ワカラナイ
「信じてないね。…仕方ない、ちょっとだけだよ。」
呑気な口調に戻った男は、やれやれという感じで手袋を嵌めた左腕を伸ばすと急に真剣な顔つきになる。
何をしているのか、じっと見ているとふいに伸ばした腕の手のひらから野球ボール大の緑色の光のかたまりが現れる。
(手品?)
「手品じゃこんなこと出来ないことは分かるよね。」
(………、はい、ソウデスネ。)
「あぁ、あと君の遭遇した飛行機事故、あれ、魔法が関わる事は話したね。」
男の口調が今度は神妙なものになる。
「実は、あの魔法自体が人間のものではなく、自然災害みたいなものでその影響をうけた君は 魔法の源である魔力を体内に取り込み、ある臓器で魔力を生産する過程を作り上げてしまったようなんだ。」
男はそこで一度言葉を止める。
「魔力は一般的な人間にとっては毒だ、魔力を魔法として体外に排出できなければ人は奇形種となりじんがいの存在と化してしまう。」
…つまり。
「ところが、君は魔力を排出する方法を持ち合わせていない。我々は我々の勝手な判断で君の肢体を改造した。私もそれに関わった。君は我々を恨む権利がある。」
そう言うと男は一枚の写真を取り出し、神崎優斗に見せた。
写っていたのは自分の知らない自分だった。
感覚のない腕と脚は自分のものではなくどこぞの有名マンガに出てくるような機械が取り付けられていた。
(なにがなんだか ワカラナイ。)
手と足の感覚はどんなに感じたくとも感じられないのに、感じたくもない頬を流れる涙の感覚はイヤというほど感じられた。
「すまない。」
謝った男の言葉は酷く白々しいものに感じられた。




