄の名前だけ教えてくれた。


あ、木戸さん。そういえば、あなたはウィリアム・H・ボニーの生まれ変わりです!


え? 誰?


では、いってらっしゃい!!

だってさ。おーいぇー。さっぱりわからねぇぜ。


 「……にらみあっててもラチがあかねぇ。こっちは3人。吉岡流の使い手だ! びびることはねぇ!! 殺っちまえ!!」

 

 吉岡流ってあれだろ。バスケ漫画を代表作とする人の剣豪漫画で読んだことあるよ。有名人じゃん。強いじゃん。


 うわぁ。だんだん間合い詰めてきてるよ。


 どうすんだよ。どうすんだよコレ。なんたらボニーとか言う俺の前世の人は何者で何が出来る人なんだよ。全然腕力とか上がってる気がしないんだけど。さっき襲われる前に腕立て伏せしたら12回しか出来なかったんだけど。


 ボニーさん、名前的に牧場経営者とかじゃねぇの。外れクジじゃねぇの!? あれか。イギリスの片田舎の食料事情改善して地元では英雄として語り継がれてる… みたいな感じのヤツじゃねぇの。ネットで調べようにも電波ねぇよ。


 「勝負だ!!!」


 切りかかってきた。どうする俺。



現在の状態


木戸雄介/ウィリアムHボニー(レベル1)

得意スキル:不明


当面の目標

生存

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