恩師の為に
恩師であり、兄の様な存在であるアッシュを助けるべくインフェル達と手を結ぶレヴィン。
アッシュさんがそんな訳の分からない力に翻弄され、一人で葛藤していたなんて全然知らなかった。
いつも広い背中ばかり追っていた、その姿は凛々しく強く、優しかった。
力になりたい・・・!!俺に出来るなら助けてやりたい。
「インフェル!!俺、どうしてもアッシュさんを救いたいっ!!俺に何が出来る!?」
「言っとくけど、僕らはそんな感情では動いていない。君にとっての尊敬すべき人だろうと力に呑まれてしまえば始末する。それだけだ」
「で、でも・・・っ、生きたくたって生きられなかった人だっているんだ!最後まで諦めたくねぇよ!!インフェルッ!!」
「レヴィン、その人をただの殺戮兵器にしたいのかい?君のその尊敬するアッシュって人を、その人はそんな結末望んでいると思うかい?」
「違う!そうじゃねえよ!!俺はっ、最後まで諦めたくないんだよ!!何か方法があるかも知んねえじゃんか!世の中は残酷かも知れねえし、俺は城に守られてきたからよく知らないかも知れない!!・・でもよ、ただ始末するとかじゃ失う物が多過ぎるだろ?それに、アッシュさんは強い人だ!!簡単なそんな力に負けたりはしないっ!!わざわざ見殺しにするのを見てられるか!!」
インフェルは眉を顰め、ため息をつく。
「良いじゃないの、ギリギリまで待ってあげましょうよ、インフェル?」
「インフェル、王子がこんなに必死に頼んでんだ、聞いてやろうぜ?」
「やれやれ。分かったよ。だが判断は僕がするからね、レヴィン。手を出すなら君の命も保証はしないから覚悟してくれよ」
「インフェル!!ああっ!ありがとう!!」
満面の笑みで礼を言うレヴィンにインフェルは意図せずつられて口元を緩ませた。
この王子・・・やっぱり目に光が籠っているな。
こんな状況で、ずかずか物を言い、人質にしてるのにこっちのやり方に反して、条件を出すし、意見はバシバシぶつけてくるし、なのに何だかこいつには不思議と嫌な気持ちは持てないな。
「じゃあ、時間が迫っているから今日その貴族の元に行く。レヴィンはアッシュを呼び出してくれ。なるべく人気の無い場所まで誘き寄せてくれ」
「ああ、理由を話して連れて来てもいいだろ??」
「任せるよ。来てくれればどんな方法でも構わない」
「良いかい、レヴィン。力の暴走は夕刻から始まり夜に最大に達する。朝までに自我を取り戻せなければただの殺戮兵器に成り果てるからな??チャンスは今夜だけだ、わかったかい?」
「ああ、分かった!!」
ー 夕刻ー
レヴィン、インフェル、ディラ、アイリーンはアッシュの自宅付近に到着していた。
傍目からも見える程広大な敷地の中に周りの自然に負ける事ない風格のある豪邸がデンと建っていた。
「流石貴族ね、家も立派だわ」
「ケッ、上流階級が」
「じゃ、レヴィン僕等はここにいるからアッシュを読んできてくれ」
「おう!ちょっと待っててくれ」
レヴィンは慣れた足取りでアッシュの屋敷に入って行く。
屋敷の傭兵達もレヴィンを見るなり歓迎してる様子で中に招き入れられた。
だが、傭兵達の表情は曇っている。
「レヴィン王子、アッシュ様は誰にも会いたくないと申されて・・レヴィン王子が直接声を掛けてくれますか??」
「分かった・・」
レヴィンはアッシュの部屋の扉の前に立つと妙な呻き声が聞こえて来る。
「アッシュさん!?」
レヴィンは思わず扉を開け様と手を掛けるが鍵がかかり開かない!!
「くそっ!!アッシュさん!!俺です!レヴィンです!!開けて下さい!!」
扉を手が痛くなる程に叩き必死に呼びかけるが中から聞こえてくるのは低く不気味な呻き声のみ。
「レヴィン・・?くっ、来るなっ!!」
一瞬だが、アッシュの声が聞こえた。
「お、俺・・アッシュさんを助けに来ました!!だから開けて下さい!!」
「来るなっ!」
その一言を機にアッシュの苦しんでいる声が悲痛に木霊す。
レヴィンは躊躇わず扉を蹴り破り強引に開いたっ!!
アッシュはベッドに横になって、大量の冷や汗に額を冷やし、うんうん唸っていた・・・。
これが力の暴走・・・??
何か酷い風邪みたいだな・・・。
寝てれば治りそうなんだけど違うのかな?
俺もよく覚えていないけど一晩中苦しんでた様な?
インフェルの紋章が痛すぎて力の暴走だか何だか分からなかったな。
「レ、レヴィン、入るなと言ったのに。な、何か最近な、夕方から夜にかけて体が熱くてな・・声も変なガラガラになるし、医者も原因が分からず新種の病気だと言われてな・・人に触れぬ様、床に伏せていたんだ。お前も移るかも知れないから出て行った方が良いぞ・・・」
「・・・・・」
レヴィンは窓からインフェル達に目配せする。
これ、風邪なのか?力の暴走なのか?
ジェスチャーで必死で伝えるも、インフェルは首を傾げ?マークを浮かべている。
インフェルには全く伝わらなかった。
アイリーンには何故か笑われた。
連れて来いと手招きされた。
「ア、アッシュさん・・それに多分病気じゃ無いです。それ治せるかも知れないんで一緒に来てもらえませんか?」
「何だと!?新種の病では無いと言うのか!」
「は、はい・・・、とにかくちょっと来てください!!歩けますか?」
「大丈・・・」
するとアッシュの身体に異変が生じた。
アッシュはガクガクと震え出し、絶叫し出す!!
「ア、アッシュさん・・・!!」
アッシュの身体は突如として豹変して行った!!