振り下ろされた剣の行方
レヴィンは目を瞑り一直線に剣を振り下ろした!!
アッシュとの出来事が走馬灯の如く鮮明に蘇ってくる。
ザンッッッ!!
アッシュから受け継がれた剣は驚く程手に馴染み、振った後に確かな切れ味を感じた。
だが、それはアッシュでは無く微かに軌道をずらした為、野原の草花諸共地に亀裂が走った。
「・・・・!!」
膝から崩れ、手にしていた剣をスルリと手放し、レヴィンは拳で亀裂の走った地を叩きつけた!!
「うあああ!?」
その間にアッシュは、瞬く間にトランス状態になっていく。
「!!!」
油断していたインフェル達はアッシュの変貌に一歩出遅れた!
一瞬の間にアッシュは、獣の様に目を光らせ涎を垂れ流し地に響く唸り声をあげた。
「チッ!!出来なかったか・・・」
「しまった!!」
「仕方ないわ。私達で相手しましょう!!」
人からかけ離れ、獣と化したアッシュにレヴィンは歯を食い縛った。
インフェル、ディラ、アイリーンが膝をつくレヴィンの前に立つ。
「下がっていろ、我々が始末する」
「!!」
そう言うや否や3人はアッシュに向かって行く!
「大地よ!!唸れ!!」
ディラが手を組むと野原がボコボコ盛り上がって行き、アッシュに地の底から土の塊が一挙に襲い掛かっていく!
振り払えども振り払えども、凶器と化した土塊は視界や動きすらも奪って行く。
「少し痛いわよ?」
続いてアイリーンが腰に巻き付けていた荊の鞭を取り出し、隆々と風を切りアッシュの肉に食い込んで血が噴き出した!
悶絶し、絶叫するアッシュ。
もがけばもがく程2人の攻撃は身に痛みを走らせた。
「アッシュさん・・・」
身体中からポタポタと血が滴り落ちて行くのを見て眉を顰めた。
だが、次の瞬間4人はアッシュの力に圧倒される事となる。
がんじからめにされつつ、血が噴き出しながらもブチブチと鞭を毟り、土塊に拳を突き抜かせ、手刀を一振りした。
それはまるで刃が飛んでくるかの様に野原の木々や花諸共薙ぎ倒し3人に一直線に真っ直ぐ向かって来る!
「!!」
「嘘ッ!?動けるの!?」
3人は散り散りに避けると、巨木に当たりそれすらも薙ぎ倒した。
「ふははははは!!」
元が実力者だったアッシュはインフェル達の予想を上回る力を手にしていた。
「これは早めに決めた方が良いな」
インフェルは、先手を打つべく炎を手に纏わせ球を作り、両方の掌を上にし、浮かばせた。
ディラとアイリーンはインフェルの後ろに回った。
陽が沈みかけ、辺りが暗くなり始め、インフェルの炎の球が際立ち辺りを照らす。
体を引き、炎の球をアッシュに連続で投げて行くと、それを見切り避けていくと、辺りに火が回りメラメラと草木が燃えて広がって行く。
燃え盛る炎の熱さに顔を腕で庇うレヴィン。
どんどん炎に囲まれ、アッシュの逃げ場が失われて行くが、雄叫びを上げ、体を回転させ火を自らの体で鎮火させていき、雄叫びを上げながら、爪を立てインフェルに襲いかかる!!
「何っ!?」
インフェルの肩から脇にかけて斜めに爪を立てた!
だが、後ろに飛び身軽に躱すが擦り傷を負い服が破けた。
口の端をベロリと舐め不敵な笑みを浮かべる。
「これは予想以上の力だな・・・少々手こずるかもしれないな」
こうなるんだったら、夜叉達を言いくるめてでも連れて来るべきだったか?
だが、もう一人戦力になりそうな男がいたな。
「レヴィン!お前も闘え!」
「え・・・?」
「こうなったのはお前の責任でもある。それに元に戻せるかも知れんぞ?恩師とやらを・・」
自分には恩師だか、恩恵だかは分からない世界だがな。
「本当か?どうすれば戻せる!?」
「さあな?奇跡とやらに賭けるしか無いんじゃ無いか?」
「げえ!?なんだよ!結局何も無いのかよ!?・・分かった。俺も闘う!責任は俺も感じてたからな!」
インフェル、ディラ、アイリーンに並ぶレヴィン。